第50話 嫉妬(1)
いつもより早く帰った斯波に八神は書類を家まで届けた。
「悪い。 明日直行って忘れてたから。 助かった、」
「いえ。」
「八神さん、よかったらお茶でも飲んでいってください、」
萌香に言われたが、
「ううん。 もう帰るから。 じゃあ、」
と、すんなり帰ろうとした。
斯波さんとこ
初めてだなァ・・
ほんっと秘密っぽい人だから。
こうしてみると
ほんと栗栖さんと夫婦なんだな~~って感じ。
普段、あんまり実感ないから。
などと思いながら彼らの部屋を出ると。
何となくその隣の部屋が気になった。
あいつ
どーしてんだろ・・。
わりと感情が直線的な八神はそう思ったらもうインターホンを押していた。
夏希は友達と電話中だった。
「だれか来たよ、」
高宮がジェスチャーをすると、
夏希も『あけて』のジェスチャーを返した。
「え? 開けるの??」
イヤだなァ・・と思いながらも。
「はい・・」
とインターホンに出ると、
「え、」
八神はぎょっとした。
「や・・八神さん??」
高宮はモニターで彼の姿を確認して驚き、施錠を解いてドアを開けた。
「高宮?」
「はあ、」
ドアを開けた彼は女物のジャージの上着をきてたりした。
「ヒモか?」
八神は思わず突っ込んだ。
「はあ?」
すると電話を終えた夏希がやって来た。
「あれっ、八神さん?」
「なんだよ、めちゃくちゃ元気そーじゃん・・。 なんか傷だらけだけど、」
「お見舞いに来てくれたんですか~?」
「お見舞いってわけでも。 今、斯波さんに用があって。 まあ・・どーしてるかなって思って。」
「え~~? 心配してくれたんですかァ? うれしー! まあまあ、上がってくださいな、」
夏希は嬉しそうに八神の腕を引っ張る。
「バ、バカ・・いいって、」
八神は高宮の顔色を伺う。
どう見ても
空気読め!って顔してるし。
「いいから、いいから。」
夏希は強引に彼を部屋に引っ張ってきた。
「この前、実家からね。 じゃがいもとかタマネギとかいっぱい送ってきて。 かぼちゃとりんごも! 美咲さんにどーぞ。 桃ちゃんはまだ食べられないかな~。 いっつもあたし一人じゃ食べきれないほどいっぱい送ってくるんですよ、」
夏希は紙袋に強引に果物や野菜を詰め込んだ。
「や、そんなに・・」
「いいからいいから。 あたしたち、もう飽きたよね?」
夏希は屈託なく高宮に笑いかける。
「え・・あ~~、うん・・」
飽きるほど
ここで食ってるんかい・・
八神は心でつっこんだ。
「なに、一緒に棲んでるの? おまえら、」
八神はリビングの椅子に腰掛けた。
「え~? 何言っちゃってるんですか。 棲んでませんって!」
夏希は笑いながら否定した。
「も・・生活感丸出しじゃん! なに女もんのジャージとか着ちゃって、」
八神に言われて高宮はムッとして、
「借りてるだけです! 今日、ちょっと寒いから・・」
と言い訳をした。
「ほら、あたしでっかいじゃないですかあ。 だから隆ちゃんでも違和感なく着れちゃったりするんですよぉ、」
夏希は笑った。
なんだ?
なんっか・・無意味に腹立つ・・
八神は高宮を睨んだ。
高宮も『早く帰れ!』的な視線を八神に送った。
「あたし、明日から会社行きますから。 身体の痛いのも少し良くなってきたし、」
「無理すんなよ。 満員電車とか大丈夫か?」
八神は普通に心配した。
「おれがいますから、」
高宮はピリピリした雰囲気で言った。
なに?
コイツ・・。
八神は眉間に皺を寄せて彼をまた睨んだ。
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