第4話 いざ、魔物狩りへ
俺とリオは元いた部屋を出て、魔物狩りを始めた。
部屋を出てから何度か魔物に遭遇した。
リオが合図をしたら、『気配遮断Ⅰ』を使って岩陰に隠れる。後はリオが敵を弱らすのを待つ。敵が弱ったところで俺が止めを刺す。これの繰り返し。
言ってしまえば、完全に良いとこ取り。レベリングの基本とも言えるのだが…。
そうして、しばらくリオの後ろについて歩いていて思った事がある。
明らかに魔物の強さが異常なのだ。
炎や氷、雷といった攻撃を仕掛けてくるのは当たり前で、一瞬で岩を溶かす酸を出す奴や、統率のとれた軍団で行動する奴。姿を消して、不意討ちを狙ってきたりと、プラスアルファで厄介な能力を持ってたりする。
それに、魔物をまともに見るのは初めてだが、大体の奴が一目でヤバい敵だとわかるぐらい凶悪な見た目をしている。
シンの奴、何が『多少』だよ。ラストダンジョンだろこれ。
それでもリオはほぼ無傷で魔物を狩っていく。
リオは白く、美しい装飾を施した槍を扱って戦う。まさに
リオの戦う姿に、初めは目を奪われて隠れる事を忘れてしまった程だ。
だが、一振り槍を薙げば魔物が真っ二つに、穿てば魔物を貫通し、後ろの魔物、壁にまで穴が開く。
リオが味方で良かったと心から思った。
リオのおかげで危なげなく、魔物を狩っていく。
それでも、とてもゲームの序盤で出会う敵とは思えない。リオと魔物の動きなんかも目で追えないし。俺一人だったら間違いなく即喰われてる。
どういう経緯で俺がここに入れられたかはわからないが、最初にリオが見付けてくれたのは、本当に幸運だった。
神力が溢れ返ったらこんな魔物がうじゃうじゃいる世界になるって事か。恐ろしいな。
そんな感じでしばらく進んでいると、リオがいきなり振り返る。
「ショウ様。ステータスの確認をお願いいたします。」
「?あ、あぁ。わかったよ。『ステータス』。」
俺はびっくりして、一瞬声が裏返った。
ショウ (ヒューム) Lv 7 ジョブ なし
HP 2300/2300 MP 2300/2300
攻撃力 250 防御力 230 魔力 260
器用さ 240 素早さ 140 成長度 10
耐性 毒Ⅰ 麻痺Ⅰ
スキル 気配遮断Ⅰ
EXスキル
―あれ?部屋を出る前と、なんも変わってない気がする。一応、止めは俺が刺しているから、多少なり経験値は入ってると思ったんだけど…。
「ショウ様。Lvは上がっていますか?」
「いや、部屋を出る前と変わって無い気がする。」
「本当ですか?ショウ様のLvなら、もう2~30程上がっていてもおかしくないはずですが…。」
―うん。俺もそう思う。だって明らかにここの魔物強いし。経験値的な物もかなり持ってると思ったんだけど。
「やっぱり、止め刺すだけじゃダメとか?」
「そんな事はありません。私も最初はこの方法でシン様にLvを上げさせて頂きましたから。」
―う~ん。だとすると俺に問題があるって事か?
「俺自身に問題がありそうなんだけど…。そう言えば、シンさんは俺のステータス見えてたみたいだけど、リオさんは見えないの?」
「『龍眼』というスキルを使えば見られるのですが、体力と魔力をかなり消耗しますので、極力使わない様にしているのです。ですが、シン様は特別です。常時『龍眼』を発動していますから。本来は他者のステータスを覗く事はできません。」
―常時発動って。そんなんありなのか?
「なら、ステータスを見せたい場合は?任意で見せる事も無理なのか?」
「『ステータスオープン』と言って頂ければ他者にも見せる事が可能です。」
―『ステータス』の後に『オープン』ね。まんまやん。
「わかった。ならリオさんに見せるから確認してもらっていい?」
「かしこまりました。私でよければ。」
「問題ないよ。気付いた事があれば教えてくれ。じゃあ、『ステータスオープン』。」
俺はリオにステータスを見せてみた。
「…そうですね。あれだけ魔物を倒してこの数値というのはおかしいです。」
―やっぱりか。魔物は既に3~40体は倒してる。
それにリオさんが言うなら間違いないんだろうな。だとしたら、俺の体質か?異世界人だからこの世界の人よりLvが上がりにくいとか?そんなん最悪じゃねーか。
少し考えて、ある事に気付いた。というより、お腹が鳴った事で気付いた。
「…あぁ、きっと『悪食』のせいだ。確か『気配遮断』もスープに入ってた魔物を食ったからだってシンさん言ってたし。」
「という事は倒すだけではなく、食さなければならない、という事ですか。」
―恐らくそうだろうな。なんでもっと早く気付かなかったんだ。
…いや、気付かなかったというより、無意識に目を背けていたのかも。魔物ってグロいし、リオさんが殺した後はさらに気持ち悪いから。
それに遭遇した魔物はほとんどが虫系。巨大ムカデとか、クモとか。食べ物のカテゴリーには普通入らないものばかりだ。
「では休憩も兼ねて食事にしましょう。
そう言って、リオは直径5メートル程のドーム型の結界を張った。
「これで魔物を気にせずに休息が取れます。」
―リオさんパネェっす。有能過ぎるでしょ。
「ではショウ様にはこれを。」
リオがゴソゴソしだしたと思ったら、いきなり巨大なクモの死骸が現れた。
―――ファッ?!?!
今度はびっくりし過ぎてチビりそうになった。
いや、決してチビった訳ではない。本当だ。
リオは、1メートルは有ろうクモの死骸を、持っている槍で食べ頃サイズに刻んでいく。
「…リオさん、これは?」
「ショウ様の食事です。先程狩った魔物を空間魔法で回収しておきました。私は食事も睡眠も不要なので、お一人でお召し上がり下さい。」
―…キモチワルッ!すごくいらねぇ。
「…おなか一杯だから今はいらないかな~…。」
「先程、ショウ様の腹部から音が鳴っていました。シン様に『お腹が空いている』と仰った時と同じ音でしたが…。空腹ではないのですか?」
「…いや、それは…。」
―なんて耳の良さだ。
「ショウ様、無理はいけません。人間は食事をしなくては死ぬとシン様にお聞きしました。それに『悪食』の事もあります。さぁ、どうぞ召し上がって下さい。」
―ヤバい。こんなん食った方が死ねる気がする。てかそれ以上に逃げられる気がしない。
「いや、あまり気分が良くなくて…。」
「それはいけませんね。
「…はい。ありがとうございます。いただきます。」
―リオさんの抑揚のない圧力が逆に怖い。食っても食わなくても殺される気がする。
どうせ食べなきゃ死ぬんだ。なら食って死のう。上手くいけばLvが上がるかもしれないし。ダメでもリオさんが治してくれるはずだ。
「…えぇい!南無三!」
俺はクモの切れ端を掴み、口に放り込んだ。
!!!?
…俺はあまりの不味さに、そのまま気を失った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます