第6話

「王子達と教会の様子を探っておいで。

 いえ、側近貴族と騎士も。

 そうじゃない、私を苦しめた者、全て調べておいで」


「「「「「グギャァァァァ」」」」」


 オリヴィアの側に侍っていた多くの魔獣が、一斉に姿を変えた。

 最初オリヴィアの数倍する大きさだった狼が、一旦アメーバーのような不定形になり、次いで同じ大きさのワイバーンに変じたのだ。

 いや、そもそも大きさに意味などない。

 オリヴィアに支配される前は、小山のような大きさだったのだ。

 それがオリヴィアの命で、程よい大きさに縮んでいたのだ。


 ワイバーンに変じた魔獣は、奈落の底から地上に飛んでいった。

 地上まで飛んで登った魔獣は、今度は人に変じた。

 それぞれが取り込んだ、恨みの元となる人間に姿を変えた

 そして、王子達や教会の事を調べた。

 更にそれぞれの魔獣が、同化している人間を陥れ殺した相手を調べた。


 魔獣は自分と同化している怨念の恨みを晴らす前に、オリヴィアに報告すべく奈落の底に戻った。

 彼らが聞き込んできた話は酷いモノだった。

 教会はオリヴィアを悪人に仕立て上げ、更なる金儲けをしていた。

 聖女オリヴィアは魔女であり、人間を誑かすために治療をする振りをしていたと言うのだ。


 治ったように見えても、本当に治ったわけではない。

 呪いがかけられていると言って、呪いを解除するための御札を大金で売りつけていた。

 数倍の値で売った宝石と装飾品も、呪物として金を返さずむりやり回収していた。

 新たな税も無慈悲に取り立てて、払えない者を奴隷に落とした。

 女は売春婦として、男は鉱山労働者として売り払っていた。


 八人の王子も相変わらずだった。

 王国軍を使って娘狩りを続けていた。

 いや、以前よりも多くの人間を苦しめていた。

 それは分かっていた。

 毎日多くの人間が、奈落に投げ込まれているからだ。

 その記憶と恨みも、新たに取り込んでいたのだ。


 オリヴィアは、唯一の気懸りだった家族の事も調べさせた。

 そこで教会の嘘が分かった。

 家族に一切の支援が行われていなかった。

 だったら元の家にいるはずなのだ。

 だが、家族は元の家にはいなかった。


 オリヴィアが魔女に認定されたので、村から追い出されたのだ。

 あれほど世話になっていた村人が、進んでい石を持って追った。

 善良な父も、優しい母も、正義感の強い兄も、優しく可愛かった姉も、石を投げつけられ、血を流して村から出て行ったと言う。

 オリヴィアは怒りに打ち震えた。


 最初の標的は決まった。

 だがただでは殺さない。

 恐怖におびえ、狂うほどの苦痛を与えて殺す。

 既に魔女に認定されているのだ。

 躊躇う必要などない。


 オリヴィアは人に化けた魔獣に噂を広めさせた。

 王子達の悪行はすでに周知の事実だった。

 だから、聖女オリヴィアを穢して魔女にしたのは王子達だと言う真実を広めた。

 同時に、魔女に墜ちたオリヴィアが、復讐に奈落の底から這い出して来ると言う噂も流したのだ。


 そして最初の標的は、オリヴィアの家族を石持って追った、村人だと噂を流した。

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