俺達の夏休み その4
「雨宮……」
「どーしたの?山本君。」
「……今日も病院を抜けて来たのか?」
「うん。そーだよ。」
(私、心臓の病気があってね、ずっと病院で過ごしてて外に出れなかったの。)
「山本君。今日もここに来たの?」
「うん。でも、今日はもう帰る。」
「ふーん。ねぇ、今から予定ある?」
「ないけど……またどこか行きたいのか?」
「今から帰るから一緒に来てよ。」
いつか行こうとしていたがまさか花蓮から誘って来るとは思わなかった。
「……いいよ。お見舞いって言うのかわからないけどなにか買うよ。」
「うん。ありがと。」
その後、花蓮が漫画を読みたいと言っていたから購入した。
電車に乗り、学校の最寄り駅に付き、そこから徒歩10分。
花蓮が入院しているという病院に着いた。
「記憶を失くして以来だな……」
久しぶりの病院に少し緊張しながら入り、そのまま花蓮が過ごしている病室へお邪魔する。
花蓮の部屋は個室で今は俺と花蓮だけでとても静かだった。まぁ、病院は静かで当たり前だけど。
「ここが私が入院している部屋。」
じゃじゃーん。と言わんばかりに手を広げる花蓮に俺はどう反応すればいいのかわからなかった。
「……漫画、ここに置いておくぞ。」
「うん。ありがと。」
漫画を机に置き、俺は椅子。花蓮はベッドに座る。
「ここに同年代の人が来たの。これが初めてなの。」
「そうなのか……」
「女の子の初めてだよ?喜ばないの?」
「初めての意味が違うでしょーが。」
俺が突っ込むと花蓮は「えへへ」と微笑む。
「山本君はどこの学校?」
「ここの近くだよ。ほら。ここから見えるだろ?あそこが俺が通ってる学校。」
そう言い、俺は窓の外にある学校を指さす。
「ああぁ。そういえばあそこの生徒も山本君と同じ制服だったね。」
「だろ?」
「うん。……私も病気がなかったら高校一年生で青春を謳歌したのかな?」
ここで初めて花蓮の弱い部分が見えた気がした。病気により、あまり学校に行けていないで寂しい思いをしているのだろう。
俺が弱気になったら駄目だ。
だから、せめて明るく振る舞おう。
「俺の一個歳下か。後輩だったのか。」
「それじゃ、山本君って先輩なんだ。」
「おう。敬ってくれてもいいぞ。」
「えー。どうしよっかな。」
「うそうそ。別に今まで通りでオーケーだ。」
俺の弱い部分を消し、みんなに接している感じで花蓮に話してみる。
「山本君って普段はそんな感じなの?」
「そうだよ。この俺のフレンドリーな態度のせいかわからないけどよくみんなに恋愛の手伝いをさせられてる。」
「恋のキューピットみたい。」
「おー。まさにそれだな。まぁ、まだみんなの様子はまだ微妙だが、友達関係までは近づけてやった。」
「凄いね。山本君。」
本当は俺だった恋したいだけどな。主人公がラブコメしないラブコメって何?
「山本君は好きな人っていないの?」
「う、うーん。」
俺が手伝ってる人の中にいるとはなんかいいずらいよなぁ。
「今はいないなぁ。」
「そうなんだ……」
この後、何気ない会話が続き、いつの間にか辺りは赤く染まり始めていた。
「あっ、そろそろ帰るな。」
「うん。今日は楽しかった。ありがとう。」
「また来るよ。」
そうして部屋を出て病院から出る。
あの子が前を向こうとしてるんだ。
俺も弱気にならず、彼女を元気になるのを応援しよう。
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