第5話 不気味な気配
初めて魔物を狩った時から幾日が経った。
ここ数日、リオとはほとんど一緒にいるので、大分打ち解けられた気がする。
ショウ (ヒューム) Lv 77 ジョブ なし
HP 9300/9300 MP 9300/9300
攻撃力 950 防御力 930 魔力 960
器用さ 940 素早さ 840 成長度 10
耐性 毒Ⅳ 麻痺Ⅱ 混乱Ⅱ 暗闇Ⅳ 火Ⅳ
水Ⅲ 雷Ⅲ 土Ⅳ 風Ⅱ 闇Ⅲ 聖Ⅵ
スキル 気配遮断Ⅴ 短剣術Ⅳ 体術Ⅴ 操糸術Ⅲ
気配察知Ⅳ 火術Ⅳ
EXスキル
これが今の俺のLv。これでもまだ一人では戦えない。ていうか普通に殺される。一度図に乗って戦ってみたが、死にかけた。
シンさんが言うには『屑穴』の魔物の平均Lv120~200はあるそうだ。
今の俺の倍。リオに能力を上げてもらっても全然追い付かない。
後、気付いた事がある。『悪食』は食べる事で敵の能力を吸収するが、スキルや耐性LvはⅠの状態で吸収される。つまり、耐性やスキルを育てるには使用しなければいけない。
そしてスキルや耐性は100%ではない事。食べても覚えない事が結構ある。
経験値は100%で貰えてるみたいだが。
これに関しては『悪食』のLvによるものだと思うのだが、まだわからない。
「随分Lvが上がったな。」
シンは俺を見てそう言った。
「そうだな。でもまだ一人ではとても戦えない。」
「焦る事はない。まずは死なない事が最優先だ。」
―確かにそうだ。死んだら元も子もない。まだシンさんやリオに恩を返してないからな。
「それより二人共に注意しておく。なにやらおかしな気配を感じた。」
「どうゆう事だ?」
「少しばかり強い気配を感じる。おそらく
―?
「…そうですね。私も少し前から感じていました。」
「危ない奴なのか?」
「あぁ。ごく稀に生まれるのだ。自我を持ち、他の魔物を糧とする奴がな。ここの魔物はLvこそ高いが自我を持つ事はあまりない。故に動きが単調だからリオ一人でも戦えるのだ。だが、下手に自我を持つと途端にたちが悪くなる。」
―なるほど。力の弱い人間が長い歴史、生き長らえてきた理由だ。知識、知恵を持ってる。学習するって事だ。…厄介だな。
「どんな奴かわかるか?」
「うむ。姿形はわからぬが、おそらくLvでいえば250~300はあるだろうな。しかも日に日に強くなっておる。」
―うげ。リオかそれ以上って事か?危な過ぎるぞ。
「放っておけば手が付けられなくなりますね。早いうちに殺した方が良いのでは無いでしょうか。」
「リオの言うとおりだ。今ならシンさんも来てくれれば確実に倒せるんじゃないか?」
俺がそう言うと、シンは少し渋った様子で答えた。
「…すまぬが、我は行けぬ。我が行けばこの部屋の結界が崩れる。」
―…ん?何でだ?シンさんが来ればすぐ片付くだろ。
俺は一瞬、シンが何を言っているのかわからなかった。期待した物とは正反対の回答だったから。
「結界なんて、また戻って来て張り直せばいいじゃないか。lv250~300って、リオ一人じゃ危ないぞ。俺のLvじゃ頭数にも入らない。」
「私一人で大丈夫です。ショウ様は危険ですので、こちらにお残り下さい。」
「おいおい、リオも何言ってるんだ。危ないって!シンさん、今回は非常事態なんだろ?部屋なんかより、リオの命の方が大事なんじゃないのか?!」
「ショウ様。私は
「人形だとか、そんなもん関係ないだろ!リオはリオだ。俺にとっちゃ大事な存在だ!いなくなられちゃ困る!」
「…ショウ様。ありがとうございます。ですがそれは間違いです。」
「間違いってなんだよ!俺の正直な気持ちだぞ!」
「いいえ、間違いです。なぜなら、私はいなくなったりしませんから。これからもシン様とショウ様のお世話をしなくてはなりませんので。いつも通り、魔物を狩りに行くだけです。」
リオはそう言うと持っている槍を一振りして歩きだした。
「…なら俺も行く。」
その言葉を聞いて、リオは歩みを止めた。
「…不要です。一人で充分ですので。」
「わかってる。俺が行っても足手まといになる事くらい。けど危険だとわかってて放ってはおけない。それに、囮くらいにはなれる。いつも通り魔物を狩りに行くだけなんだろ?」
「ショウよ。無理だ。おぬしのLvでは本当に死ぬ。」
「シンさん。恩人が俺を守るために一人で危険に立ち向かおうとしてるんだぞ?ここで動かなきゃ俺は俺を許せなくなる。」
「…なるほどな。」
シンはそう言うと、自身の鱗を数枚、ベリベリッと剥ぎ取り、盾に錬成した。
「?!シン様、何を!?すぐに治します!」
リオはシンに駆け寄って回復魔法をかけようとするが、シンがそれを制止する。
「リオよ、良いのだ。これくらいなんともない。それよりショウ。おぬしにこれを渡しておく。多少の攻撃には耐えるはずだ。」
シンは剥いだ鱗を盾に錬成し、俺に渡してきた。
鱗を剥いだ箇所からは血が出ている。いくら龍神といえど、かなり痛いのではないだろうか。
「シンさん、大丈夫なのか?」
「問題ない。この程度の傷などすぐに治る。だがこれからおぬしたちは危険に立ち向かおうとしておるのだ。ならば我も傷の一つでも負わんとな。本当は一緒に行ってやれればよいのだが…。」
―ここまでするのに、一緒に行かないなんて。なんでだ?
疑問には思ったが、リオの覚悟と、シンの痛みを無駄にしてしまう気がして、それ以上聞けなかった。
「…いや、俺も無理言ったみたいだ。ごめん。リオ、いつも通りだ。俺とリオで魔物を狩りに行こう。」
その言葉にリオは頷いた。
「シン様。帰ってきたらその傷は私が治します。」
「うむ。おぬしらの帰りをここで待つ。必ず帰ってこい。」
「あぁ。行ってくる。」
「行って参ります。」
―必ず戻るさ。いつも通りだ。それに、俺はまだ死ねない。
この二人にまだ何も返してないのだから。
俺達は魔物のいる場所まで『気配察知』を使って、最短ルートで
そんな傍ら、シンは二人が出ていくのを静かに見送る。
―…必ず戻るのだぞ。二人共。
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