妹の勇姿をつぶさに見てきた私の話を聞くがいい!

魔王を倒すために、その勇者は召喚された。

 最果ての地にあるといわれる魔王城。


 誰も見たことのないその城は、こつ然とその姿を現していた。


 空に映し出されたおぞましい城。

 それと共に現れたその姿。それは見た者達に共通の理解を植え付けていた。


 ――破壊をもたらす者、すなわち魔王。


 魔王の宣戦布告が終わるや否や、おびただしい数の魔物の群れが進軍を開始する。


 当然人類は抗うものの、その数と力は脅威だった。いくつかの国が滅んでいく中で、生き残った人々が出来る事は願うのみとなっていた。


 ――天よ、どうか我々をお救い下さい。


 その祈りが天に届いたのかは定かではない。だが、その祈りを現実にする者が降臨する。


 ――勇者として。


 勇者召喚はその王国の姫の命と引き換えに行う召喚術。『強さが数値化されるこの世界において、どれか一つの力が最強の者を召喚する』というその王家にのみ伝わる秘術中の秘術。


 ただ、この召喚術には欠点があった。最強の者を召喚するが、何が最強なのかは召喚されてみないとわからないという――。


 そして、勇者は召喚された。まばゆい美しさと共に――。


 まさに、美しさに関しては最強。あまりの神々しさに、見惚れて卒倒する者すらいるほどに……。


 まさに、美しさが最強である証。そして人々は絶望を知る。





 この勇者が、戦う上で最も重要な『総合的な強さの指標が最弱』ということを。






 そう、生まれたての赤子同然の『レベル1』という事実に……。

 

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