俺は書記の仕事を全うする
無理矢理生徒会に入れられた俺は放課後に体育祭活動の準備をしなくてはならなくなってしまった。
あの生徒会、ちょっと個性が強いんだよ。
その中に主人公以外になんの取り柄のない俺が……。
考えたらゾッとしてきたよ。特に雪野先輩に。
あの人、俺を気に入ったのか知らんがめっちゃちょっかいをかけてくる。
あぁ、目の前にあるドアを開けたくない……
覚悟を決め、ドアを開ける。
「ぶべゃあぁ!?」
「あはははは!おっはよ!」
ドアをあけ、現れたのは歪んだ顔の仮面を付けた雪野先輩だった。
「––––おはようございます」
気怠く言った後、雪野先輩は仮面を取り、笑顔でこっちを見ている。
「さっきの顔、面白かったよー!」
「––––さようですか。ならよかったです。」
「うん!よかった!!」
うん!そう無邪気な顔で微笑むと胸がドキってするからやめて欲しいな!
俺は倒れこむように椅子に座り、足塚先輩へたずねる。
「それで、体育祭活動って何すればいいんですか?」
「…………俺達が体育祭の競技は何がいいか案を出すから山本はそれを書いていってくれ。」
「わかりました。」
うちの高校は生徒会が一つだけ競技を作れる事になっていて、稀にとんでもない競技が出てくるらしい。
「私、パン食いマラソンがやりたい!」
「パン食いマラソン?なんですか?それ」
「パン食い競争とマラソンを合わせた競技だよー。各コーナーにパンが設置されてあるから全部取ってゴールしたらいい競技だよー」
なにそれ…走りながらパン食いまくるって……最後らへん吐きそうだな。
「でっ、その競技を作り出したのは…?」
「私だよ!」
ですよねー。わかってましたけども、一応聞いてみました。
そう思いつつ、パン食いマラソンを記録する。
まぁ、こんなの絶対通るわけないけどね。
「俺は男女対抗の騎馬戦をやりたいです。」
「………却下だ。」
案を出して速攻で断られたのは庶務担当の2年3組の愛染隼人だ。
名前と容姿はかっこいいのだが、中身がダメな奴で女子にモテない残念なイケメンだ。
「なら…男女対抗の–––––!!」
「却下だ。」
足塚先輩は言葉を溜めず、言い切った。まぁ、そりゃそうか。俺もできるならやりたかったけどなぁ。
「なら、うちは人借り競争とかしてみたいです〜!」
そう言ったのは会計担当の2年1組の桃白桃瀬と言ういかにも桃が好きそうな名前をしている。俺と同じクラスのギャルだ。
普段浅木真衣と仲良く話しているのを見かける。
「おっ、それいいねー!」
雪野の先輩がくいついた。まぁ、俺も面白いとは思うが……。あいつの反応を見るとな〜。
「えへへへ…いいんじゃない!それ!」
愛染は気持ち悪い笑みを浮かべそう言ったがそれ足塚先輩はその笑みを見て、
「………却下だな」
足塚先輩、愛染のこと嫌いなの?
「え〜そんな〜」
桃白はうなだれ、ガックリと頭を下げる。
「それじゃあ借り物競走でいいんじゃないですか?」
夏樹は手を小さく上げ、そう言っていた。
「………まぁ、それならいいだろう」
借り物競走っと。俺、やったことないんだよな〜。一度やってみたかったし、ちょうどいいや。
「………山本、お前は何かいい案があるか?」
「うーん、もう、普通にクラス対抗リレーとかでいいんじゃないですか?」
「………そうだな。」
クラス対抗リレーを書き込む。
パン食いマラソン、借り物競走、クラス対抗リレー。
「この中をどうやって––––」
「あみだくじでいいんじゃない!?」
雪野先輩、俺、話してる途中ですよ?
「………そうだな。誰か悪いが書いてくれないか?」
「俺やりますよ。書記だし」
あみだくじの線を適当に描いていく。
「よし、じゃあ足塚先輩が代表で名前を書いてください」
「………わかった」
足塚先輩が名前を書いた線をなぞっていくと、この中で最もハードな競技が書かれていた。
「––––パン食いマラソンかよ」
「やったねー!私の案が採用だー!」
「………ならこの、パン食いマラソンは先生に提出しておこう。」
足塚先輩は少しため息を吐いた後、
「………よし、これで今回は終了だ。解散。」
足塚先輩がそう言った後、みんなは体を起こし、少し伸びをする。
「うーん!終わった!」
「ね、ね、愛華ちゃん。この後ちょっと俺と遊ばない?」
「今日は忙しいからパスで…」
「えーー!じゃあ、桃瀬ちゃんは?」
「私も無理」
「そっかー。じゃまた今度遊ぼうぜ!」
そう言って愛染は帰って行った。
お前も、頑張れよ……
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