第16話 お金って大事ですよね
フローラは着替えるため、先に自室へ戻って行った。
俺達はロンドさんに案内されて、倉庫に行き、そこに魔物の死体を置いておいた。交渉するのに、現物を見せるためだ。
死体はバラバラになっているとはいえ、大きさもあるし、臭いも結構キツい。それに血で部屋が汚れてしまうと思ったから、先に案内してもらったのだ。
その後はロンドさんに屋敷の中を案内してもらった。
見れば見るほど屋敷は立派だった。
赤い絨毯が廊下の一面に引いてある場所なんて、テレビで見た国会議事堂くらいしか記憶に無い。
リオも見たこと無い景色に、ずっとキョロキョロしている。
薄暗く、岩肌しかないような場所にずっといたのだから無理もないだろう。
そのままロンドさんの案内で廊下を歩いていると、メイドさんが呼びに来てくれた。フローラの着替えが終わったようだ。
俺とリオは一つの部屋に通された。
部屋にはシンプルな装飾品にローテーブルが一つ。それを挟むように三人掛けくらいのソファーが2つ向き合っていた。
多分応接間か何かだと思う。来客を圧迫しないよう配置されたインテリアに、センスの良さが感じられた。
部屋には一人の男とフローラが俺達を待っていた。
「はじめまして。私はフローラの父で、アラン・シュヴァルツと申します。話はフローラから聞いているよ。護衛についてくれた者達の事は残念だが…。娘とロンドを救ってくれて、本当にありがとう。」
男はフローラの父だった。
端正な顔立ちで、外国の俳優さんとかにいそうな見た目だ。こんな豪邸に住んでいるくらいだから、横柄な人なのかと勝手に思っていたのだが、以外と話しやすい雰囲気だ。
部屋に入って右側のソファーにアランさんとフローラが座り、もう片方のソファーに俺とリオが座った。
ロンドさんは部屋の出入口付近に立っている。
リオはソファーをフニフニしたりして、感触を確かめている。
―なんでもいいけど、リオは少し落ち着きなさい。
「ではショウ君。さっそくなんだが、あの『災害』を討伐したそうだね。しかもそれを売って頂けると聞いたのだが。」
「あぁ。その話をしに来たからな。」
「先程、現物は見させてもらったよ。あの『災害』で間違いないようだ。」
「そうか。で、全部でいくらになる?」
「ん?全部って…君達も武具を作ったりするのに多少は必要だろう?」
「いや、必要ないな。武器も防具も間に合ってる。」
「それはこちらとしても願ってもない事だが…。では、白金貨百枚でどうだろうか?」
―やべえ。金銭の価値がわからん。白金貨っていくらよ。
「…アランさん。恥ずかしい話、金銭の価値がよくわからないんだ。まずそこから教えてくれないか?」
「…なに?君達の住んでいた場所では金銭のやり取り等はしないのか?」
「…必要なかったからな。食べ物は自分で狩っていたし、衣服も魔物の素材から自分で
「なるほど。そのような場所が…なかなか過酷な環境で育ってきたのだな。わかった。ではそこから説明しようか。」
アランさんの説明によると、鉄貨は一円、銅貨は十円、大銅貨は百円、銀貨は千円、金貨は一万円、白金貨は十万円、というくらいの価値らしい。
まぁ、思ったより分かりやすくて良かった。
「ありがとう。で、白金貨百枚って…ちょっと高くないか?」
―あんな獣が一千万円なんて。そこまでの価値があるとは思えんのだが。
「いいえ。あれ程の魔物なら妥当な価格です。あの魔物を素材にした武器や防具なんかは強度、耐性を考えると、どれも一級品になりますから。」
俺の質問に、今度はフローラが答えてくれた。
―あれが一級品?それなら屑穴にいた魔物の素材は何級品になるんだろうか。
「…わかった、その価格でいいよ。」
「…あの、ショウ様。本当に全て譲って頂いてよろしいのですか?」
「え?いいよ。俺達が今使ってる武器や防具の方が断然性能いいから。」
―むしろこれより優れた素材なんて存在しないだろうな。
「あれよりもか?!まさかミスリル…いやアダマンタイトか?!」
俺がそう言うと、アランがいきなり声を荒げた。
その声にリオもビクッとなっていたのが面白かった。
「…すまないが、それは言えない。後、先に言っておくが、譲る気もないからな。」
「…あ、あぁ。申し訳ない。しかし、君達は一体…。」
「その辺も言えないな。あまり詮索はしないでくれ。」
―言っても信じないだろうしなぁ。
「…すまない。私としたことが。以後気を付けるよ。」
「構わないよ。わかってくれたならそれでいい。」
その後、少し微妙な空気になってしまった。それを感じてかフローラが話題を変えて俺に話しかけてきた。
「ショウ様とリオ様はこの後どうなさるのですか?」
―フローラさん、ナイスです。
「そうだなぁ。冒険者ギルドも行きたいし、宿も探さないといけないな。」
「それなら本日は我が家に泊まって行かれてはどうでしょうか?」
「それはいいな!家族の命の恩人だ。お礼もしたい。是非泊まっていってくれ!」
―う~ん、正直断りたい。なんか落ち着かないんだよなぁ。
「リオ、こう言ってくれてるけど、どうする?」
リオは俺と目が合った瞬間、いつにもなく真剣な表情で頷いた。
―リオさん、本当に表情豊かになりましたね。
「…リオも賛成のようだし、お言葉に甘えようかな。」
そう答えるとフローラも先程までとは違い、子どもの笑顔になった。
―あぁ、めんどくさいなぁ。
話がまとまった所で、俺達は魔物の代金と街の簡単な地図を貰い、街に出て食材やら回復薬やらを買い込んだ。
ーーーーーー
「あ!リオ!これなんか似合うんじゃないか?」
「いえ、私にはこのような物は…。」
初めての街に少しテンションがあがってしまい、リオに似合うアクセサリーや髪留めなんかも買ったりして、俺達は楽しんだ。アクセサリーを渡した時、照れてるリオがすごく可愛かった。
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