俺的美の化身とのファーストコンタクト
何なのだろうか。
もしかして、この世界は全てが金や銀に輝いているのだろうか。
天使の羽が降り、世界には宝石だけが存在するかのように思えてくる。
俺はこの世の極みに辿り着いてしまったのだろうかッ!
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
数分前。
俺、犬山・トーゴはエイトに案内してもらいつつ冒険者ギルドに向かっていた。
「なぁ、エイト?この国って差別とかあんのか?」
「・・・いえ、そこまで強くはないでしょうが・・・この国の六割ほどが多人族で他の種族もいるらしいです。貴族にも多人族以外は普通に居ますし。ただし、五体属性の内の『人』を持たないと国民ではないですけど」
「五体属性?何じゃそりゃ」
「え・・・?『人』『獣』『竜』『霊』『木』の五つですけど、常識ですよね・・・?」
あ、やっちまった。
つい、サソリっぽい尻尾を生やしたガキがいたから質問してたら、俺が常識知らずだとばれてしまったぜ。ま、別にいーけど。
「いや、俺はこの国の常識なんか知らなくてな。そもそも、この大陸の人間でもねーし」
「へ?」
「いや、ここだけの話だが・・・俺はこの世界の人間でもない。そして、王城から抜け出してきた。これだけ言えば分かんだろーよ」
「・・・その話は」
「もちろん、
「・・・承知しました」
「ってことで教えてくんねーか?常識を全部。流石にフィニアさんへの質問だけじゃあ貴族界の常識だけだしなー」
「では、説明します。まずは種族ですけど、私は多人族です。最も人間の中では多い種族ですね。多人族は『人』の属性しか持ちません。では、他の人間九種と呼ばれる種族の説明に移ります」
何か早口だ。エイトは凄く熱量のある様な感じで俺に語りだしてやがる。これは、アレかな。
「まずは樹住族。『樹』の属性を持ち、緑や茶色の髪色と音を捉えるための長い耳が特徴です」
あ、エルフだ。これはもうエルフですわ。
「次に、小人族。彼らは『炎』の属性を持ち、火山や洞窟で暮らしています。元々は小柄な多人族の部族が火山近くに逃げ、炎への耐性と属性を獲得したことで生まれた種族ではないかと言われています」
へー。ドワーフっぽいけど酒飲みとか髭とか言わなかったからホビットに近いんかな?
「次は巨人族。彼らは雲海の中に国を作る閉鎖的な部族です。『雷』の属性を持っていて平均的な身長は多人族の2倍近くと言われています」
うっわー。三メーター以上かよ。えげつな。
「お次に雪原族。アムケーン山脈の向こう側にある雪原に集落を構える少数種族です。『氷』の属性があるものの、見た目は全く多人族と変わりません。そして飛翔族。いろいろな所に住まう部族を持たない種族ですが、『風』の属性により空を飛び回ります。ここまでの五種族が基本六属性の属性を持った人間種です」
ん?六属性なのに五種族なのか?
ま、取り敢えず。
「なぁ、エイト。お前孤児じゃねーだろ。絶対親の顔分かるだろ。というかかなり教養あるだろ」
「・・・」
「ま、どーでもいーけど」
「へ?」
「いや、今は俺の部下なんだし。これからは知恵袋としてスヴェルナたちを支えればいーんじゃね?ってことで」
この時の俺は深く考えていなかった。
このつながりが後々重大な事件を引き起こすことに・・・
・・・多分このフラグ誰も回収してくれないんだよなぁ。
「・・・ありがとうございます」
「ん?別にいーっての」
照れるだろーが。
「残りの種族を説明しますか?」
「ああ、頼む。俺には分かんねーことだらけだからな」
「畏まりました。残りは三種族です。まず、獣人族。『獣』の属性を持っている種族で、各々の獣の特徴を宿しています。その中で特殊なのが竜人族。『獣』の一部でありながら、最も強く特異な属性で五体属性の一つにもなっている『竜』の属性を手に入れています。竜の獣人と言われることもありますが、際立った戦闘力から一つの種族として言われやすいですね。最後に人変族。彼らだけは特殊にも程があります」
「へー」
「・・・シベリアン様も人変族ですよ?」
「へー」
「人狼族ですよね?
「どーでもいーけど。俺は早く冒険がしてーんだよ。すっげー楽しそうだろ、
「申し訳ありませんが・・・冒険者の中で冒険をしているのはごく一部ですよ?」
「へ?」
何だと・・・!?
俺の自由が失われるというのか!?!?
「どういうことだ!」
「いえ、はい。彼らの主な仕事は危険害獣の駆除や、要人の護衛、街の雑用などですし・・・本当に冒険と言える探索系の仕事は報酬と労力のつり合いが取れていないのでほとんど受けたりしませんし。けれど、そういう仕事のほとんどを受けているクランがあったと記憶していますよ」
「よし、そこ入る。俺は冒険をしたいから冒険者になるんだ。寧ろ冒険せずして冒険者を名乗れるかっつーんだ!!」
「ですが、そのクランは少し・・・いえ、かなり素行が悪いことで有名ですよ?クランとしての実力で並べられるクラン序列ですが、五十位前後を彷徨っていますし、五大クランの面汚しとも言われていますね」
「ふーん。どーでもいーな。冒険が出来るならいーんだよ。ついでに可愛い犬耳美少女が居ればマジ神に感謝するね」
―――――その言葉、違えませんね!!!!!!
うっさ。黙れ。死ね。滅びろ。
―――――酷い、酷すぎますぅ!
何この駄女神。
「ああ、アレが冒険者ギルドですね。壁に剣が刺さっているのが特徴なので間違えないと思いますよ」
「へー。ありがとな、エイト」
「もったいなきお言葉です」
ここで、俺とエイトは別れる。手を振るとお辞儀をして去っていった。去り際に一つプレゼントもくれた。ステータス看破の効果を持つ
い~奴だな、あいつ。ぜってー貴族崩れだろうけど。
俺はポキポキっと指を鳴らすとニヤリと笑って歩を進めた。
さぁ、冒険者ギルド。テンプレなら絡んでくるムキムキが居るところ。
犬耳美女にいてほしい。
そして仲間になってほしい。
ああ、こっちの世界に来てから欲しいもんが増えたなぁ。
その時、俺の視界に彼女は入ってしまった。
赤い髪、燃え立つような赤。整っている愛くるしい顔。口を引き締めている様子はスッとした鼻梁と合わさって神聖さを醸し出す。フルフルと振動する赤い犬耳は庇護欲を掻き立て、ゆったりと揺れる尻尾は愛でたくなってくる。可愛く、美しく、神々しく。もう、世界は彼女のためにあるかの様だ!!
(※彼の主観です)
この世界に彩りを与えるアプロディーテとは彼女の事なのだろうか。
ああ、不安げにつく溜め息にまで美しき気配が見える気がしてくる――――――!!!
(※あくまで、彼の主観です)
断言しよう!(※)今ならば世界を亡ぼせる、いや!(断じて)この世界全てを彼女にプレゼント(この世界の総意では)することだってふかの(ありません)うでは――――――って、さっきから駄女神うるせーんだよッ!!
―――――あなたも人の子で
滅びて消え去れ。
―――――もう、ムリです・・・
「貴様、このぼくに何をしたか分かっているのかッ!!」
「い、いえ、この子は―――――」
「黙れ黙れ黙れぇ!ぼくの服に肉ダレをかけるなんて!優しいぼくでも限度があるぞ!」
「す、すいません!貴族様とはつゆ知らず!」
「これはもう駄目ね、貴族じゃなかったらいいって言ってるわよ!」
「最低だね、アンタはさぁ!」
「あ、・・・」
「申し訳、いたッ!」
「反省してないでしょ!ダリル様に不敬を働いたのにね」
「これはダメダメよ。顔に大やけどでも負えばいいのかしら?」
「あの、ダリル様、皆さま・・・」
「なに?黙っててくれない?」
「アンタもどうせめんどくさいことをいうのでしょ?」
よし、死ね。
苛立ちのまま、俺は一歩踏み出した。その時だった。
「君はぼくの味方じゃないのかい!?」
「え、いや、ダリル様は―――――」
「もういいよ、一度痛い目に見ればいいさ!」
ドンと。
思い切り踏み込んだ。
「キャァッ!」
俺の髪が動く感じがする。ああ、多分耳生えた。ズボンの下で何かが蠢いて、学ランで隠れてるけどズボンに開けた穴から何かが出る感じがする。ああ、尻尾も生えた。すぐに戻す。
バキンという音がした。こりゃ石畳踏み抜いちまったかな。
「てめーら、ふざけてんのか?」
怒りが渦を巻き、荒れ狂う。スヴェルナやライゼンバウアーと戦った時にも感じたあの渦巻きが俺の中を暴れてる。
「特にてめーだよ、クソデブ。でっぷりと肥え太った体しやがってなぁにがぼく、だ。可愛い女を突き飛ばすような男は男とは言えねーよなァ?あ゛?」
デブってる男と茶髪の狐目女それに民族衣装っぽい服着た多分売女。
てめーらは敵だ。死ねばいい。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
とっても、暖かい。
不思議な感触の服を背中に感じている。
いつものように街の人たちに注意をするダリル様に注意したら、今日はいつもと違っていた。
ダリル様に
私はフィフェ。犬の獣人。
・・・・・・・・・獣交じりと呼ばれているの。
「特にてめーだよ、クソデブ。でっぷりと肥え太った体しやがってなぁにがぼく、だ。
え?
驚いて私を支えてくれている人を見上げてしまった。
私の目に映ったのは黒髪で黒目で、黒い服を着た、目の鋭いかっこいい人。
年齢は私と同じくらいだと思う。
多分、平民なのだろう。ダリル様の事を知らないみたいだし。
ダリル様は私たちのパーティのリーダーで凉爵家の長男らしい。
お父上はとっても偉くて一言で冒険者ぐらいなら首を刎ねられるって言ってた。
私は冒険者。それしか生きていく方法はなかった。
そんなある日にダリル様に拾ってもらって、
それでも―――――可愛いなんて初めて言われた。
あれ?何で私・・・あ、頭痛い。いいや、別に。
「あ、ありがとうございました、でも大丈夫ですから・・・」
「当たり前だろーが。大丈夫じゃなかったら俺はこのデブをぶちのめしてるぞ」
ニカッと笑う恩人さん。なんか、あったかい笑いだ。
「・・・でも」
行かなきゃ、ダリル様の役に立たないと、私誰からも必要じゃなくなる。
「おいで、フィフェ。少し苛立ってしまったんだ、悪かったな」
ああ、ダリル様。そのお言葉だけで充分です。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
俺の腕の中から可愛い子―――――フィフェが離れていく。ちょっと悲しい。
「ふっ、君にはあとで借りを返さないとね」
「ダリル様は凄いんだから!」
「喧嘩売ったアナタが馬鹿だったんだよ」
「黙れ雑魚共。ブヒブヒ鳴いてんじゃねーよ」
「なッ!」
「うっせーんだよ。デブの何処が凄いのかは知んねーが、どーせ親の七光りを振りかざしてるだけだろ。バーカ」
おーおー、真っ赤じゃねーの。野次馬共は怯えた顔でコッチ見てやがるし。
何やったんだ?コイツら。
「くっ、行くぞ!君は夜に気を付けた方がいいね」
うーわ、フラグたてやがった。そっこーでやられる噛ませ猫フラグ。
俺的にここにイヌは使いたくねーので猫にした。後悔は全く微塵もしていない。
ま、せーぜー頑張れよ、豚。
取り敢えずステータス覗き見しとくか。実験台実験台。・・・へ?
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