魔王との戦い・その7

 女僧侶が唱えるハンハーンの蘇生魔法。


 それは、最上級に位置する神聖魔法の奇跡。ハンハーン神徒の中でも位の高いこの女僧侶は、一日に最上級の神聖魔法を三度まで使用できた。


 ただ、この日は神託に一度使っている。そのため、あと二回が限界だった。


 半々の確率にかける女僧侶。だが、一度目で老魔術師は灰になった。

 だが、勇者の叫びが効いたのか、二度目で老魔術師は蘇生した。


「うーむ。神代魔法を使った後は、想像通りじゃ……。おお⁉ レベルまで落ちておる⁉」


 灰から蘇った老魔術師。体の不調は言うまでもなく、その場でへたり込んでいる。


「ちょっといい? 『霊質変換』って、対象を選べないの?」


 ただ、そんな事を気にもせず、老魔術師に詰め寄る妖精必死の妹


「まあ、ある程度……」

「それってかなり重要な情報だけど⁉」


 少しばつの悪さを感じているのだろう。老魔術師は、妖精怒っても可愛い妹から視線を逸らす。


「言って!」


 その視界に回り込む妖精行動的な妹。それ以上首を回すこともできない老魔術師は、目を瞑り完全黙秘を貫いていた。


「言わないと、目玉に腕突っ込むよ!」


 瞼を無理やりこじ開けて、妖精拷問する妹はその小さな拳を突き出している。強く瞼を閉じようと試みる老魔術師だったが、全身でそれを阻止する妖精攻撃的な妹の力の前に抵抗をあきらめたようだった。


「儂も初めて使ったんじゃ! ただ、理解はしておる。儂もレベル70になって初めて、片方を指定できるとわかったんじゃ……」

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