俺を襲う衝撃の事実達

 あれから五日経った後の四限目、俺は普段と同じく授業を受けていた。

「もっしん。」

「ん、なんだ?香織?」

「この前みんなで遊びに行くって言ってだけどいつにする?」

 香織が小さな声で聞いてきた。

「うーん、体育祭も近いし、その後でいいんじゃないか?ほら、打ち上げ的なかんじ。」

「うん!わかった!」

 香織は無邪気に微笑むと再び前に向き授業に集中した。


 俺は香織の事が好きだ。

 香織も俺の事が好きだと思っていた。

 だが、事実は違って香織は他のクラスの空の事が好きだった。

 香織は俺の事が好きだと信じ込み勝手に舞い上がってた。

 言うなれば一人芝居かな?

 今も諦めきれない俺がいる。そんな自分に嫌気がさす。


 なんで俺は香織の事が好きなったのか思い出す。



 回想です。





 ***

 小学5年生の時、引越しをした事によって俺は学校も転校する事になった。

 正直、なんで引越しをしたのかは覚えてないが、とにかく転校したての俺には話せる人などおらず、一人ボッチだった。


 そんな俺に声をかけてくれたのが香織だった。

 一人ボッチだった俺にとっては香織が唯一の心の拠り所だった。

 香織のおかげ友達も次第に増え、中学生になり、よっしーと出会い、気が合い、親友と呼べる関係になった。

 きっかけを作ってくれた香織に感謝と、そしていつの間に好意を抱くようになった。


 これがおれが香織を好きになった理由だ。




 ***

 回想終わり。


 そんな俺の初恋は実りそうにないようだ。

 まぁ、香織が幸せになれば俺はそれだけでも満足だ。だから香織の恋愛を応援し、空と香織をくっつけようとしている。


 俺の初恋についてみんなに話していると終わりのチャイムがなる。


「よし、もっしん、飯くうぞ!」

「おう。」

 今日は空は他の奴と食べるらしく、今日は俺とよっしーと二人で食べる事になった。


「よっしー、ちょっと待ってくれ。こいつ借りるぞ。」

 唐突に現れたのは3組の黒白勝幸だった。

「え?俺になんか用か?」

「あぁ、だからちょっと来てくれ。」

「あ、あぁ。ごめんよっしー、ちょっと行ってくる。後、さきに飯食っててくれ。」

「おう!わかった!」



 言われるがまま連れて来られたのは屋上だった。

 てか、俺こいつと喋った事ねぇんだがな。

「お前は宇月香織の事が好きだろ?」

「え––––––?」

 何言ってるだこいつは?

 俺、誰にも言った事ないのにどうして知ってるんだ?

「お前をよく見ていたらわかった。」

 え?こわ!ストーキングでもしてたの?

「なんでそんな事を……?」

「俺と勝負するためだ。」

「は?勝負?」

「今度の体育祭、俺は青団、お前は赤団だ。点数が高い方が勝ちって言う簡単なルールだ。」

「ちょ!待てよ!どう言う事–––!?」

 黒白は言葉をさえぎり、話を続ける。

「この勝負、お前が負けたらお前が宇月香織の事が好きということ、そして宇月香織は飯田空の事が好きだと言う事、そして飯田空が夏樹愛華の事が好きだとみんなにバラす。そして……」

 黒白は言葉を少し溜め言い放った。


「今後一切、夏樹愛華には近くな。」


「–––––は?なんで夏樹が……それに……あぁ!どう言うことだよ!!」

 突然のことで頭がまともに機能しない。

「俺のほうが夏樹の隣にふさわしい事を証明出来るいい機会だ。」

「夏樹の隣にふさわしいって、お前、本当にどう言うことなんだよ!ちゃんと説明しろ!」

 俺が怒鳴ると黒白は俺を見下すような笑みを浮かべ、

「お前、小学5年生以前の記憶、あるか?」

「は–––?」

 記憶を探ってみるが、小五以前の記憶にモヤがかかり思い出せない。

「思い出せないだろ?なんせお前は記憶喪失だからな」

「––––––?」

 言葉を失う。俺が記憶喪失だって?変な冗談を言う雰囲気じゃないだろ?


「お前は記憶喪失をきっかけに転校したんだ。大切な人を忘れてな。」

 黒白の顔から怒りが現れる。

「お前はその子から大切に思われ、お前もその子の事を大切に思ってた。誰も入れる隙は無かった。だけどお前は自分より、たかが猫一匹をかばって事故にあい、記憶を失って転校していった。」

「その子って–––––」

「夏樹愛華の事だ。」


 夏樹がなんで俺の事を知っていたかようやくわかった。


「夏樹はお前がいない間、どうなった知ってるか?空っぽだよ。抜け殻みたいだった。夏樹がお前を失って悲しんでいるのに、お前は記憶を失って、転校して、呑気に他の奴を好きになってるって。そんなの––––」

 黒白は言葉を止めた後、俺を睨む。


「今のお前は本物の山本慎二じゃねぇーんだよ。」

 その言葉が心をエグッた。

 まだ本当か定かではないのに、どうしても本物と言う言葉が俺の心に穴を開けていく。


「俺が勝って夏樹を悲しませた分たっぷり苦しんでもらう。そして俺が夏樹にふさわしい事を証明する。」

 黒白は一方的に言い放った後、屋上から去っていく。


 俺はその場に倒れ込み、ただあの言葉を記憶から遠ざける事に精一杯だった。

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