第17話 手出すなよ
「おい、聞いたか?ドラゴンだってよ!」
「あぁ!俺実物見たぞ!ありゃ間違いなく
「しかも信じられねー事に、
「綺麗な人だったなぁ。お近づきになれねーかなぁ。」
「ばっか。オメーじゃ無理だっての!」
「ちげーねぇ!ギャハハハハ!」
ーーーーーーーー
俺とリオは買い物を済ませ、冒険者ギルドに向かっている。登録して、身分証を作るためだ。
その途中でドラゴンだの、勇者だの、嫌なワードが聞こえてきた。
「なんか、えらい騒がしいな。」
「どうやら、勇者、と言う者がドラゴンを討伐したようですね。」
―あ~。多分、それってあの子の事だよなぁ。
街中で馬車の窓から見かけた日本人風の女の子が頭に浮かぶ。ステータスこそわからなかったが、ジョブは確かに
「なぁリオ。冒険者ギルドに行くの、明日にしないか?」
「私は構いませんが…でも、何故ですか?」
「う~ん、その勇者ってのに会うのがなぁ。今はタイミング的に良くないかなって思うんだ。」
「そうですか。私としてはドラゴンを倒したというのは少し気になりますね。一度手合わせしてみたいです。」
―あぁ…だめだ。昔のクールなリオさんは
「…そっか、まぁリオがそう言うなら…。でもリオ、極力手は出さないでくれ。今はあまり目を付けられたくないんだ。」
「…わかりました。では手早く用事だけ済ませて戻りましょう。」
―リオさん、なんで残念そうにするんだよ。
そんなやり取りをして、俺達は冒険者ギルドに向かった。
ーーーーーー
冒険者ギルドの中はイメージ通りだった。
入ってすぐに受付があり、酒場を併設しているようで、鎧やローブを着た者達が楽しそうに酒を交わしている。
それを横目に、俺達は真っ直ぐ受付に向かった。
「すいません。俺達二人、登録したいんですけど。」
「ようこそ冒険者ギルドへ。登録ですね。ではこちらに記入をお願いします。」
そう言って受付嬢は紙を一枚ずつ出してきた。
―むむ。そういえば字って日本語でいいのかな。普通に言葉は通じるし、字も読めるんだが。なんでだろ。まぁいいか。なんとかなるだろ。
俺は考えるのがめんどくさくて、そのまま日本語で書いた。
「…あの、これはなんて書いてあるのでしょうか?」
―ですよね~。そうなるよね、やっぱり。
受付嬢は困った顔をしていた。
そして、俺もすごく困った顔をしていたと思う。
「…すいません、俺達、田舎から出てきたばかりでして。字がよくわからないのですが…。」
「あ、そうなんですね。では代筆するので、質問にお答え頂けますか?」
「はい、お願いします。」
―なんとかなるもんだな。よしよし。
俺達は優秀な受付嬢のおかげで、記入という難関を無事突破できた。と言っても、ほとんどがデタラメなのだが。
「では最後に、こちらのカードに血印をお願いします。」
そう言って出されたのは、一本の針が立っている台座と、何かの金属で出来たカードだった。
俺とリオは針に指を軽く刺して、カードに血の付いた指を押し当てた。
カードは一瞬光って、付いた血を吸収し、すぐに元に戻った。
「これでカードの登録は完了です。このカードはご本人様の魔力にしか反応しませんので、取り扱いにはご注意下さい。では説明に移らせて頂きますね。」
―ほ~。なかなかハイテクですな。
けど良かった。なんとか無事に終わりそうだ。
受付嬢は丁寧に説明をしてくれた。
冒険者の階級は数字で表すらしい。
一級が最高ランクで、十級が最低ランク。昇級するほど、数字が小さくなっていく。
クエストごとにポイントがあって、達成するとポイントが貰える。
一定の値までポイントが貯まると昇級試験を受けられるようになり、その試験に合格すると、晴れて昇級となる。
逆に、犯罪やインチキをしたりすると減点、もしくは資格の剥奪になるそうだ。ケンカなんかは程度によるが、基本は減点対象外だそうだ。
―意外としっかりしてるんだな。荒くれ者の集まりだと思ってたけど。
「お疲れ様でした。これで登録は完了です。このままクエストを受注されますか?」
「いや、今日は登録だけで。また改めて来ます。」
「かしこまりました。お待ちしております。」
―いやぁ。受付嬢さん、手際もいいし、美人だし。素晴らしいですなぁ。
「よし。登録も済んだし、帰ろうか。」
俺は少しほっこりしながらリオの方に振り返ると、一瞬で顔が青ざめた。
「なぁなぁ、綺麗な姉ちゃん。俺達と飲まねーか?」
「ひょー!スゲー美人だな。駆け出しなんだろ?俺達が色々教えてやるよ。」
「お、こっちは妹か?俺はこっちがタイプだなぁ。」
リオに三人の男が群がって来たのだ。その内の一人は、リオの肩に腕を回してしまった。
その瞬間、リオの表情がみるみる変わっていく。
三人以外の他の冒険者達は、止める様子もなく、楽しそうに見て笑っているだけだ。
受付嬢さんにいたってはオロオロするだけで、どうしようもなくなっている。
―…ヤバイ。前言撤回だ。コイツら何してんだよ。殺されるぞ。ってか一人意味不明な事言ってる奴いるし。
俺とリオは同じ銀髪。しかも俺は背も低いし、顔も女っぽい。この男共は、俺達の事を、きっと姉妹で冒険者になりに来たと勘違いしている。
「…離して頂けますか?私達の用事はもう済んだので。」
リオは男の腕を軽く払い、歩き出そうとした。
「連れないこと言うなよ~。一杯だけ!な?」
「妹さんも一緒においで。」
男は構わずリオに詰め寄る。そして俺も一人の男に手を掴まれた。
―あぁダメだ。リオ、ゴメン。俺の方が我慢できそうにないわ。
その時だった。俺の手を掴んだ男は、俺の目の前から消えた。
正確には外まで吹き飛んでいった。
「…ショウ様に気安く触るな。」
リオは片足を上げながらそう言った。
俺は何が起こったのか瞬時に理解する。同時に頭の中で、何かが切れた感じがした。
「…リオ。手出すなって言ったろ。」
「はい。なので足で失礼しました。」
そう、リオが俺を掴んでいた男を蹴飛ばしたのだ。
―なんだよ、そのありきたりな屁理屈は。
でも、そうだよな。やっぱりリオは最高の仲間だよ。
辺りは一瞬の出来事に静まり返っている。
俺は構わず、リオを掴んでいる男に詰め寄った。
「そうだな。足を出すなとは言ってなかった。オイ、お前も、俺の大事な仲間に何ベタベタ触ってんだよ。さっさと離れろ。」
俺は同じくリオを掴んでいる男を蹴飛ばした。無論死なない程度に。
それでも、男は壁を突き破って、外まで飛んでいってしまった。
そして、俺は残りの一人に詰め寄った。
「あとよ、俺は男だ。」
俺は最後の一人に回し蹴りを浴びせた。同じくその男も外まで飛んでいった。
「…お前らも何へらへら笑ってんだよ。殺すぞ。」
俺は楽しんで見てた連中に『威圧Ⅹ』を使う。
何名かは泡を吹いて気絶した。そうでない者も漏らしながらガタガタと震えてしまっている。
さすが、スキル『威圧Ⅹ』は伊達じゃない。
それを、見ていた受付嬢さんは腰を抜かしてキョトンとしていた。
驚かせてすいません。
「…スッキリしたし、帰るか。」
「そうですね。例の者もいないようですし。」
―…リオさん、まだ暴れ足りないと?
これ以上の面倒事は
その時、入口からあの例の者が入って来てしまった。
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