第58話 愛されて(3)

養えないって・・


そんだけ??



高宮は泣きたくなってきた。



それを察したか、夏希の母は


「ああ、そのあとにね。 『でも。 あたしからはゼッタイに別れるって言わないから。』とか言ってたよ。」


とフォローした。


「え・・」


「隆ちゃんはわかんないけど、あたしはそんなことにならないって。」



別の意味で泣きたくなってきた。


「そう・・ですか。」


胸がいっぱいになる。



「ま、そうだよね。 高宮さんみたいな人とつきあってて、贅沢言うなって、」


母はおかしそうに笑った。


「メイワクかけてるだろうけど。 ホント、ごめんね。」


なんて謝られて。




本当は


おれだけにメイワクをかけてほしいのに。


おれだけに甘えてほしいのに。



高宮は喉まで言葉が出かかった。



「いいえ。 おれは夏希から十分幸せをもらってますから、」



自然に


その言葉が出た。



格好つけてるわけでもなんでもなく。


もう


それしかいいようがなかった。



「ありがとう。 ああ・・あたしが交通事故のこと知ってること、夏希には言わないでね、」


「え?」


「なんかめんどくさいから。 気いつかうのも。」



あの『母』らしい言葉だった。


「ねえ、高宮さん。 魚の干物とか好き?」


唐突に言われた。



「は? ああ・・まあ・・」


「んじゃあ、送るね。 夏希にはやらなくていいからね。 高宮さんが食べてね。 住所、メールで送っておいて。」



明るく


明るく


そう言った。


おれは。


『あの』夏希が好きなんだ。



あの子のことを好きだなあって思ったころは


こんなに深く深く


愛せるなんて


正直思わなかった。



自分でも驚くくらい


彼女のことを知れば知るほど


ぐんぐんと惹かれていって。



まだまだ


コドモな彼女に


めいっぱいいかないように


制御して。




『あのとき』


彼女を傷つけてしまったことがトラウマなのか



まるで


ガラス細工を扱うように


大事にしてきたつもりだった。



おれだって


絶対に夏希に別れるなんて言わない。



いつの日か


『家族』になれるように。



わかってないのは。


わかってる。




誰が夏希のことを愛していようと。


おれが


一番彼女のことを愛してるって


胸を張って言える。





「わ! コラ! あんこ! ここ乗っちゃだめ~~!」


夏希はギブスの腕を抱えながら、やんちゃなあんこを制御するのに四苦八苦していた。


「も~~。 パパに言いつける!」


不自由な手で抱えるようにあんこを抱っこして


自然に


そんな言葉が出た。

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