やっぱ俺の勘違いだった

 次の日の昼休み、俺とよっしーは5組で弁当を食っていた。


「そういえば空って好きな人いるんのか?」

 適当に雑談をしていると急によっしーが空に質問を投げかけていた。

「え?まぁ、一応。」

「誰なんだ?教えてくれ!」

「俺も気になるな。」


 気になるがこれがもし、香織じゃないとすればまずいな。もし違ったとしたら香織は……


「俺の好きな人は……3組の夏樹愛華……」


 夏樹愛華……その人物は誰もが認めるスーパー美女だ。

 ロングヘアで整った容姿と顔立ち。そして包み込まれそうなあの素晴らしい胸……!

 夏樹愛華には一度話しかけられた事はあったがその後は特に何も無いな。


「まぁ、あの子綺麗だしね。それに生徒会に入ってて、その、なんか、出来る人みたいな感じだし。」

 それもあってか彼女の人気はずば抜けて高く、俺みたいな奴は話すこともないだろう彼女だが、さっき言った通り一度だけ話しかけられた事はある。

 その時は確か、遠足の集合場所に向かっている途中で困ってるおばあさんを助けた後に声をかけられたんだっけ?


 しかし、空が香織を好きじゃないとすればどうやってくっつければいい?いや、諦めて香織に言ってみるか?

 いや、駄目だ。それじゃ香織がきっと悲しい顔をする。


 考え込んでいると、昼休みの終わりのチャイムが鳴り始めた。


「おっ、それじゃあ教室に戻るぜ、またな。空!」

「おっ」




 ***

 6限目が終わり帰る準備をしていると隣の席の浅木真衣から声をかけられた。

「山本くん」

「………ん?どうしたの?浅木さん。」

 まさか浅木真衣から声をかけられた事に驚き、反応に遅れてしまった。

「あんたって香織の事どう思ってんの?」

「え?……ただの仲の良い幼なじみかな?」

 本当は香織事は好きだが、嘘をつき、仲の良い幼なじみと言ってみた。

 てか、なんでそんな事聞くのかな?もしかして俺の気持ちバレてたのかな?

「なんでそんな事聞くの?」

「いつも香織の事見てたからさ、好きなんじゃないかなって。」

 バレてましたわ。と言うか俺ずっと香織の事見てたの?自覚無かったわ。


 それより俺の右隣の席に香織がいるからそう言う話はやめて欲しいんですが……


「そうなんだ。ならよかった……」


 お?この反応……もしかして脈ありじゃね?俺の事。

 いや待てぇー。俺が主人公だからって勘違いはよくないと思うぞー。

 そういうのは香織の件で身に染みて理解したからなぁ〜。


 だから俺がちゃんと確かめてやるぜ!

「ん?よかったってどう言う事かな?」

 浅木真衣には主人公を自覚してる主人公じゃなくて鈍感系主人公としていくぜ!


「………あなたみたいな平凡な人が香織とつり合うわけが無いと思ってたから。」


 ずいぶんと溜めたが結果がそれかよ。ひどくね?


「–––––––ッ!」

 浅木真衣は何か俺に言おうととしたがやめた。

 うん。ありがと。これ以上言われると泣いてたから。

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