俺達の夏休み その3

 こんなに楽しくしていていいのだろうか?

 みんなと楽しんでいるとどうしても雨宮の事が頭に浮かぶ。


 さっきみんなにまわらないか聞いたが本当によかったのかな。


「大丈夫か?慎二。」


 思い詰めていると隣から声をかけられる。見ると愛染が不思議に俺を見ていた。


「うん?あぁ、大丈夫だけど。 ……それよりどこ行こうか。」


 雨宮の事を一旦頭から消す。



 水着を買い終わり、今は適当にモールを歩いていた。


「ゲーセンだろ?」

「2人とも、ゲーセンでいい?」


 俺は夏樹と桃白に確認をとる。2人は「いいよ」と言っていたので、そのまま直行した。



(ここがゲームセンター……)

(ん?来たことないのか?)

(うん。初めて来た。ちょっと遊んでみてもいい?)

(いいよ。どこ行こうか?)

(プリクラ行ってみたい。)

(お、おう。じゃあ行こうか……)


 昨日の記憶がフラッシュバックする。

 今はやめてくれよ。後でならいくらでもいいからさ……。


「何する?」

「太鼓やりたい。」


 夏樹がみんなに聞くと桃白が即答した。


「いいね。俺と勝負しよっか。」


 愛染が挑発するように言うと桃白が「あぁ?」と眉を上げ。


「うちと勝負したいの?いいよ。そのかわりうちが買ったら服買って。」

「えっ?あっ、いいよ。そのかわり俺が買ったら何かしてもらうからな?」

「うちが出来る範囲だったら。」


 そう言った後、2人は機械にお金を入れると曲を選択し始める。


「んーとね。これでいい?」


 桃白が選んだのは最近流行った恋愛ソングだ。


「おっけ。難易度は?」

「鬼。」

「そうか……いけるかな…?」


 愛染は少し不安な顔をするも曲は始まった。




「––––負けました。」


 愛染のボロ負けで終わった。あの後ももう2曲あったがそれも愛染の敗北に終わり、桃白の意外な特技を目にする事になった。


「服買ってね?」

「……わかりました。」


 愛染……ドンマイ。



「まぁ、服は後にして次どうする?」

「な、ならプリクラなんてどうかな?みんなで遊んだ思い出として。」



(ど、どうしようか。)

(うーん。じゃあとりあえず猫耳付けてみようよ。)

(………え!?俺に猫耳?)

(プリクラではよくある事じゃないの?)

(そ、そうなのか……?)


 愛染の言葉により、また記憶が鮮明に蘇る。


「–––もっしん?」

「………えっ?」


 桃白の言葉により、記憶から意識が戻る。


「えっ?じゃなくてもっしんもプリクラでいい?」

「…あぁ。いいよ。」


 その後、機械に入り、写真を撮る。


(やっぱ目でかいな。)

(もう少し盛ってもよかったかもね。)

(そ、そうなのかな?)

(次はどこに行こっか?)

(雨宮が決めていいぞ。リア充が行くやつ系以外ではほとんど遊んだ事あるから。)

(うーん………それじゃあれは?)


 別に、花蓮が悪いわけではないとわかってる。

 俺の罪悪感が今の俺を楽しみから邪魔をしているのだ。


 いや、罪悪感じゃない。これは哀れみだ。俺は彼女に安い同情をしていたのだ。


 その事に気づいた途端。そんな自分に吐き気がした。


「……ごめん。用事思い出したから帰るわ。」


 プリクラを撮った後、俺はだだそれだけを言い残し、みんなのもとから去って行く。



 家に帰ろうと駅へ向かう途中。

 俺は少女に出会う。


 肩まである黒い髪で、整った顔だちをしており、みんなからは好かれそうなのだが、体型は少し人より痩せているように見える。


「雨宮……」

「どーしたの?山本君。」


 なんの苦労を知らなさそうな笑顔を彼女は見せた。


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