魔王との戦い・その5

 いきなり呼ばれた老魔術師。突然の事態に、戸惑いを隠しきれなかった。


「なんじゃ、いきなり? 神代魔法……、『霊質変換』の事か?」

「そうだよ! それを使って、勇者と狂戦士の魂を入れ替えて戦えばいいよ!」


 だが、その提案に目を瞑る老魔術師。そして、時間だけが過ぎていく。


「爺さん――」

「無理じゃ……」


 妖精催促する妹の声に、老魔術師はただそれだけ答えて黙り込む。


「どうして? もうそれしかないよ? ほら、また魔王が分裂したよ? 今度は魔王から魔王が出てる。魔王が魔王で、魔王だよ⁉」


 あせる妖精納得しない妹の言葉は、要領を得ないものに聞こえるだろう。だが、状況はそれを物語る。今度は一度に四人の魔王と戦う狂戦士。ただ、まだかろうじて持ちこたえていた。


「ダメなんじゃ……。あれは儂の命を食らう……。死んでしまうんじゃ……。そんな事をすれば、悲しむ者が大勢おるじゃろ……」


 渋る老魔術師の言葉に、妖精自信に満ちた妹が胸を張ってその言葉を告げていた。


「居ないから大丈夫だよ!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る