第36話 盗賊団討伐作戦 ~ショウ④~
俺達は村を出て、
「おい、ゲルドとやら。お前らの本拠地はどこにあるんだ?」
俺は荷馬車に放り込んだゲルドに、個人的に尋問していた。
何故かと言うと、先に本拠地を叩いてしまおうと思ったのだ。こういうのは頭から潰せば、後が楽になるからね。
「ほ、本拠地ですか?」
ゲルドは俺が怖いのか、青ざめた顔で応える。『威圧』は別に使っていないのだけど…。
「知ってんだろ?教えてくれよ、『百鬼』の頭の情報と、その拠点の場所。」
怖がっているようなので、俺はなるべく笑顔を作って質問した。なぜなら、もうコイツを殺す気はなかったから。どうせ、連れて帰れば死刑になるだろうし。
笑顔が逆効果だったのか、ゲルドはさらに怯えながら答えた。
「ほ、本拠地は『ルクルムの森』の奥にある
―それって、受付嬢さんが言ってた場所の事か?
「じゃあ、頭の情報は?」
「…詳しくはわからないんですが、頭目はシオルって人です。元ソル王国の聖騎士で、なんでも次期五天将とまで言われていたそうで。」
―五天将って、あのミハエルって奴と同格って事か?
そんなに強そうには見えなかったけど。
「それは強いのか?」
「へい。なんでも、炎を纏う大剣を扱うらしいのですが、
―それはミユと同じくらいの強さって事でいいのかな?だとしたらミユにはちょっと荷が重いかなぁ。
「なるほど、あんがとさん。」
「ひっ…!!」
俺がそう言って、ゲルドの肩を叩くと、ビクッとなっていた。
俺は荷馬車から顔を出し、並走する騎士に声をかけた。
「すんませーん。分隊長さん呼んでもらえますかぁ?」
「あ、はい、ただいま!」
それに応えてくれた騎士はまだ若く、礼儀正しい感じで、なかなか好印象だ。
―俺を見るあの目は尊敬の眼差しだ。間違いない。あの騎士はきっと出世するだろう。
俺が一人で馬鹿な事を考えていると、分隊長が近寄ってきた。
「ショウ殿、いかがされた?」
「申し訳ないんだけど、ここから別行動させてもらっていいかな?」
「どうかされたので?」
「まぁ、個人的に行きたい場所があってさ。もちろん盗賊はちゃんと追うよ。」
分隊長は不思議そうな顔で俺に問いかける。
突然、「部隊を抜けさせて」と頼まれるのだから無理もないと思う。
「まぁ、我々は構いませんが、お一人でよろしいので?」
「うん。逆に一人の方がいいかな。」
―みんながいると範囲魔法使えないしね。
「そうですか。まぁショウ殿ならお一人でも問題ないでしょうな。」
分隊長は笑いながらそう言ってくれた。
「なんか申し訳ない。単独行動ばっかりしちゃって。」
「とんでもない。おかげで誰一人負傷者も出さずにここまで来れましたから。しかし、我々も、ショウ殿一人に任せていては、他の騎士に笑われてしまいます。」
―話がわかる人で良かったよ。
「そっか。じゃあ、俺は行くよ。
俺は走っている荷馬車をヒラリと降り、ルクルムの森へ走り出した。
「え?ショウ殿?馬はよろしいのですか?」
分隊長は俺に声をかけるが、俺には聞こえなかった。
「行ってしまった…。」
―リオやリトラなら問題ないけど、ミユが先走ってたらちょっとやばいな。急がないと。
ーーーーー
俺は全速力でルクルムの森へ向かうと、小さな村が見えてきた。良く見ると、所々煙が上がっている。気になったので近づいてみると、そこには盗賊らしき者と見慣れた鎧を着た者達の死体が目に写った。
―盗賊とやり合ったのかな。この状況を見るに騎士団がやられたみたいだな。確かこっちにはミユとフローラが来ていたんじゃ…。
不吉な予感が頭を過る。
しばらく歩くと、見覚えのある人物が倒れているのに気付いた。
「ロンドさん?!」
ロンドの胸と腹部には複数の刺し傷があり、辺りには大量の血が流れ出ていた。
俺はすぐに駆け寄り、ロンドさんに声をかけながら抱き抱える。だが、返事はなく、その身体は既に冷たくなっていた。俺はロンドさんをゆっくり地面に寝かせた。
―ロンドさんがここにいるって事は、やっぱりこの部隊はミユとフローラの…。あいつらはどこだ?!
俺はミユとフローラを探した。しかし、辺りにそれらさしき姿は見えなかった。
―クソ。どうなってんだ。ミユがいれば盗賊なんかに負けるわけないのに。
俺が辺りを見渡していると、まだ息のある騎士がいる事に気付いた。
俺はその騎士に駆け寄り、ポーションをぶっかけた。
騎士の傷がみるみる塞がり、少し目を開いた。
「おい、大丈夫か?!何があった?」
「…勇者…様と…村の…女性達…が…盗賊に…。」
騎士は俺の声に反応し、
「
騎士は安心したのか、そのまま眠ったようだ。
―すぐ行くからな。待ってろ、二人とも。
俺は再び全速力で走り出した。
途中途中に無数の足跡があり、それを追ってルクルムの森を抜けると、木の生えていない巨大な岩山が見えた。そこにはぽっかりと穴が空いており、二十名程の見張りが立っていた。
―ここが本拠地か!
俺は真っ直ぐ穴へ向かって走り、それに気付いた見張り達は慌てて武器を構える。
「なんだ、てめぇ!」
「邪魔だ、どけ!」
俺は走りながら
俺はそのまま立ち止まる事無く、穴の中に突っ込んだ。
「なんだこいつは?騎士か?!」
「侵入者だ!奴を殺せ!」
中にいる盗賊達が声を張り上げる。
敵の本拠地なだけあって、中にはかなりの数の盗賊がいた。
俺はそれを立ち止まる事無く、盗賊を屠りながら進んでいく。
―どこだ、ミユ、フローラ!
俺は必死に『気配察知』を使って二人を探す。すると、一番奥に少し強い気配を二つ感じた。
―いた!一人はミユだな、良かった。まだ生きてるみたいだ。もう一人はリオでもリトラでもないみたいだ。って事はこいつが盗賊の頭か。
俺は気配の感じる方へ全力で向かう。
だがそれを封じる様に、次から次へと盗賊が湧き、行く手を阻もうとしてくる。
「クソッ!邪魔だぁ!」
俺はがむしゃらに走った。何人の盗賊を殺したのかわからないほどに。
そして、遂に目的の部屋にたどり着いた。
そこに扉は無く、中を見ると泣き叫ぶフローラと、盗賊に斬られ、ゆっくりと地面に倒れるミユの姿が目に写った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます