第10話
「パイせーん❤、ここのコード間違ってないすかー?」
みゆきの声に俺は我に返り、パソコンの画面を注視する。
うわっ……まじだ。こんな簡単なミス、勤続三年目の俺が、
ありえねえ。
「……サンキュ。助かったわ」
「ねー、ついでにちょっと休みましょうよー」
ニコリとみゆきが笑う。ここんとこ寝不足と気苦労でいっぱいいっぱいだ。誘われるままに休憩室に向かう。
ところで俺の隣を歩く後輩は三幸と書いて「みゆき」と読む。
アホの若葉は着信履歴でも見たのか、みゆきを俺の彼女と勘違いしているが、体毛が濃くてワキガ持ちで出っ歯の、れっきとした男だ。
まあ、彼女ぐらいいたほうが兄として貫禄が出るかなと、あえて否定はしていないが……。
休憩室にはコーヒーメーカーや茶菓子が置いてある。コーヒーを淹れてこめかみを指でさする。
「パイセンこのごろマジ元気ないっすね。やっぱ薄毛が--」
「違う! 違うから!」
いや待て。こいつに指摘されるほど俺の後頭部は薄いのか? 頼むからこれ以上悩みを増やさないでくれ。
「んん~? だったら妹のわ・か・ばちゃんのことっすか? 十五でしたっけ? いやー、いいなぁ! リアルJKと同居なんて、オスの夢っすよ」
「バーカ。妹は女として見れねえよ」
せめて胸がワンサイズ大きかったらなー。
「またまたあ! そんなこといって、ブラとかパンツなんかをクンクンしてるんでしょ~?」
いや、それは兄としてだな、妹の発達具合や病気をチェックするためであって、おかしな意味合いはない!
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