第24話 ミハエル
俺達はアランさんを置いて謁見の間を出た。もう少し国王達と話をしていくそうだ。
俺達が廊下を歩いていると一人の騎士が声を描けてきた。
その男は謁見の間にいた騎士だった。
「君達!ちょっと待ってくれ。」
「?さっきいた騎士さんか。何か用か?」
「あぁ、私は王国聖騎士団の五天将が一人。火天のミハエルだ。」
―五天将?
ミハエルは赤色を基調とした鎧を着ている。金髪の長い髪を後ろで束ねていて、気品のある笑顔をするイケメンだ。
「…騎士団のトップ五人の事よ。」
俺が疑問を浮かべた顔をしていると、ミユが横から説明をしてくれた。
「ふーん。そのお偉い様が俺達に何か?」
「いや、此度の依頼を引き受けてくれた事にお礼をと思ってね。本当は私達が出向ければ良かったのだが…。」
―ホントだよ、まったく。
俺が言おうとした事がミユに伝わってしまったのか、横腹に肘打をされた。
「フフ。仲が良いのだね。」
「良くないわよ!」
ミハエルには俺達のやり取りが夫婦漫才か何かに見えたのだろうか。
ミハエルが的外れな事を言うと、すかさずミユが顔を赤らめてそれを否定した。
―このミハエルとやらの目は節穴だな。
「お礼ならさっき国王に言われたし、依頼が完了してからでいいよ。」
「はは。そうか。それより気を付けてくれよ。『百鬼』を纏めている頭領は、凄腕の剣士だと聞いている。騎士団の分隊長が束になっても敵わなかった程だそうだ。」
「へぇ。そうなんだ。それは貴重な情報をどうも。じゃあこれで。」
俺は早く帰りたかったので、早々と話を切り上げて踵を返した。
「あ、それと、君はもう少し礼儀や常識を身に付けた方が良いよ。長生きの秘訣でもあるからね。」
俺が歩き出そうとした瞬間、ミハエルはそう言った。
その時、ミハエルから怒気のような物を一瞬感じた。気になり、振り返ってみると、ミハエルの表情は変わらず笑顔のままで、感じた怒気も消えている。それが少し不気味に思えた。
「…それはそれは。貴重な助言をどうも。」
―…なんだ?今の。
俺はミハエルという男に不信感を抱きながら城を後にした。
俺達は城を出てミユとは解散し、そのまま宿に戻った。
今日はクエストに出る気も失せてしまったので、全員自由行動をする事にした。
リオとリトラは街に出て買い食いをするようで、早々と出掛けてしまった。
俺は時間が出来たので、リトラの新しい武器とローブを作ってやる事にした。
リトラは俺とリオがいつも羽織っている白いローブが欲しいみたいで、「我の分も作れ」とうるさかったのだ。
俺はとりあえずローブから作ってやった。
素材は屑穴でドロップしたアダマンタイトとシンの骨の粉末を合成し、糸状にした物。それを織って作ったのが俺とリオのローブだ。
「次は武器かぁ。あいつはドラゴンだし、得物は使わないかなぁ。」
俺はそう思ったのでグローブを作る事にした。素材は屑穴にいた
ちなみに指の部分は抜いてある。そうする事で、爪を使った攻撃も可能になるからだ。
Tシャツと短パンに関しては、新しく作らない。
思いの外、気に入っているようで、そのままでいいそうだ。ただブーツに関してはグローブと同じ素材で新調してやった。
続いてリオの装備だが、もはや改良する所もないので、アダマンタイトでネックレスを作ってやった。魔力を込めると防御力が上がる仕掛けになっている。リオはLvの割りに防御力が少し少ない気がしていたからだ。それでも充分な戦闘力ではあるが。念には念をというやつだ。
ちなみにデザインは龍の手の部分だけで、それが玉を掴んでいる。普通の女の子にはまず渡さないデザインだ。
一通り武具を作り終わると、強烈な睡魔に教われた。
「ちょっと頑張り過ぎたかなぁ。眠い…。」
俺はそのまま寝てしまった。
ーーーー
「ショウ様。大丈夫ですか?夕食を買ってきたのですが…。」
俺はリオの声で起きた。リオはいつも優しく起こしてくれるから嫌な目覚めにならない。
「おいしい肉串を見つけたので、ショウ様の分も買って参りました。食べられますか?」
―あー、確かに良い匂いだ。そういえば今日はまともに飯食ってなかったなぁ。
「ありがとう、じゃあ頂くよ。」
俺が肉串を頬張っていると、リオの後ろからリトラが顔を出して、こちらを見ている。
俺はそれに気付き、声を掛けた。
「あ、リトラ。おまえに色々作ったから着けてみてくれよ。」
「え?もしかして、ここにある物は我のための物ですか?」
リトラは驚いた顔で聞き返してきた。
「そうだよ。欲しがってたろ。俺達と一緒のローブ。ついでに他のも作ったから、良かったら使ってくれ。」
リトラは目を見開き、いそいそとローブを羽織り、グローブとブーツを身に付けた。
そしてローブの匂いをずっと嗅いで、クネクネと気持ち悪い動きをする。
「…はわわわ。シン様の気配を感じますぅ。」
「あ~良かったな。で、他の物の感想が欲しいんだが。おまえがその姿でどう戦うのかわからなかったから、とりあえずグローブにしといた。体術は使えるんだろ?」
俺がそう言うと、リトラは気持ち悪い動きを止め、手を握ったり開いたりして感触を確かめる。
「問題ありませぬ。感謝致します、主殿。」
「なら良かったよ。」
リトラはそう言うと、再びシャドーボクシングをしたり、クルクル回ったりと忙しく動き回る。
―ホコリ立つから外でやって欲しいんだけどなぁ。まぁ喜んでるみたいだし、今日は許してやるか。
「それと、リオにはこれ。」
俺は机に置いてあったネックレスをリオに手渡した。
「リオの装備は特に見直すところもないから、アクセサリーにしたよ。魔力を込めると防御力が少し上がる仕組みになってるから、良かったら活用してくれ。」
「…ショウ様、もしよろしければ、付けては頂けないでしょうか。」
リオはネックレスを受け取ると、少し恥ずかしそうにそう言った。
「ん?あぁいいけど。」
俺はリオから再びネックレスを受け取り、後ろに回ってネックレスを付けてやった。
リオは長い髪を纏め上げ、うなじを見せる。それに少しドキっとしてしまった。
「…付いたよ。どうだ?」
「…はい。とても嬉しいです。大切にしますね。」
リオは少し顔を赤らめてそう言った。なんだか俺まで顔が熱くなってしまう。
その様子を見ていたリトラは動きを止めてネックレスをじっと見ていた。
「…ズルイです。我もそれ欲しいです。」
ボソッと、リトラはそう呟いたが、俺は聞こえなかったフリをして聞き流した。
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