第57話 愛されて(2)

高宮の話を聞いた萌香は、少しため息をついて



「高宮さんが加瀬さんの看病している間。 あたしも様子を見に行ってみようって彼に言ったの。 でも。行かなくていいって。 そればっかり。 高宮が来てるからって言うんだけど。 様子見るくらい、いいんじゃないかって思って。 でも・・」


少し言いづらそうに言った。


「なに、ソレ、」


志藤が言うと、


「うーん・・いつものように詳しくは話さないんですけど。 あたしなりに解釈すると。 高宮さんにかいがいしく介抱されている加瀬さんをあんまり見たくなかったんじゃないか、とか。」


萌香は言った。


「・・それは??」


高宮も理解に苦しんだ。



「つまり。 『ヤキモチ』かなあって、」


「斯波があ?」


またも志藤は驚いた。


「まあ、別に深い意味はないとは思うんですけど。 ホント、お父さんが娘の恋人を見るような気持ちだと思います。高宮さんのことは。」


「なんですか・・それは・・」


高宮はどっと疲れた。




「ほら。 なんだかんだ言って。 みんな加瀬さんのことが大好きじゃないですか。」


萌香は余裕の笑顔を見せる。


「おれはそんな大好きでもないけど?」


志藤が言うと、萌香は笑ってしまった。


「なんでしょう。 人徳ですかね? 彼女、放っておけない感じもあるし。 あんなに大きいのに何とも言えないかわいさもあるし。 言動も。 きっと友達もすんごいたくさんいると思いますけど、」


「携帯の電話帳。 ゆうに200件は超えてますよ・・」


高宮はポツリと言った。


「ウン。 みんな彼女みたいな子と友達になりたいって思うわよね。 男女を問わず本当に加瀬さんと一緒にいると楽しいし。 」


萌香の言うことが


いちいち的を得ていたので


高宮は何も言えなくなってしまった。


「おれだけじゃないんだなあって、」


寂しそうにポツリと言った。



「え?」



「彼女といて。 幸せに思えるのは、」


「そんなこと。 だって加瀬さんが一番幸せって思えるのは高宮さんと一緒にいるときじゃない?」


萌香はそう言ったが、


「そうでしょうか、」


自信なさげに言った。


「見てればわかるもの。 加瀬さん、本当に高宮さんのことを信頼しているし。 ・・大好きで仕方ないってオーラも、すごく感じる・・」


「え・・」


そんな風に言われて、赤面した。


「あいつ、ほんま周りにメイワクかけて生きてるな、」


志藤のそのセリフもぴったりきて。


高宮は何だか笑ってしまった。



「しかも。 なんか知らんけど、モテてるのが腹立たしいし。」


萌香はその志藤の言葉に笑っちゃ悪い、と思いながらも口に手を充てて笑ってしまった。




はあ・・。


一人の部屋に戻ってきた。


パリから戻って一度荷物を置きに来ただけで、実際久しぶりだった。


ネクタイを緩めてソファにどかっと腰掛ける。


一人がこんなに寂しいなんて。



彼女は


おれほど寂しいって思っているだろうか。



またそんなことを考えてしまった。



なんだよ。


みんな今さら。


おれは


ずうっと前から彼女のかわいさとか


わかってたのに。


彼女の人生初めての『男』になれたのに。


そこまでいきつくのに


どんだけ大変だったか!



そこに電話が鳴った。


「あ、高宮さん? 夏希の具合、どう?」


夏希の母からだったので、ちょっとドキっとした。


「ぐ・・具合って・・」


「ああ、ほらあの専務さんの奥さんに電話もらったの。 交通事故だって?」


「え・・あ。 夏希がお母さんに心配かけたくないから・・黙っててって言うもんで、」


気まずい感じでそう言った。


「ああ。 いいのいいの。 なんも言ってこないうちが大丈夫ってことだと思ってたし。 高宮さんもいるしね、」



そんな風に


言ってもらって。


胸が熱くなる。


「まだ別れてなかったんだって思っちゃった、」


なんて冗談も言われて


「わ、別れるなんて・・。」


「この前も犬飼ったとか言ってるから。 ソレ、別れた時どうすんの?とか言ってやったんだけど。」


と、笑い飛ばされそうになったので、


「か・・彼女は・・なんていってました??」


思わず真剣に食いついてしまった。


「え? いや・・。 笑って『あたしお金ないから養えないかなあ』って。」


「は・・」


一気に脱力した。

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