第8話

えっと、バージンウィルスの感染経路はいまだ不明なんだって。越冬する蝶の燐粉にウィルスが含まれるんじゃないかって説が有力だけど。


症状には三段階があって、


1段階 眼球の赤濁。軽い微熱。全身のだるさ。(今のあたしね)


2段階 全身の穴という穴からピンク色の液体が流れだす。

   

3段階 肉体が甘い臭気を発し、内臓から腐乱する。


「治療薬は今のところ見つかってないんだ。

でもね、死亡者は減っている。どういうことかわかる?」


中野さんはふにゃりといっそう目尻を下げる。

こいつ、こなきじじいにも似てるな……。


「延命方法があるってことか?」


おにぃの言葉に、中野さんは親指を立ててうなずく。


「そう。2段階までの状態で『あること』を患者にすると、それ以上症状が進まないの」


あること?


あたしは続きが聞きたくて身を乗り出す。だけど、中野さんは、「はーい、こっから先はRバージン指定で若葉ちゃんはアウト!」とわけのわからないことをほざきやがった。


「Rバージン?」


「そ。バージンの女性には聞かせられないお・は・な・し💛。お兄さんはバージンではないよね?」


「無論、経験者だ」


ちょっと何? おにぃのそのえらそうな言い方。逆に二十七にもなってチェリーボーイだったら引くんだけど!!

それにあたしにドヤ顔向けるの止めてよ!



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