第12話 旅立ち

「…ショウ様。起きて下さい。」


「…リオ、起きたのか。どうだ?どこか違和感とかあるか?」


「…はい、大丈夫です。それより状況を説明していただけませんか。」


「…そうだな。全て正直に答えるよ。」


 ーーーーー


 俺は事の顛末を全て話した。


 シンが俺たちの傷を癒し、力尽きてしまった事、最後にシンにお願いされた事、シンの力を取り込んだ事、その力でリオを直した事、直した際にシンの血を取り込ませ、身体を変化させた事。


 リオが聞きたいであろう事を包み隠さず、全て話した。


「…シン様は私達のために力を使い果たしてしまわれたのですね。」


「…あぁ。また助けてもらっちまった。そんで、その力は俺が受け継いだよ。シンさんの願いと一緒にね。リオにもシンさんの力は受け継がれているよ。リオの身体に流れてるのは間違いなくシンさんの血だから。」


「…そうですか。」


 リオはそれだけ言うと、シンの亡骸の前でひざまずき、祈りを捧げる。

 リオの目からは涙が流れていた。


 ―――これで良かったんだよな。シンさん。


 リオはしばらくそのまま動かなかった。

 生みの親であり今まで仕えてきた主の死に目に会えなかったんだ。思うところもたくさんあるのだろう。


 俺はそのままリオが祈りを捧げ終えるまで静かに待つ事にした。


 ーーーーーー


「ショウ様、お待たせして、申し訳ありませんでした。」


「何言ってんだ。しっかり別れの挨拶はしておけよ。きっとシンさんも喜ぶだろうから。」


「はい。しっかりとお別れをさせて頂きました。」


 リオはそう言うと、今度は俺の前でひざまずいた。


「ショウ様。この先はショウ様にお仕えさせて頂きたく思います。この身、この命、貴方様に捧げます。なんなりとご命令を。」


「やめてくれ、リオ。俺はおまえとそんな関係になる事は望んじゃいないから。」


「ですが、ショウ様は私にとっては恩人です。それにシン様の魂を継ぎしお方。どうぞ、私をお側に置いて下さい。」


「もちろんリオには側にいてもらいたいと思ってる。けどそれは主従ではなく対等な仲間としてだ。」


 リオはうつむき、ひざまずいたまま、動こうとしない。


「ここを出たらリオは自由だ。俺もリオの意思は尊重したい。けど、できるなら主人と従者じゃなく、仲間として一緒に笑い合えたら嬉しい。どうだろうか。」


「…わかりました。ショウ様がそう望むのであれば。ただ私は今までシン様に仕えてきただけの身です。仲間と言う関係性はどのようにいたせば良いかわかりません。」


 ―そういう事か。困ったな。


「それはおいおい二人で決めて行こう。とりあえず様付けはやめてくれないか?」


「…ショウ、、、様。…すいません、無理です。変な感じがします。」


「どんだけだよ。…まぁしょうがないか、リオがそれでいいならいいよ。」


 ―リオの従者気質はもう直らないかもなぁ。


「それより、リオ。シンさんのこの亡骸、錬成していいか?」


「?私は構いませんが…。」


 リオは俺の突然の言葉にキョトンとした。


「…あの、何か…?」


 ―人形の時と違って表情が変わるようになったから変に可愛く感じるな、クソ。


「…オホン、いやなんでもない。えっと、シンの亡骸を武器に錬成したいんだ。持ち運びも出来るようになるし、ここに置いていかなくて済むだろ。」


「なるほど。シン様も共に戦えるのならば、さぞ喜ぶ事でしょう。」


「ありがとう、じゃあやるぞ。『創造』。」


 シンの亡骸は爪、牙、骨とそれぞれに分解した。

 使うのは大きな牙と骨だ。まずは牙を圧縮し、みるみる小さくなっていく。

 それは白い刀身の一振りの刃となった。イメージは日本刀だ。

 次に骨を粉末にし、再び結合させ、筒状に変化させる。鞘と柄だ。シンプルにイメージは白鞘。

 ただこれは材質が龍神の骨だ。本来の木製と違って、ちょっとやそっとじゃ割れたりしない。充分戦闘にも使えるだろう。


 こうしてできた刀は全てが白く、とても美しい物となった。


「美しいですね。」


「そうだな。この刀の銘は『シン』だ。」


「…素晴らしい名です。きっとどんな厄災も斬り祓ってくれるでしょう。」


「…だな。リオの槍も貸してくれ。」


 俺はリオの槍もシンの亡骸を使って改造した。刃の部分には爪を、柄には骨を使った。元がオリハルコンという最硬の鉱物で出来ていた様なので、少し手を加えただけだ。

 それでも、刃と柄は白く輝き、装飾はオリハルコン特有の虹色に輝いているため、とても美しい仕上がりになった。性能も最高ランクだろう。


 他にも防具や外套がいとうなんかも作った。


 屑穴にはオリハルコンやヒヒイロカネなんかが良くドロップしたのでそれらを素材にした。


「よし。準備も出来たところで…。あぁ。一つ忘れ物だな。」


「えぇ。そうですね。あれだけ片付けてから行きましょう。」


 俺とリオの『気配察知』に一体の魔物が引っ掛かった。

 Lv的には250程。


「前はお目にかかれなかったからな。ちょうど腕慣らししたいと思ってたとこだ。」


「そうですね。腕慣らしにはちょうど良いかと思います。」


 その魔物は他の魔物を数体、率いていた。本来魔物は統率の取れた動きはしない。しかし、ごく稀にそう言った能力を有する魔物が生まれる。それらは『特異体』ゼノと呼ばれていた。


 ??? (特異体ゼノ) Lv 261 ジョブ ーーー

 HP 27980/27980 MP 15400/15400

 攻撃 2860 防御 2010 魔力 1850

 器用さ 1960 素早さ 2320 成長度 8.1

 耐性 麻痺Ⅳ 混乱Ⅲ 暗闇Ⅷ 火Ⅳ

 水Ⅳ 土Ⅵ 風Ⅱ

 スキル 体術Ⅴ 土術Ⅳ 毒霧Ⅴ 威圧Ⅵ 気配察知Ⅴ

 EXスキル ーーー

 加護 ーーー


「熊みたいだな。リオ、俺にやらせてくれるか?」


「はい、お願いいたします。」


「ありがとう。…さぁ。俺達は新たな門出をするところだ。おまえには祝いの花になってもらおうか。」


 俺は『威圧』を使い牽制する。辺りの空気が震えている。その重圧に魔物は動けなくなっている。


『黒葬』ニゲル・フィーネラーティオ。」


 俺が手をかざすと、辺りに黒い炎が現れ、魔物達を焼いて行く。


「安心しろ『特異体』ゼノ。火葬は俺の育った国の弔い方法だ。ちゃんとあの世へ送ってやるよ。」


 魔物達はあっという間に焼けてしまう。

 残った『特異体』ゼノは状況を察知し、逃げ出す。


「…逃がさねーよ。『散花閃』さんかせん。」


 俺は逃げる『特異体』ゼノを追いかけ、追い抜き様に抜刀し、逆風に斬り上げる。

『特異体』ゼノは股から顔に向かって斬られ、血渋きが吹き上がる。まるで散っていく花びらの様に。


「…大した花じゃないが、まぁ、充分か。」


 俺は顔についた魔物の血を舌で舐め取り、冥府の炎で止めを刺す。


「…お見事です。強くなりましたね、ショウ様。」


「リオとシンさんのおかげだよ。さぁ用も済んだし、出るとしますか。」


「はい。行きましょう。」


『空間移動』テレポーテーション。」


 俺は手をかざし、目の前にワープゲートを開く。


「行こう。」


「はい。」


 俺とリオはこうして屑穴を後にした。


 ショウ (ヒューム) Lv 381 ジョブ 錬成士アルケミスト

 HP 39700/39700 MP 1800/39700

 攻撃力 3990 防御力 3970 魔力 4000

 器用さ 3990 素早さ 3890 成長度 10

 耐性 毒Ⅵ 麻痺Ⅷ 睡眠Ⅵ 魅了Ⅶ 混乱Ⅶ 暗闇Ⅹ

 火Ⅹ 水Ⅶ 風Ⅵ 雷Ⅹ 土Ⅷ 冥Ⅹ 聖Ⅹ

 スキル 気配遮断Ⅹ 隠蔽Ⅹ 命中補正Ⅲ 毒霧Ⅰ

 威圧Ⅹ 水術Ⅷ 雷術Ⅹ 土術Ⅵ

 聖術Ⅲ 体術Ⅶ 剣術Ⅲ 短剣術Ⅹ

双剣術Ⅲ 操糸術Ⅲ

 EXスキル 悪食Ⅹ 神魔眼Ⅱ 神火術Ⅱ 神冥術Ⅲ

神空術Ⅱ 創造Ⅱ

  加護 ーーー

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