俺と君は再会する
放課後になり、帰るため校門へ向かっていた。
あーどうしよ。
香織は空が好きで、空は夏樹愛華の事が好きか。あっ、そして俺は香織が好きと。
どうしよう。これじゃ恋の一方通行だ。
空の想い人をなんとかねじ曲げて、香織にする事は出来ねぇかなあ。
そう頭を抱え歩いていると、誰かとぶつかり転んでしまった。
「あっふん!! あっごめんなさい!大丈夫ですか!?」
「えぇ、大丈夫。」
この声は女性か。
頭を上げると、俺が頭を抱えていた原因の人物だった。
「夏樹愛華さん…」
「あっ、ごめんだけどばらまいてしまったプリントを拾ってくれる?」
「うん。わかった。」
夏樹愛華は俺の事を特に気にしていない素振りでプリントを集めている。
俺も集め始め、集めたプリントを持ち、
「こんなけあるんだし、俺も運ぶよ。」
「ありがとう。山本君。」
少し笑顔を見せ彼女はそう言った。
***
校門からだと、生徒会室結構遠かったな。
夏樹愛華が扉を開けると、生徒会のみんなが揃っていた。
「…………遅かったな。」
溜めが長いこの男は生徒会長の足塚強士あしづかきょうし。
溜めが長い事を抜いたらすごく頼れる先輩でリーダーとしても素質があるらしい。話した事は無いから知らんけど。
「おっ!あいっちあはよー!!」
明るい声でそう言っている彼女は副会長の雪野架凛ゆきのかりん。
3年生で、持ち前の明るい性格でみんなを和ませるムードメーカーだ。
他の生徒会のみんな?それはいずれ紹介するよ。
「こんにちは。ちょっと軽い事故があって。」
「そうか。でっそこにいるのは誰だ。」
「あっ、2年1組の山本慎二です。夏樹さんとぶつかってプリントをばらまいてしまって、そのお詫びとして一緒に運んで来ました。」
「おぉ〜、それってほんとに事故なのかな〜?」
「ど、どう言う事ですか?」
急に雪野先輩がぐっと近づき、怪しい視線でこちらを見つめる。
「あいっちに気があってわざとぶつかったんじゃないの〜?」
「い、いや、違いますよ!ほんとにたまたまなんです!それに夏樹さんのことあまり知らないし……」
「–––––––」
あの夏樹さん。なんでフォローしてくれないの?ほんとたまたまだからね?
「そっかそっかー!まぁどっちでもいいけど!!」
「どっちでもいいんかい!!」
思った事をつい、口走ってしまった。どうしよう。雪野先輩。驚いた顔でこっち見てるし、他の生徒会のみんなもそうだ。足塚先輩を除いて……。
「あははは!面白いね!君、生徒会の書記にならないかい!?ちょうど空いてて困ってだんだー。強士もいいよね?」
「…………構わない。」
まさかの急展開。だが、俺はこんな面倒な事はやりたくない。
「お断りします」
「……まぁ、しょうがないかー。じゃあ山本慎二は夏樹愛華の事を好きってみんなに言っちゃおっかなー?」
「ちょっ!やめて!!そんな嘘ばらまかないで!夏樹さん!君もなんとか言って!!」
「別に私も生徒会に入るのはいいと思う。」
「夏樹さんーー!!?」
まずいよ。これはまずい。
もし、夏樹愛華が好きって言うデマがばらまかれたらホントまずい!特に空だよ。あいつ、夏樹愛華の事好きだから、これ知ったらどう思われるか!?
「–––––わかりましたよ!!生徒会書記、入らせてもらいます!」
「よっろしくー!もっちん!」
もっちんってなんだよ。餅みてーだな。
「…………よろしく。」
他の生徒会のみんなも次々と歓迎してくる。
「よろしく。山本君……」
最後には夏樹愛華が俺を歓迎した。
生徒会を出た後、俺は疑問を持った。
なんで夏樹愛華が俺の名前を知ってたんだ?
一年前の遠足前に言ってたか?いや、言って無かった気がするけど……
こうなったら俺の必殺技を見せるしかないな。
過去を見つめる技、その名も……
「必殺!回想!!」
***
5月6日。俺はうきうきしながらこの日を待ち浴びていた。
なぜならそう。遠足!!
まぁ、ぶっちゃけ遠足って言うより、交流会みたいなもんかな?
山に行って、みんなで一緒にカレーを作って交流を深める……
これがあれば、ワンチャン可愛い女の子と仲良くなれるかもしれん!!
そう思っていたのだが、よりにもよって遅刻。
急いで家を出たんだが、俺の目の前に困っているおばあさんがいた。
「あの、何かありましたか?」
困っているおばあさんを放ってはいけず、つい話しかけてしまった。
「えーと、この場所に行きたいんだけど、道がわからなくて……」
地図を取り出し、目的地に指をさす。
俺の目的地と反対方向じゃねぇーか。
「––––わかりました。案内するんでついて来てください。」
「ありがとうね!」
まぁ、いっか。おばあさんの笑顔が見れたし、よしにしよう。
おばあさんを目的地に案内した後、スマホを見る。
「時間切れだ……」
スマホを閉じ、とぼどぼと、家を向かおうとすると後ろから声をかけられた。
「あいかわらずだね。君は。」
「ん?えと、君は?」
振り向くと俺がまさに理想としているような外見を持つ、スーパー美女が俺に話しかけていた。
「私はあなたと同じ高校の1年生よ。」
「んじゃあ、遠足は?」
「今日は外せない用事があって休んだの。それで用事を済ませに向かっている途中に君に会った。」
「はぁ……」
「それじゃ、私はこれで。」
「あっ、ちょっ!せめて名前を––––!!……行くの早すぎだろ。」
***
回想終了!
あれ?やっぱ俺、名前名乗って無かったよな。
まぁ、なんかの噂で俺の名前を知ったんだろう。
帰ろ。
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