第52話 嫉妬(3)

一方。


「こんなにもらってきたの?」


美咲はたくさんの果物と野菜を見て目を丸くした。


「かぼちゃが・・効いた。 袋破れそうになって・・」


八神はネクタイを緩めながら言う。


「でも、りんごならすりおろして桃もちょっと舐めれるし。 加瀬さんにお礼言っておいて。 彼女、大丈夫だったの?」


「え? なんっか元気そうだったけど? しかも、高宮がヒモのような生活してたし。」


「ああ。 まあ、いいんじゃないの? つきあってんだから、」


「おれが行ったらさあ。 迷惑そうな顔しやがって。 しまいにゃ、早く帰ったらどうですか? とか失礼なこと言いやがって、」


「そりゃ、慎吾が空気読めなさすぎだよ。 カンペキ、お邪魔じゃん、」


「お邪魔・・」



その言葉の意味をかみしめた。



おれ


なんでこんなにイラついてるんだ?


この悶々とした気持ちは何??



八神は自分の胸に手を充てて考えた。




「・・ごめん。 痛かった?」



高宮は


その行為を終えて、ようやく口を開いた。



「・・ううん、」



ほんとは


ちょっと『初めてのとき』を思い出すくらい


彼が怖かったけど。



高宮は愛しそうに夏希の頭を抱えるように抱きしめた。



隆ちゃん


なんか怒ってるのかな・・



夏希はそれだけは少し感じていた。



『あのとき』は


男のひとの気持ちなんか全然わかっていなかったけど。


今は


自分を慈しむだけの行為じゃないってことも


少しずつ理解できるようになって。


男のひとって


いろいろ複雑なんだなァって


思ったりする。


それも


許せるようになった気がする。



夏希は彼の背中に手を回して、自分からキスをした。





八神は


自宅のフロに浸かりながら


悶々と考えた。



加瀬のことなんか


どーでもいいじゃんか。



もう一人の自分が言う。


バカなくせに。


あんな


頭が良くて、仕事もバリバリできて


しかも


北都グループの社長秘書だぞ。



オヤジだって


ナントカ大臣だし。


すっげえ金持ちで。


そんなボンボンとうまくいくと思ってんのかよ。



もちろん


夏希が高宮とつきあっていることは


以前からわかっているけれど


二人が一緒のところを目の当たりにしてみたら。


どうしようもない胸のざわつきを感じずにはいられなかった。



なんでおれが加瀬のことで


ヤキモチなんか妬かなくちゃなんねーんだっつの!





「おっはよーございまーす!」


夏希が三角巾で腕をつりながら、すこぶる元気にやって来た。


「加瀬、」


南はちょっと驚いた。


「交通事故に遭った人とは思えないくらい、元気だね。」


玉田も微笑んだ。


「ご心配おかけましました。 アタマはだいじょぶだったんで。 でも、利口にもなってないんですけど!」


夏希はお気楽にアハハと笑う。



「あ、加瀬ちゃーん、」


真緒がやって来た。


「おはようございます、」


「も~。 びっくりした。 大丈夫なの?」


「なんとか。 まだ傷だらけなんですけど、」


右手の甲も傷があって包帯だったが。


「ほんっとたいしたことなくてよかった・。 あ、そうだ。 コレ。」


真緒は自分のバッグから小さな袋を取り出す。


「パリのおみやげ。」


「え、あたしに?」


「みんなに買ってきたんだけど。 加瀬ちゃんにだけまだ渡せてなかったから、」


「ありがとうございます~。 開けていいですか?」


「うん、」




「・・あれ・・」


夏希はそれを見て少し驚いた。

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