「あの鐘を鳴らすのはあなた」(昭和47年 1972) 和田アキ子

 フォローしてくださっている遊流空〈yuRuku〉さんからリクエストをいただきましたので、それに応えたいと思います。

 いつもは、“ゆるくさん”とお呼びしていますので、この表記でいきますね。

 いただいたリクエストをお読みすると、ゆるくさんの中学生時代は寮生活だったそうで、その寮では、毎朝、和田アキ子の曲で起こされていたんだそうです(笑)昔の学校なら(ま、今もかな)、クラシックとか、スーパーマーケットなんかで流れているようなインストゥルメンタルとかが流れそうなものなんですが、朝目覚めの曲が和田アキ子というのは、エキセントリックというか、ある意味、寮監の先生のナイスセンスだったのかもしれません。


 和田アキ子のなんという曲なのか、ゆるくさんから確認を取っていないのですが、「おい!目を覚ませ!」というパンチの利いたメッセージを込めているのではないかと推測して、「古い日記」か「あの鐘を鳴らすのはあなた」だと思いました。「古い日記」だと、最初からエンジン全開になりますが、「あの鐘を…」だと、静かな感じでAメロが始まって、Bメロでエンジンが掛かり、サビでエンジン全開と、それでも、段々、覚醒していけるのではと思い、この曲だ、と決め込んでレビューをします(笑)


 この曲は、1972年に発売された11枚目のシングルです。オリコンでは、当時、最高53位なので、大ヒットではなかったものの、第14回日本レコード大賞では、見事、最優秀歌唱賞を受賞しました。私も、当時、番組を見ていて今でもよく覚えています。受賞の発表の瞬間から泣き崩れて、観客席から沢田研二の手を引っ張ってステージに登壇。歌っている最中も泣いてメイクが取れて黒い涙が頬を濡らしました。

 この年は、日本レコード大賞史上でも激戦の年で、レコード大賞が「喝采」(ちあきなおみ)、最優秀新人賞が「芽ばえ」(麻丘めぐみ)、他に、「瀬戸の花嫁」(小柳ルミ子)、「許されない愛」(沢田研二)、「太陽がくれた季節」(青い三角定規)、「男の子女の子」(郷ひろみ)、「せんせい」(森昌子)等々、大ヒット曲が目白押しの年でした。


 この曲の作詞が阿久悠、作曲が森田公一です。元々、和田アキ子は、大柄な体から低音が効いた声でリズムアンドブルースを歌っていましたが、目立ったヒット曲は「笑って許して」(あ、ゆるくさん、朝目覚めの曲、これじゃないですよね? もしこれだったら笑えないですものね 笑)くらいでした。阿久悠は和田アキ子のデビュー時からシングル盤の歌詞を書いていましたが、作曲の森田公一とのコンビが初めてとなったのがこの曲でした。


 さて、阿久悠の歌詞です。

 何度も登場する「あなた」は、特定の誰かを指しているわけではない、のは、子どもながら当時、なんとなく感じていました。それは、歌詞全体の雰囲気からそう感じたのもあるでしょうし、当時のあの和田アキ子の風貌で(失礼!)「貴方を愛しているの!」という愛のメッセージ性が感じられなかったせいなのかもしれません。

 しかし、(「あなた」って、もしかして、自分もその対象になれるかな)と聴いている人に思わせる見事な歌詞構成と和田アキ子の表現力がそこにありました。


♪あなたに逢えてよかった あなたには希望の匂いがする


♪あなたに逢えてよかった 愛しあう心が戻ってくる


 この一番、二番の歌い出しの歌詞が秀逸です。

 そして、Bメロでは、


♪つまづいて傷ついて泣き叫んでも さわやかな希望の匂いがする


♪やさしさやいたわりや触れ合うことを 信じたい心が戻ってくる


 と、Aメロの歌詞に重ねるように訴え掛けて、聴いている人を落ち着かせて安心させます。

 そして、あのサビです。


♪町はいま今眠りの中 あの鐘を鳴らすのはあなた


「大丈夫だから自信をもって行きなさい!」と背中を押されて送り出されているかのように思えます。


 ゆるくさんの寮の寮監の先生も、きっと、そんな願いを込めて目覚めの曲にしたのではないでしょうか(笑)

 あ、でも、本当に、この曲じゃなかったらごめんなさいね!



♪「あの鐘を鳴らすのはあなた」(昭和47年 1972) 和田アキ子

https://www.youtube.com/watch?v=ohF1v5DErNU(静止画、フルコーラス)



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