第8話 決着

 無数の爆撃が止んでしばらくが経った。

 立ち込めていた土煙も晴れて、辺りが見えるようになってくる。

 周囲を見渡すと、壁は崩れ、床はクレーターができ、大小問わずの瓦礫が散乱している。


 本来なら生存者などいない程の惨状だ。

 しかし、俺とリオを中心に半径5メートル程の位置は瓦礫もなく、クレーターも出来ていない。リオがバリアで守ってくれていたおかげだ。

 もちろん、俺もリオも無事だ。


 そして、気になるのがリオの状態だ。

 金色のオーラを纏っていて、シンの瞳と同じ金色に変わっている。明らかに今までと雰囲気が違う。周囲の空気もピリついているのを感じる。


 俺は、見たことのないリオに戸惑いつつも、声をかけようと思ったが、まだ上手く声が出せない。

 すると、変わりにアルマロスの声が聞こえてきた。


「フフフ。あれを無傷で防ぐとは驚きました。お見事です。やはり、あなたは美しいですねぇ。」


「…正直、あなたを侮っていたようです。不愉快極まりないですが、この力を使うに値すると判断いたします。これより先は手を抜きません。お覚悟を。」


 二人はその会話を皮切りに、目で追えない程のスピードで交戦し始めた。


 しかし、先程までとは変わり、リオの速さが勝り、アルマロスは攻撃を避けきれなくなっている。ローブがどんどん切り裂かれ、僅かだが血が出ている。致命傷こそ与えられないものの、着実にダメージは与えられているようだ。


「素晴らしいです!やはりあなたに目を付けたのは正解でした!こちらも本気でいきます。『力の解放』ウィス・リベロ!」


 アルマロスはローブを脱ぎ捨て、リオと同じく金色のオーラを纏った。


 アルマロスは黒い長髪に赤色の瞳をしていて、適度に筋肉のついた引き締まった身体をしている。黒い翼が生えている事以外、人間と変わらない見た目だ。


「さぁ、第二幕と行きましょうか。『死の剣』モルス・グラディウス。」


 アルマロスは両手に黒い剣を持ち、リオに襲いかかった。

 アルマロスが力を解放した事で、スピードもパワーも一段と上がり、再びリオは押され始める。もはや何が起きているのかわからない。


「フフフ。どうしましたか?あなたの力はその程度ではないでしょう。もっと速く。もっと鋭く。もっと私を楽しませてください。」


「…あなたと戯れる気などありません。早々に幕を引かせて頂きます。『魔を打ち破りし槍』ゲイ・ジャルグ!」


「なに?!」


 リオの槍が赤く光出す。

 リオは横薙ぎの一閃をくり出してアルマロスの剣を弾き、勢いを殺す事なくそのまま回転して2撃目を放った。


 その一撃はアルマロスの脇腹をとらえ、アルマロスは吹き飛び、壁に激突した。


 壁からは土煙が上がり、勝敗は決した。かに見えたが、アルマロスは悠然と立ち上がった。

 その姿は不気味で、口からは血を吐き出し、脇腹からは大量の血が流れ出ているというのに、なおも笑っている。


「フフフ。いいです。いいですねぇ。私の『神冥術』しんみょうじゅつを弾くとは。」


「あれを受けて、なお立ちますか。」


「私は不死身なので。あの程度では殺せませんよ。」


「ならば、死ぬまで刻むまでです。」


 リオは超スピードでアルマロスに突進し、一撃を放つ。


『全てを突き穿つ槍』ゲイ・ボルグ!」


 アルマロスは上体を反らし、避けようとするが、リオの放った一撃は、アルマロスの左脇腹を貫通し、大穴を開け、左腕も千切り飛ばした。


「…終わりです。」


「いいえ、終わりませんよ。言ったでしょう?私は不死身だと。」


 そう言った瞬間、リオの槍を残したまま、アルマロスの脇腹に開いた穴が閉じてしまった。それと同時に左腕も瞬時に生える。


「!?」


 アルマロスは腹部に槍を突き刺したまま、リオを蹴飛ばす。

 リオは一瞬の出来事に硬直してしまい、まともに吹き飛んでしまった。


「なかなかいい一撃でしたが、まだ足りませんね。それにあなた、力が弱って来ていますね。まさか、もう限界ですか?」


 リオは『龍眼』と『力の解放』ウィス・リベロを長時間使った事で、MPを大量に消費していた。


「…。」


「その沈黙は肯定、と判断していいのですね。…ガッカリです。」


 そう言うと、脇腹に刺さった槍を引き抜き、痛がるそぶりもなく口を開いた。


「これはお返ししますね。私の趣味ではありませんので。」


 アルマロスはリオの元へ突進した。

リオは『聖なる障壁ホーリーバリア』を張って対応するが、瞬時に割れて消えてしまった。

アルマロスは、その勢いのままリオの腹部に槍を突き刺し、壁まで追いやった。

 槍は腹部を貫通し壁まで刺さってしまい、リオは身動きが取れなくなってしまった。


「…今何を。」


リオはバリアが何故発動しなかったのかわからないようだ。


「フフ。私の『神魔眼』は目に写る魔法をキャンセルできるのですよ。私のとっておきです。あぁ、久しぶりに楽しかったですよ。ですがこれで本当に終わりですね。何か言い残す事はありませんか?」


「…なるほど。随分優しいのですね。」


「これでも、元天使ですからね。」


「…では2つほどいいですか?」


「…なんでしょう?」


「まず、一つめです。あなたは不死身などではありませんね。あなたを刺した時に二つの心音を感じました。恐らく二つの心臓を同時に潰さなければあなたは倒せない。違いますか?」


「フフフ。バレましたか。本当にあなたは面白い。壊してしまうのが惜しくなってきました。…確かに私には右胸と左胸に一つずつ心臓がありますよ。」


「そうですか。ご丁寧にどうも。では、二つめです。あなたは私との戦いで、何か忘れてはいませんか?」


「?どういう意味でしょうか。勝負は既に決しています。思い返すことなど…。」



 ―俺はこの瞬間を待っていた。おまえが俺の存在を忘れ、大きな隙を作る瞬間を。


 俺はアルマロスの千切れた腕から血をすすり、Lvを上げ、『気配遮断』を使ってアルマロスの背中に飛び出した。


「!?貴様は!」


「そうです。私達は『二人』であなたを倒しに来ました。油断しましたね。」


「アルマロス!これでおわりだぁぁ!『死の剣』モルス・グラディウス!!」


「バカな、それは私の…!?」


「あなたの敗けです。『全てを貫く槍』グングニル!」


 俺はシンの短剣を媒体にアルマロスから奪った『神冥術』を使って、右胸の心臓を、リオは空間術で新たな槍を取り出し、左胸の心臓を、同時に貫いた。


「…ばかな…私が…こんなゴミどもに…天界に…帰れると…おもっ…」


「言ったでしょう。ゴミはあなただと。」


 アルマロスは何かを言いかけて、そのまま灰になって消えていった。


ーーーーーー


「リオ、その身体、大丈夫なのか?」


「はい。問題ありません。私は『自動人形』オートマタですから。身体に穴が開いた程度では死んだりしません。」


「なら良かった。でもさすがにボロボロだな、お互い。…早く帰ろうぜ。」


「そうですね。シン様も待っていらっしゃるはずですから。」


 俺達はお互い肩を貸しながら、歩き出した。


 今回の戦いで、俺のLvはかなり上がった。


 ショウ (ヒューム) Lv 156 ジョブ なし

 HP 522/17200 MP 5620/17200

 攻撃力 1740 防御力 1720 魔力 1750

 器用さ 1730 素早さ 1640 成長度 10

 耐性 毒Ⅳ 麻痺Ⅱ 混乱Ⅱ 暗闇Ⅳ 火Ⅳ

 水Ⅲ 雷Ⅲ 土Ⅳ 風Ⅱ 闇Ⅲ 聖Ⅵ

 スキル 気配遮断Ⅷ 短剣術Ⅷ 体術Ⅵ 操糸術Ⅲ

 気配察知Ⅶ 火術Ⅶ 双剣術Ⅰ

 EXスキル 悪食あくじきⅧ 神冥術Ⅱ 魔眼Ⅰ


 



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