第48話 休日(2)

南は夏希が母親に連絡をしたのか、心配で思わず電話をしてしまった。



「は? 夏希が???」


母は日常の生活を送っていたようで、非常に驚いていた。


「え・・ご存知ない?」


「こ、交通事故って、」


「や・・左手首にヒビが入ってしまって。 あとはすこぶる元気なんですが、」


南は焦ってしまった。


「ヒビ?」


母は黙ってしまった。


「や、ほんっと! 元気ですから! ご心配をされないように!」


わざと明るく言った。


「・・まあ。 電話をしてこないところを見ると、大丈夫なんでしょう。」


母は落ち着いて言う。


「お母さん、」


「高宮さんもいるし、」



ドキンとした。



「高宮・・いえ・・高宮くんがかいがいしく彼女の面倒をみているので。」


「そうですか。 なら大丈夫でしょ、」


「すみません。 なんか、あたし余計なことを、」


「いいえ。 知らせてくださってありがとうございました。 あたしも仕事休めないし、みなさんにご迷惑を掛けるとおもいますが、よろしくお願いします。」


頭を下げる母の姿が目に見えるようだった。



心配だろうに。


だけど


ほんまに高宮のこと、信じてる。


彼がどんだけ加瀬のことを大事に思ってるかって


わかってる。



南は夏希の母の思いに少し感動した。





「なんだ、おまえか。」


北都は海の見えるレストランでゆかりと食事中だった。


「しゃ、社長・・どこかお悪いのかと、」


高宮は心配で北都の携帯に電話をした。


「別に。 ちょっとのんびりしたくなって。」


「別にって、」


「彼女のほうはどうなんだ?」



その言葉の意味を理解するまで数秒かかった。


「交通事故に遭ったんだろう、」


ドキっとした。


「ええっと・・あ~~、そんな感じなんですけど、」


曖昧な返事をした。


「いくらたいしたことないといっても。 一歩間違えば命に関わっていたんだから。 大事をとるように言っておきなさい。 保険等でもめることがあったら、おれから弁護士を紹介するから、」


そこまで言ってもらい、


「や・・それはなんとかなりそうなのでご心配をおかけして・・」


非常に気まずかった。


「おまえにぴったりだな、」


「え・・」


「ああいう子が。 おまえにはぴったりだ。」


北都はふっと微笑む。



いつだったか


家の庭の池に落ちた竜生の飛行機を取ろうとして、自分も池に落ちてずぶぬれになった彼女を目の当たりにしたことを思い出す。


びっくりしたけれど


自然のまんま服を着て歩いているような夏希を見て、何だかわからないおかしさと何とも言えない癒しを感じたことを覚えている。



きっと



目の前で嬉しそうに食事をするゆかりを見た。



彼女は天才女優と言われて


芝居しかできない子で。


死ぬほどピュアな心の持ち主だった。


天使に見えるんだよな。


荒んだ心の持ち主には。



無意識に彼女に恋をした自分と今の高宮を重ね合わせていたのかもしれない。



「ね、真也さん。 見て! こんなに寒いのに、いっぱい海に人がいるわよ。」


ゆかりは電話を切った北都にそう言った。


「サーファーだろう、」


「足とか冷たそうよね。 あれが温泉だったらあたしもやりたいかも、」


大真面目にそう言う彼女に笑ってしまった。


「温泉ならねえ・・」



結婚して


そうとう不器用だった彼女は家庭と仕事の両立ができなかった。


最終的には家庭を選んでくれて、芸能界からは一切身を引いて


今日まで自分を支えてくれている。



高宮が5つ年下の天真爛漫な彼女に惹かれる気持ちが痛いほど伝わってくる。


周囲はいろいろ言うだろうけど


自分の気持ちを貫いて欲しい。



心からそう思った。

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