第14話

「父さん。

 母さん。

 オリヴィアが生きていた。

 オリヴィアが生きていたんだよ!」


 母国の勇者募集を耳にしたバートとエイダは、急いで家に帰った。

 家と言っても借家だが、それでも立派なモノだ。

 国を追われてわずかな期間で、他国で家を借りられるだけの信用を得たのだ。

 スコットとマギーも骨身を惜しまず働いたが、バートとエイダが頑張った。

 命を賭けて傭兵として頑張った。


 オリヴィアが生きていると信じて、奈落に助けに行けるだけの力を得る為に。

 バートとエイダは、戦技と魔法を血のにじむ思いで会得した。

 よき先輩に恵まれ、何度も死線を潜り抜けた。

 それぞれが天性の才能を伸ばした。

 バートは対人戦も考慮して槍術と魔法を会得した。


 エイダも対人戦を考慮して、短剣双術と聖魔法を会得した。

 姉妹だけあって、エイダにも聖女の才能が有ったのだ

 だが、まだまだ力が足りなかった。

 奈落に挑むだけの力は得られていなかった。

 歯噛みする思いで、努力を重ねている最中だった。


「そうか。

 よく調べてくれた。

 共に助けに行こう」


「いや、父さんと母さんは、この国で待っていてくれ。

 オリヴィアは俺とエイダで助けに行ってくる」


「そうよ、お父さん。

 お母さんも無理はしないで」


 オリヴィアが生きていると聞いて、父親のスコットは色めき立った。

 助けに行きたい想いと死の恐怖で、異様に緊張と興奮してしまっていた。

 スコットとマギーの夫婦は、身体を張って生きてきた。

 子供達に言えないような屈辱を我慢して、バートとエイダを護って、この国にまで逃げてきた。


 オリヴィアを助けるために己を磨く暇などなかったのだ。

 自分達が付いて行けば、バートとエイダの足手纏いになる。

 元々善良だが気弱な性格のスコットだ。

 色々な想いが心の中に渦巻き、なかなか決断出来ないでいた。

 

「バートとエイダに任せましょう。

 私達は三人が安心して帰って来られるように、ここを護りましょう。

 ねえ、あなた」


「そうか。

 そうだな。

 頼りない父親ですまん。

 オリヴィアを助けてやってくれ。

 だが無理はするな。

 オリヴィアは、奈落から這い上がって復讐するだけの力を得たんだ。

 お前達が足手纏いになる可能性もある」


 スコットの想いの中には、オリヴィアに復讐させてやりたいと言うモノもあった。

 いくらバートとエイダが強くなったからと言っても、相手は国だ。

 オリヴィアを助けに行ったのに、逆に国に捕まって、オリヴィアの足枷になってはいけないと、心から心配していた。


「分かっているよ。

 俺も色々経験している。

 逃げ足も速くなっているよ」


「そうよお父さん。

 それにバートが血気に逸っても、私が抑えるわ。

 大丈夫。

 心配しないで。

 お父さん、お母さん」


「任せましたよ。

 エイダ」


「母さん。

 俺はそんなに信用ないのかよ」

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