第77話 成長(3)
いっぱい
いっぱい
色んなことを考えた。
今まで生きてきて
こんなに色んなことを考えたのは生まれて初めてだったかも。
隆ちゃんは年末で忙しくて。
会社で時々顔を合わせるだけで
時々
電話で話したり
メールをしたり。
一昨日から
京都に社長と出張に行っちゃって。
ほんと忙しいよなァって
思う。
あたしは
真尋さんのクリスマスコンサートに初めて企画から参加させてもらって。
初めてのことに
いっぱい失敗もしたけど
なんとか
イヴの初日を今日に迎えることができた。
こんな
すれ違いだけど
あたしの気持ちは
決まってた。
「コレ、おいしーでしょ~~! あたし、ほんっと感動しちゃって!」
「ウン! うまいっ! この生クリームと生地も!」
真尋は夏希が楽屋に持ってきたロールケーキを食べてご機嫌だった。
20cmほどのそのロールケーキを真尋は一人で食べつくしてしまった。
「うまかった~~。 また買ってきて。」
手についた生クリームをペロっと舐めた。
「買うのに30分も並んだんですよぉ? ほんっと・・今日は頑張ってくださいね、」
夏希は真尋に言った。
「加瀬とは食いものの趣味は合うよなァ~。」
真尋は笑った。
最初はびっくりした
この人とも
バカバカしいことでも笑えるようになった。
「あ、加瀬さん。 差し入れありがとう、」
絵梨沙が楽屋に入ってきた。
「いえ。 竜生くんたちにも別に買って来ましたから後で。」
「パンフレットにオリジナルの携帯ストラップをおまけにつけるアイデア、加瀬さんが出してくれたんですってね。 コレ、すっごいかわいくて。」
絵梨沙はそのストラップを手にして言った。
「あ・・や~。 オマケとかついてたら嬉しいじゃないですか。 真尋さんのピアノ好きな人が、おんなじもの持って共有するってゆーか。 そういうの。」
夏希は照れて笑った。
こうして
自分のアイデアが採用されたりして
忙しいけど
毎日、充実してるって感じで。
「じゃあ、悪いけど。 これ明日までにまとめておいて。」
「はい、」
東京に向かう新幹線の中でも
高宮は北都からいろいろ指示を受けた。
これは
一旦、会社に戻って
パソコンに取り込んだりして、纏めないと・・。
今日が
クリスマス・イヴだってこと
うっかりすると忘れそうなほど
忙しかった。
彼女から
『ちゃんと考えたい』
と言われてから
もう2週間が過ぎてしまった。
ちゃんと考えてくれてんのかな?
と疑問に思うこともあるけど。
とにかく
毎日が忙しくて
不安も感じないほどだった。
東京に着いたとき
細かい雨が降ってきた。
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