第20話

コンコンッ。


あたしはギクリとして壁に顔を向けて横になる。

扉の開く音がした。


「わ、若葉ちゃーん、調子はどう?」


あたしはガン無視。


「お腹空いてるだろ? なんか食べるぅ?」


そりゃ腹は減ってるわ! 

パコった後じゃけんのう! 

ぶっといフランクフルト十本食えるくらいペコペコじゃ!

でももっと欲しいものがあるんじゃ! 


しかもなんだぁ? この臭い。

ハゲの三冠王め、にんにく入りラーメンひとりでガッツリ食ったな!


……


あたしが黙っていても、おにぃは立ち去らなかった。

あれ、もしかして……。

あたしのこと、思ってたより気にかけてくれてるの、かな?


「あ、あのな、若葉ちゃん……次の施術はいつにする?」


全身が燃えるように熱くなった。施術? 何、その事務的で義務的な言い方!


「知らない! あっち行って!」


おにぃの顔面にカービィがボッスンとぶつかる。おにぃの表情はカービィの笑顔で見えなかった。でも、何も言わず扉を閉めた。


もー! なんなのよ、馬鹿おにぃ!

もっと、こう、わかってよ!

たとえば、ハグとか…ち、チュー、とか・・・・・・

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