第29話 盗賊団討伐作戦 ~リオ②~

 馬を走らせて半日、予定通りセルデンの町へ到着しました。


 セルデンはソル王国直轄という事もあり、物流が盛んで、様々な店が建ち並んでいます。

 活気のある良い町だと思いました。


 しばらく町中を進むと、こちらを監視するような視線を複数感じました。



 ―5、いや6人ですね。襲ってくる気配はありませんが…。何者でしょうか。


 私が視線の元へ行こうか悩んでいると、この町の衛兵らしき者と貴族風の方が近付いて来ました。


「お疲れ様です!私はセルデン駐屯騎士団所属のキース・スタンレー二等兵であります!ソル王国騎士団の皆様、ご足労いただき、感謝いたします。」


「私はこの町の領主を務めさせて頂いているレオナルド・ダグラスという者です。どうぞよろしくお願いいたします。」


 キース様はまだお若く、ハキハキとした好青年で、レオナルド様は腰が低く、気品のある雰囲気が漂っています。対象的なお二人ですね。


 二人は私達に挨拶をし、それに分隊長様がお応えしました。


「出迎えご苦労。私がこの部隊を指揮するアーガス・ウェスタンである。早速だが状況を伺いたい。」


「かしこまりました。では私の屋敷でお話致しましょう。ご案内いたします。」


 どうやら皆様はレオナルドという貴族様に付いて行くようです。


 私は先程の視線が気になっていたので、再度確認してみました。しかし、すでに気配は無くなっており、追う事ができませんでした。

 仕方が無いので、私はとりあえず、皆様に付いて行く事にしました。


 私達はレオナルド様の屋敷へ案内していただき、そこで盗賊団の情報を聞く事にしました。

 レオナルド様の屋敷はこの町の建物の中では一番大きく、綺麗な装飾品もたくさんあり、とても豪華でした。


 私達は応対用の部屋と思われる場所に案内され、そこで話が行われました。


 キース様のお話によると、エルム街道での目撃情報の他に、この町では最近、若い女性が数名、行方不明になっているとの事です。

 ある日突然、消息を絶ってしまうそうで、手掛かりもなく、未だに誰一人見つかっていないそうです。


「エルム街道でも奴隷商が盗賊に襲われて、奴隷が奪われてしまう事件が頻発しています。なので盗賊が関わっている可能性が高いと思われるのですが。」


「ふむ…。そうだな。では我々もしばし、この町に留まるとしよう。」


 私は綺麗な装飾品と所々気になる所があり、あまり話を聞いていませんでした。


 気付いた時には、お話が纏まっていて、私達はしばらくセルデンに留まる事になっていました。


 その後、私達はレオナルド様の屋敷を出て、宿を探しに町中へ向かいました。

 人数が多いので、一つの宿では部屋が足りず、分散して、皆様別々の宿に泊まる事になりました。


 私は宿の手続きを済ませた後、町中を見て回りました。町の地理を一通り頭にいれ、夜になるのを待ちました。


 時間が経ち、辺りが暗くなったのを確認して、 あえて人通りの少ない道を一人で歩き回りました。人の気配が無くなった場所まで来ると、昼間の気配を再び感じました。

 それと同時に細い針のような物が私に向かって飛んできました。

 私はそれを避けて、辺りを確認します。すると全身黒い格好をし、仮面で顔を隠した者が十人、私を囲むように現れました。


「…あなた方は盗賊ですか?」


「…おまえは騎士とは違うな。冒険者か?」


 ―…何故、質問に質問を返すのでしょうか。これでは会話が成り立ちません。


「…私は騎士ではありません。あなた方の言うとおり、冒険者をしています。あなた方は盗賊ですか?」


 私は彼らの質問に答え、再び質問をしました。そうすれば答えて頂けると思ったのですが…。


「そうか。それならば問題はないな。我らの雇い主がおまえを気に入ったそうだ。一緒に来てもらおう。」


 彼らは私の質問には答えてくれませんでした。それどころか、一方的に要求をしてきます。

 そして再び針のような物を飛ばしてきました。


 私はそれを避け、一人に近づき、横腹を軽く蹴りました。


「ぐふぅ。」


 妙な声と共に、バキバキと骨の砕ける音がして、その者は十メートル程吹き飛んでしまいます。


 ―おかしいですね。加減はしたのですが。


「くっ…一斉に放て!」


 一人の黒い者がそう言うと、残りの全員が一斉に針を飛ばしてきました。


「遅いです。『風の鉤爪』エア・クロウ。」


「ぐぁぁぁ!」


 私は風の刃を周囲に放ち、黒い者達を無差別に切り裂きました。

 残りの九人の黒い者達は、ズタズタになり、血を流して倒れています。そのうちの何人かは死んでしまったようです。

 その風圧で黒いものが放った針は、私に届く前に違う方向へ飛ばされていきました。


 ―やはり脆弱ですね。


 私はため息をつき、倒れている黒い者に近づいて、仮面を取りました。その者の顔は見覚えのある顔でした。


 キース(ヒューム) Lv 38 ジョブ 暗殺者アサシン

 HP 180/4800 MP 3900/4200

 攻撃力 360 防御力 320 魔力 350

 器用さ 430 素早さ 440 成長度 7.2

 耐性 麻痺Ⅴ 暗闇Ⅵ

 スキル 気配遮断Ⅵ 気配察知Ⅳ 暗視Ⅵ 罠解除Ⅳ

 命中補正Ⅴ 短剣術Ⅴ 弓術Ⅲ 冥術Ⅲ

 EXスキル ーーー

 加護 ーーー


「やはりあなたでしたか。キース様。」


「…貴様…何者だ…何故、俺だとわかった。」


「私は他者のステータスを覗き見る事ができるのです。貴方は騎士の筈なのにジョブが暗殺者アサシンですからね。おかしいと思っていました。」


 私はキース様の髪を掴み、顔を持ち上げて続けて言いました。


「それと私は気配を感知するのが得意なんです。暗殺者なら、もう少し気配の殺し方を覚えた方がいいですね。」


「…ひっ…!」


 私はそのままキース様の髪を持ち上げ、笑みを浮かべながらそう言いました。

 その時のキース様の顔は涙ぐんでおり、とても怯えているようでした。


 私はそのままキース様を引きずり、この町で一番大きな屋敷へと向かいました。

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