戦わずに勝利する。それが勇者の美学らしい。
「この僕が戦い? 美しいこの僕の前では、戦いなんて起きないよ?」
「なら、戦っている場所に行け! ちょっとは強くなれ!」
「無粋だよ。それよりも、旅の仲間をまず連れてきて。一人は女僧侶だね。美しいこの僕のお供に花は必要だろ? そして、定番の魔術師は、まあこの際だから爺さんでいいよ。戦士はこの僕が用意する。従者としてね」
召喚されたこの
一度は絶望に沈む王城。その現実はあまりに残酷。
噂では、昏倒した国王がうなされながらも『チェンジ』と言う程だったという。
ただ、
――そして、ようやく旅立ちの日。それは秘密裏に行われた。
確かに、勇者が召喚した従者は、強さの限界である『レベル100』を越えて測定不能――暫定的にレベル100として認定――な上に、『限りなく不死』をもっているという規格外の存在。
だが、その見た目は全裸の狂戦士。しかも、召喚主とは真逆の醜悪さで、さらに自らの意志をもたぬ存在のようだった。その事が、この旅立ちを決定づけた。
――従者が、『魔物と見間違われる可能性がある』という一言で……。
ただ、ここから勇者一行の反攻の旅が始まる。その他に勇者に同行するのは、三人の選抜された者たち。
一人は熟達した老魔術師。レベル70という傑物にして、自らの命を燃やす神代魔法『霊質変換』の唯一の使い手。
そして、もう一人は女僧侶。レベル40という上位者にして、ハンハーン教には珍しい魅惑的な体の持ち主。
そして、最後に
ただ、旅といっても勇者は常に馬車の中。
それでも従者である狂戦士の活躍により、魔王軍はその数を減らしていった。
だが、それではいつまでたっても強くならない。旅に出ても、馬車の中から降りない勇者のレベルは1のまま。このままでは、魔王を見た瞬間にショック死するかもしれない。
そう考えた
それで、しぶしぶ勇者は戦いのために剣を抜くようになっていた。たまにいる死にぞこないに止めを刺す程度に……。
そんな旅が続き、いつしか勇者もそこそこ強くなっていく。
勇者が魔王城についた時、ようやく彼は、城を守る騎士と同じくらいの強さ――レベル10――になっていた。
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