魔王との戦い・その2
魔王と狂戦士の一騎打ちは続いている。
ただ、魔王は自らの不利を理解したのだろう。その膨大な魔力をつかって勝負に出たようだった。
闇を作り、そこに身を潜めた魔王。その闇を狂戦士が切り払った時、一同はそこに信じられないものを目にしていた。
「見て! あれ! 魔王が二人いるよ!」
「ふむ、暫定的にあれを魔王一号と魔王二号と名付けよう。少し待ってもらえれば、より美しい名前を考えるよ」
「なんと! あの魔王は配下を生み出すと共に、自らを盾にしておる! おお! 母性を感じるぞ! ただ、儂の守備範囲を超えておる!」
「なんだと⁉ あれは女なのか……。困った……。あの外見では男の名前しか思いつかない……」
「困る事それじゃないよね⁉」
女僧侶を見つめる勇者。
まるで魅了されたかのように、ほんのり朱に染まる女僧侶。
「女僧侶くん、ハンハーン神に尋ねて欲しい。神聖魔法に『ハンハーンの啓示』があるだろう? 蘇生魔法と並んだ最上級の神聖魔法に」
「ええ、あるわ……。でも、あれってけっこう神聖力を使うのよ? 良いの? まだ戦いは続いてるけど? あれ使っちゃうと、今日は最上級神聖魔法をあと二回しか使えないわよ?」
「もちろんだよ。あの魔王が女か男かの方が重要だよ。男に『魔女王』って名前を僕が付けたら、それこそ大問題と思わないかい?」
「まあ、たしかにそうね……。あたしも男僧侶とか言われたらショックだわ」
「お主のその乳で、男僧侶というやつなどおらんわい! いや、ひょっとすると幻か? どれ、儂が確かめてやろう」
「良いわけないじゃん⁉ あと、エロ爺さんはその手の動きをやめて!」
「うわー。このエロ爺、さいてー。死んで灰になればいいんだわ!」
「ふっ、爺さん。正直さは美しいが、それは時と場所を考えるべきだ」
「アンタもだよ! この馬鹿勇者!」
口論が続く中で、最初の魔王と狂戦士の間に、新たな魔王とそれが生み出した配下の壁が出来上る。
その距離を生かすように、元の魔王はさっきまでの近接戦ではなく、攻撃魔法を繰り出していた。
だが、それでも狂戦士の強さは無類。魔法を剣で薙ぎ払い、それをも利用して生み出され続けていく魔物を一掃し続ける。
だが、さすがに疲れがあるのだろう。その勢いは次第に衰え始めていた。
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