第15話
「勝手言って申し訳ありません。
ですが、以前話した妹が見つかったんです。
助けに行ってやりたいんです。
どうか、クランを抜けさせてください。
御願いします」
バートとエイダは傭兵のクランに所属していた。
何の縁も所縁もない国で、腕を磨き生きていくには、傭兵になるしかなかった。
同時に、所属する傭兵クランも厳選する必要があった。
国を捨てて運が変わったのか、最良のクランに入る事が出来た。
最高の先輩に恵まれた。
バートとエイダの才能に見合った技を叩き込んでくれた。
死線のギリギリを見極め、実戦で鍛えてくれた。
そんな先輩に、無断でクランを抜ける事など出来なかった。
特に同じパーティで直接指導してくれた先輩に、無断でクランを抜けるなど出来なかった。
だから正直に全てを打ち明けた。
「そうかい。
あの募集の魔女が妹さんなのか。
あの国は悪い噂が多いからな。
信用などしていなかったが、そこまで悪辣非道な国だったのか」
「はい。
以前に御話した、悪党に罠に嵌められ、奈落に落とされたと言う妹です。
相手が王子達と教会だったので、全ては話せませんでした。
ですが、妹が奈落から這い出して復讐すると言うのなら、手助けしたいのです」
「じゃあ見てみぬ振りは出来ないな。
そうだろ」
「そうだな。
同じクランの仲間の家族だ。
助けないわけにはいかん。
それに、パーティーの内二人も抜けたら、しばらくは働けんからな。
そうだろ」
「そうね、兄さん。
連携訓練する間に、妹さんを助け出せるわね」
話を聞いた傭兵団のパーティー仲間は、異口同音に助太刀を申し出た。
パーティーリーダーのシャアは、屈託のない笑顔で助太刀を申し出てくれた。
常にそうだった。
足手纏いでしかなかったバートとエイダを、真心を込めて鍛えてくれた。
親身になって労わってくれた。
今もそうだ。
シャアの妹のエミリーと、もう一人の女傭兵アメリアは、エイダを世話してくれた。
傭兵団で女は珍しい。
女であることで、戦闘以外の危険も付きまとう。
それを逃れるには、家族でパーティーを組むか、女同士でパーティーを組むしかない。
このパーティーがそうだった。
三組六人の兄妹でパーティーを組んでいる。
クランの団長が、そのように配慮してくれたのだ。
他のクランなら、女傭兵は団長の情婦にされてしまうことがある。
最低のクランなら、女傭兵は売春婦同様の扱いを受ける事もある。
バートとエイダは本当に運がよかった。
「バートとエイダの仲間」
シャア・パブリン :エミリーの兄・盾と槍使い手・リーダー
エミリー・パブリン:シャアの妹・弓と回復魔法
クロード・ピアスン:アメリアの兄・盾と槍の使い手
アメリア・ピアスン:クロードの妹・弓の使い手
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