聖女デリバリー 聖女を召喚したのは聖女でした

丁太郎。

そして伝説へ

「やったぞ!」


「成功だ!」


「おお!聖女様だ!」


 そんな声に起こされた。

 目が覚めると薄暗い小さな部屋にいて、周りには知らない人達。

 皆、ローブを着ていてまるで映画かゲームの世界の様。

 床には魔法陣の様な模様が書いてある。


 夢かな?


 今年の春、中学校に進学したけど馴染めず、漫画やラノベの主人公みたいに転生したり召喚されたいなーなんてね、と思って寝たから?


 ほっぺたを抓ってみた。

 痛くない。


 なんだ夢か。

 こんな夢見るなんて、よっぽど学校行きたくないんだな。

 はあ、寝よ。


 まてよ? 


 折角夢でも召喚されたんだから、朝が来るまで付き合ってみるかな。


 ということで、ハイ、私は召喚されました。

 聖女って聞こえたし、この後 王子様が出てきて一緒に穢れた世界を浄化したりするのかな?


 見回してみたけど、呼ばれたのは私だけ。

 ラノベで在りがちな私以外にもう一人とかは無いみたい。


 召喚で思いつくといえば魔王討伐系とか食事作る系、チートアイテム製作逆ハーレムの可能性もあるよね。


 周囲を改めて見回してみる。

 周りの人たちは私に話しかけて来る様子はない。

 言葉が理解できたから、言語の自動変換とか便利な力が働いているんだろう。

 とりあえず、こちらから話しかけてみようかなと思った時、正面に見える扉が開き誰かが入ってきた。


 王子様?


 扉の向こうはこの部屋と違い、明るくて確認できない。

 扉が閉められた時、入ってきたのは女性だと判る。

 どういうことだろう?

 王子様じゃなくて、王女様?


「成功です。聖女様」


 え? 

 入ってきた人は聖女と呼ばれた。

 私が聖女じゃないの?


「無事、聖女様を召喚できました。聖女様」


 んん?向こうも聖女、私も聖女?

 聖女が聖女を召喚って事?


 向こうの聖女様はプルプル振るえている。

 そして、


「ヨッシャ!!」


 ガッツポーズをとりながらそう叫んだ。

 その光景に周囲はポカーンとしていた。

 その様子に気づいた聖女様はコホンと咳払いをした。


「皆様、ご苦労さまでした。これは偉大なる一歩です。今日の所はゆっくり休んで下さい」


 先程ヨッシャと叫んだと思えないような優しく綺麗な声で周囲をねぎらった聖女様。


「聖女様、突然私達の世界に御呼び立てしてしまい、申し訳ございませんでした」


「あ、いえ、その…」


 急に話しかけられて返事ができなかった。


「私の話がわかりますか?」


 責める感じもなく、優しい感じで確認のためと思われる質問をかけらる。


「はい、言葉はわかるようです」


「よかった。仮説では大丈夫のはずだったので安心しました」


 その言葉に私は逆に不安になった。

 仮説の理論で呼ばれたの?私。


「自己紹介と事情をお話すべきなのですが、取り敢えず部屋を変えさせて下さい」


 聖女様は申し訳なさそうだった。

 私としても異論は無かった。

 夢はもう暫く続くらしい。

 学校にいくよりは夢の中の方がいいかな。


 ーーーーーーーーーーーーーーー


 通された部屋は豪華の一言に付きた。

 促されるままにソファーに腰掛ける。

 座ったことも無いような高級感に、かえって緊張してしまう。


 改めて聖女様を見てみた。

 ブロンドの髪は長く結わえてある。

 枝毛なんて無さそうだ。

 肌も白くシミなんて無い。

 顔は整っていて、瞳は深い青。

 ため息が出る程、綺麗な人だった。


「まずは自己紹介させて下さいね」


 そう聖女様が言った時、扉がノックされた。


「ごめんなさいね」


 私に謝ってから、


「どうぞ」


 と、ドアに向かって返事をした。


 ガチャリ!


 鍵が開く音がした。

 今の言葉で自動的に鍵が開く仕掛けになっているのかな?

 なんか凄い。

 魔法の世界っぽさを感じてテンションが上がってしまう。


 扉が勢いよく開けられ、執事ぽい感じの男の人が叫んだ。

 よほど慌てているのか、挨拶もなければ部屋に入ることもしない。


「大変です!!東区3丁目に魔王が発生し暴れています!」


「まぁ!大変!あそこは今年に入って3回目ですね。判りました。すぐ向かいます!」


 東区3丁目?

 魔王?

 発生?

 どういうこと?


「ごめんなさい。直ぐに帰って来ますので少しだけお待ち下さいね」


 そう言って聖女様は部屋を出ていった。

 聖女様も慌てているのか、扉は開けっ放しで執事の人も聖女様についていってしまった。


「勇者は現場にいますか?」


「勇者様は全員、他の現場でして……」


 遠ざかる2人のそんな会話が聞こえてきた。


 どういう世界なのここ?

 取り敢えず待ってみるかな……





 待つこと3時間。聖女様は帰って来なかった。

 はぁ、へんな夢だな。

 もう寝ちゃうか。

 私はソファーで寝ることにしたのだった。


<あーあ、起きたら学校かぁ、やだな>


 なんて思いつつ、夢の中でも眠りについた。


 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

「あれ?」


 目が覚めたら、まだ夢の中だった。

 王侯貴族が住む様な豪華な部屋。

 その部屋に私一人。

 周囲には誰も居ないし、どうすればいいの?

 とりあえず再び頬を抓ってみた。

 痛くない。

 うーん、随分と長い夢だなぁ。


 ぐ〜〜!


 う、今のは私の腹が鳴った音だ。

 もう、恥ずかしいなぁ。

 夢の中でもお腹はすくんだね。

 まあ呼び出されてから結構時間も経ったから、仕方ないけどね。

 しかし、いくら夢とは言え、呼び出しておいて放置とかヒドイくない?

 なんか腹が立って来たぞ!


 これはきっとあれだ、空腹になると人は凶暴になるってやつだ。

 私が不機嫌なのはそういう人格なのではなく、お腹が空いているからなのだ。

 このまま待っても餓死しそうなので、部屋から出てみることにしよう。(夢の中で餓死したらどうなるのかしらん) 

 自分の身は自分で救わないとね。


 扉は開けっ放しのままだった。

 あれから誰もこの部屋に来ていないらしい。

 部屋の中から扉の向こうの様子を見てみると、この部屋は突き当りの部屋の様で扉の向こうは長い廊下が一直線に伸びている。


 うーん、どうしようか……

 もし、向こうから誰か来たら隠れようもないじゃないの。

 などと思って悩んでいると向こうから誰かが来るのが見えた。

 私は焦ってソファーに戻る。

 待っていると入ってきたのは男の人だった。


「聖女様、今までお待たせしてしまい大変申し訳ございませんでした」


 いかにも執事ぽい感じの中年のオジサンだった。

 こういうシチュエーションならイケメン執事なんじゃないの?

 夢とは言えなかなか思う通りにならないものだね。


「えっと、それで私はどうすればいいの?」


 情報も何も無い状況、呼び出された意図も判らないのだ。


「聖女様に置かれましては状況の説明も無く、ご不安なことかと思います。実は緊急事態が起こりまして……」


「それは、一体?」


「説明致しますので、私についてきて下さい」


「あの、その前に何か食べさせて」


 おかしいな、夢なのにこんなにお腹がすくなんて。


「それは大変失礼いたしました。簡単なものになってしまいますが直ぐにご用意致します」


 執事さんはそういって一端部屋を退出した。

 5分くらいで戻ってきた執事さんの手にはお盆がある。

 優雅に持つお盆に乗っているのはサンドイッチだ。


 勧められるままにティーテーブルに移動すると、サンドイッチとホットミルクが目の前にある。


「有難うございます」


「気が利かず申し訳ございませんでした。この様なものしかご用意出来ませんでしたがご容赦下さい」


「いえ大変ありがたいです。頂きます」


 私は執事さんに見守れているので、大変食べづらいのだけど空腹には勝てず、一口かじってみる。


 美味しい!何コレ! 

 今まで食べてきたサンドイッチはなんなの?

 というくらい美味しいサンドイッチだった。

 ハムとサラダの具と、卵ペースト具のサンドイッチがひときれづつ。

 あっという間に食べ終わってしまった。

 少しものたりないな。

 でもお替りを要求するのも申し訳なないな。

 緊急事態と言っていたし。


「ありがとうございました。とっても美味しかったです。」


 執事さんは一礼してくれた。


 ーーーーーーーーーーーーーーー


 食事が済んだ私は、別の部屋に案内された。

 そこは寝室で、天蓋付の見るからに高級なベッドに先程の聖女様が横たえられていた。

 とても綺麗だった。



 背後から


「おいたわしや」


 と、執事さんの声がすすり泣きが共に聞こえて来る。


 え!?


 もしかして、死んでしまったの?

 それで執事さん達が私のことに気が回らなくなってしまったの?

 私はベッドに近づき聖女様の顔を見た。

 とても安らかな表情だった。

 もし、世界に残された聖女が私一人と言うなら、聖女様の意志を継いで魔王の脅威から世界を守ってみせるね!


「安心してください。生きていますよ」


 死んでいるはずの聖女様より声がかけられた。

 あ!生きてたんだ。

 勘違い!てへぺろ。


「こちらの世界に呼び出しておきながら碌な対応もせず、また、この様な見苦しい姿でお話する事になってごめんなさい」


「気にしないでください」


「有難う。私はシャルティーナ。この国の王女であり、聖女です」


「あ、御親切に。私は神野美琴と言います。ミコとお呼びください。王女様」


 やっぱ偉い人だったんだ。

 今の返事で失礼なかっただろうか。

 無礼討ちとかないよね?


「よろしくねミコ。私の事はシャルと呼んで下さい。貴女も私と同じく聖女様なのですからね」


 そかれら私は、今この国が置かれている状況の説明を受けた。

 この国が魔王による脅威に晒されている事。

 魔王はこの国の各地に多数出現して、悪さの限りを尽くしている事。

 この世界では勇者のスキルと聖女のスキルを持つ者達がいて、その力で対抗している事。

 そして、激しい攻防が続き、今では生き残った勇者は5人、聖女は王女様たった一人になってしまった事。

 そして聖女不足を補う為に、とうとう召喚まで使って聖女の確保に乗り出したという事も。


「お恥ずかしい話ですが、私も危うく魔王の手にかかるところでした」


 そういうと王女の目が死んだ魚の様になって、なにやらブツブツ呟き出した。


 ……私だって……

 好きで聖女の衣装着てるんじゃないっつーの。

 それに私はまだティーンなんだから……


 呟きは小さすぎて何言ってるか聞き取れないけど、何かトラウマが生まれてしまった感じだ。


「あの、大丈夫ですか?」


「あ、ごめんなさい。魔王より受けた傷が癒えなくて。たまに振り返して苦しめるのよ」


「それで私は魔王を倒してくればいいんですか?」


「今動ける聖女様はミコだけ。私が倒せなかった魔王が東区3丁目の民家に立て篭もっているの。早速お願いしたいのだけど、行ってもらえませんか?」


「その為に呼ばれたんですよね。ともかくやってみます。

 で、どうすればいいのですか?」


「聖女のスキルを持つ者は剣であれ、魔法であれ物理ダメージを一切受けません。逆に精神ダメージを受けすぎると死に至ります。だから心を強く持って。」


 あ、なるほど。

 だから、頰をつねっても痛くなかったのか。

 ダメージを受けないんだ。

 という事は私って本当に異世界転移したの?


「わかりました。それでどうやって魔王を倒せばいいんですか?」


「魔王には物理ダメージも精神ダメージも両方与えることができます。しかし魔王に物理ダメージを与えられるのは勇者のスキルを持つ者だけ。そして聖女は魔王にのみ、精神ダメージを与えることが出来るのです」


「なんか凄い。でも魔王限定なんですね」


「はい。攻撃できるのは魔王だけですが、聖女には強い癒しの力もあります。特別なルーティンは必要ありません。言葉で伝えれば発動するのです」


「わかりました。ともかく行ってきます」


「どうか、気をつけて。ミコに神の御加護が在らんことを」


 私はシャル様が倒せなかった魔王を討伐することになった。

 今は遅れて到着した勇者様と交戦中らしい。


「ミコ様、こちらをお召し下さい」


 颯爽と王女様の寝室を後にした私は、執事さんにコスチュームらしきも物を渡されたのだった。



 ーーーーーーーーーーーーーーー



「聖女様到着しまして御座います」


 馬車の揺れが心地良すぎて、いつの間にか寝てたらしい。

 護衛の騎士さんに起こされて馬車を降りると、平地に一軒、平家の民家がぽつんと建っていて、その民家を多勢で取り囲んでいる光景が目に飛び込んできた。


 なんか、むかーーーーしの刑事ドラマみたい。


 私はこの場で一番偉い人の所に案内された。

 20歳くらいのお兄さんで、この中では一番若かそうに見える。

 凛々しくイケメンだ。

 一番カッコよく群を抜いて目立つし、なんか強そうなオーラが出ている。


「聖女様をお連れしました」


 今まで護衛してくれた騎士さんが、勇者様(仮)に報告してくれた。


「おお!聖女様!お待ちしておりました」


「初めまして、ミコと言います」


 なんか緊張してぎこちない挨拶になってしまった。

 私は人とコミュニケーションを取るのが苦手。

 だから小学校時代の友達が全くいない中学校に行くのが苦痛になっていた。


「僕はアルフレッド。勇者をやっているが、一応この国の王子だ。ここに来てくれて有難う。ミコ様」


「王子様!それではシャルティーナ様の」


「ああ、シャルは妹だ。僕の事はアルと呼んでくれ。これから君とはパートナーを組むことになるからね」


「パートナーですか…」


 王子様みたいな偉い人と一緒に行動をしないとならないのは正直シンドイな。


「一方的に呼び出して、厚かましいお願いをしてしまっているから、せめて万全のサポートと待遇を約束するよ」


 私には選択権はないなぁ。

 はっきり言えば、元の世界には帰りたくない。

 私は両親の仕事が忙しすぎて、もう1年以上も彼らと会ってない。

 小学校の卒業式も、中学校の入学式も来てくれなかった。

 それなのに、進学する中学は勝手に決められてしまった。

 私は親の顔を思い出せない。

 そんなに会ってくれないから。

 そんな一人ぽっちの世界に帰りたくはない。

 だからこっちで頑張らないと、この世界で求められているのは

 聖女であって私じゃないけどね。

 それでも、私が聖女らしいから、頑張ってみてもいいかなって思う。


「ありがとうございます。よろしくお願いします」


「こちらこそありがとう」


 アル王子様が手をさし出して来た。

 握手を求めているらしい。

 この世界も友好の証は握手なんだなーと思いつつ、握手に応じた。



 王子は現在の状況を教えてくれた。

 この東区3丁目は、今年に入って魔王の発生は3回目なのだという。


 3回目って何なの?


 すでにツッコミを入れたいけどちょっと我慢。

 激しい戦闘が続いた為、あの平屋以外は更地と化したらしい。

 なぜあの家だけ残ったかの方が謎だ。

 今、魔王は人質を盾にあの家の中に立て籠っているとのことだった。


<うわーやっぱり刑事ドラマだよ>


「今は攻めあぐねているところだよ」


 私に説得できるかな?

 怖いな。

 知らない人と話すのは苦手だし。

 でもこの世界で生きて行くならやらないと。


「私が話してみます」


「わかった、辛くなったらすぐに戻ってくるんだ」


「はい、行ってきます」


 私は包囲陣から出て、家の方に歩いて行く。

 すると窓が開き、おじさんが顔を覗かせた。


「止まれ! お前は聖女か?」


 おじさんに問われ恥ずかしかったけど、素直に答える事にした。


「一応そうみたい」


「ぷ!くく、ずいぶん珍妙だな。さっきのババァといい、その変なヒラヒラの衣装はなんだ!似合うとでも思ってるのか?」


 あーそうそう、この『聖女の衣装』って、結構恥ずかしい。

 レオタードの腰と肩にレースのヒラヒラが着いた、そんな衣装だ。

 でも古来より伝わる聖女の戦闘服らしい。


「うーん、そう言われても由緒正しい衣装みたいだよ?まあ私が着ても確かに似合わないよね」


「すごいぞ、いまの口撃がノーダメージだ。なんてメンタルが強い子なんだ!」


 王子の驚く声が聞こえたけど、そんなにすごい事?


「それよりおじさん」


「…お、おじさん……」


「うん、おじさんね」


 指をさしてハッキリと指定した。


「おじさんでは無い!お兄さんだ!」


「すごいぞ一言で10%のダメージだ!」


「おじさんってひょっとしてロリコン?幼女趣味なの?」


「な!!!!なぜそれを!!!!」


 驚くおじさん。

 だってあんなに綺麗なシャル王女様をババァ呼ばわりするなんてそれ以外無いじゃないの。


「凄い!エグる口撃だ。30%のダメージ!!」


「ま、その件はいいや。それでさ、おじさん。魔王はどこ?魔王とお話しをしたいんだけど」


「ぐは!!!!貴様!!なんだと!!俺を誰だと…」 


「おじさん、だよね?」


「この子は天才だ!天然にエグって行くぞ!魔王のHPは残り30%」


 王子様が驚いているけど、私ってそんなに変な事言ってるだろうか?


「馬鹿者!お前の目は節穴か!この俺が魔王だ!!」


「あ、そうだったんだ。気がつかなくてごめんなさい」


「地味に追加ダメージ5%だ」(王子の解説)


「まぁ良い、聖女よ。わかっているのか?ここには人質がいるのだぞ?」


「ところでおじさん、魔王なんでしょ?話聞いた時から思っていた疑問があるんだけど」


「ん?人の話を聞かん奴だな!まぁいい、なんだ?冥土の土産に答えてやろう」


「何だ、魔王さんて結構いい人ね」


「ぐ!、まあいい!言ってみろ!」


「なんで魔王って名乗っているの?」


「は? どういう事だ?」


「だから、おじさんって見た所一人ぽっちで家来も誰もいないじゃない。なのに何で王を名乗ってるの?王じゃないから唯の『魔』だと思うんだけど。寂しかったの?」


「ぐは!!!!!!!!!!!」


 おじさんは急に倒れてしまった。

 あれどうしたの?


「恐ろしい!最後の一言はオーバーキルだった!」


 王子がそんなことを言っていた。

 あら?倒しちゃったの今ので。


「あんなに苦戦した魔王をいとも簡単に…」


「ここ最近では一番強い魔王だった」


 周囲からもそんな声が聞こえてきた。

 この世界の人たちって割とメンタル弱いんじゃ?


 すぐに突入部隊が家に突入していき、人質を無事に保護。

 よかった、これで一件落着だね。

 でも見れば皆、結構傷だらけで、怪我をしている人もいる。

 きっと私が来るまでに激しい戦闘があったんだろう。


「皆さん、頑張って戦ってくれて ありがとうございました。皆さんのおかげで魔王を倒せました。皆さんの傷が癒えますように」


 私の声に皆の歓声が上がった。


「すごいぞ、傷があっという間に治っちまった」


「ああ、俺もだ!」


 なる程、言葉で仲間を癒すことも出来るんだね。

 聖女のスキルって凄いね。


「ミコ、お疲れ様」


「アル様もお疲れさまです」


「さあ、凱旋しようか」


 王子が凱旋を告げたその時、


「勇者様!!!」

(勇者として行動している時は王子と呼ばせない)


 早馬が駆けてきた。

 アル王子の元に騎士さんがたどり着くと、緊急事態を告げた。


「勇者様!今度は西五番街に魔王が発生しました。対応できる勇者が他におりません!」


「わかった。僕が向かうよ。城にはそう伝えてくれ」


「はは!」


「ミコ、済まないがもう一件付き合ってくれなか?」


「はい、わかりました」


 この連帯感が心地よかった。

 私、聖女としてなんとかやっていけるかな。

 すこし頑張ってみよう。

 私は颯爽と馬車に乗り込むのだった。


 ===============


 瞬殺聖女、後にミコについた通り名である。

 原因は不明だが、あちらこちらで発生する魔王に対し、ミコは王都のみならず、国中に派遣された。

 今日もミコは天然に魔王を泣かせていた。

 そんなミコの隣にはミコの才能に惚れ込み、すっかり実況・解説と化した勇者アル王子と聖女シャル王女がいたらしい。


 おしまい。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

聖女デリバリー 聖女を召喚したのは聖女でした 丁太郎。 @tyohtaroh

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ