伸びる影
太陽が前方上空から地表を照らしている。笹良の影は太陽とは逆の方角に1つと、太陽に向かって伸びているのが1つ。秋月の足元から伸びている影は、1つだけだった。
「一体……なにが……」
震える両手を胸に押しつけて、今にも泣き出してしまいそうな瞳が正面の笹良を見つめる。笹良はなにも答えてあげることが出来ない。いや、この場に誰がたっていようともなにも言えないだろう。
「危ない危ない。どんな技を仕掛けてくるのかと思っていたが、何事だ? いきなり双つ影ではなくなった? つか、そんなことありえるのか?
まぁいい。今の俺にとっちゃあ好都合だ!」
放心状態の秋月に鉄パイプを突きつけ
「とりあえずリタイアしてもらおうか?」
一度引いて鋭く突きだした、鉄パイプを真横から蹴りつけ蹴り落とし、地面もろとも踏みつける。
「――なっ!」
手元から蹴り落とされた鉄パイプを拾おうとする前に、立ちはだかる笹良の姿。ふぅと息を吐いて
「よく見ていればお前の力も弱点あるよな? 今の突き、前方の敵に対しては貫く刃と化しているが、真横からの襲撃にはめっぽう弱くなっている。突く方に特化して使っていたんだろう?」
繰り出された拳が男の腹に埋まり、同時に深くはないが斬りつけてもいた。その一撃で吸い取った分の力は使い果たし、血を吐いて倒れた男のあとに彼もヒザを突く。
「さて、と」
数度体を上下させて深く呼吸を繰り返し、足に気合いを入れてヒザを伸ばして、未だ放心状態の秋月にどう声をかけるか悩む。
そうだ! とポンと手を突いて羽山を捜して辺りを見回すと、ほぼ同時期にもう一つの闘いが終幕を迎える。
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