第38話 パリの空の下(2)

「どーしよ~~。 八神さーん。 書類の上にポテチばらまいちゃって・・油が・・」


夏希は泣きそうな顔でそれを八神に見せる。


「まった・・。 食いながらやるからだっ! 斯波さんにおっこられるし~、」


「実は書き損じでコレ2枚目なんですよぉ~。 そのあとポテチじゃ怒られる~。」


「自分が悪いんだろ、」


「八神さんがやっちゃったことにしてくれません?」


「はあ?? なんでおれが罪をかぶらなくちゃなんねーんだっ!」


「だってぇ・・」


「なにが、だってぇ・・だ! ふっ、女の子ぶりやがって、」


「女だし!」


二人の言い争いに南は笑って


「も~、気が散るー。 わらかすなって」


と言った。


「え、わらかしてません・・」


夏希は大真面目だった。


「あ~、もう、あんこを迎えに行かなくちゃなのに・・」


夏希は時計を気にした。


「おれも桃を風呂に入れないといけないのに・・」


八神も同じように言った。


「ほんと、『子供』がいると家に帰りたいですよね~~、」


夏希は言った。


「おまえが産んだわけじゃあるまいし、」


とケチをつけられ、


「八神さんだって産んだわけじゃないじゃないですか、」


と逆襲した。


「は? おれはちゃんと『作った』し! おれの子供なの!」


バカな答えをしてしまう。


「も~~、八神は・・」


南は笑いが止まらなかった。




と、言いつつ夏希はあんこ会いたさに帰ってしまった。


「ったく帰るならさっさと帰りゃいいのに!」


八神はペースを乱されてブツブツ言った。


「ま、でも・・元気やし、」


南はポツリと言った。


その意味を八神も汲み取り、


「けっこう気にしてるんじゃないスか? 今回の出張・・『お嬢』と一緒だし。」


と言った。


「真緒ちゃんはあんまウラのあるコやないから。 別になんもないと思うけど。 今回は今までの高宮の周りにいた女とはちょっと違うって加瀬も思ってるんちゃうかな、」



「まあ犬がいてよかったんじゃないですか? 気持ち、紛れるし。 ほんと子供がいると、アホらしいことでケンカしなくなるし。 おれたちも前は風呂の順番とか、勝手に冷蔵庫のプリン食べたとか、ほんっとそんなことで1週間口利かないことあったけど。 桃が生まれてからは、そういうのなくなったし。」


八神はタバコを加えて天井を見上げて言った。


「ほんまくだらないことでケンカしてたんやな・・」


南は笑ってしまった。


「ま・・たぶん加瀬なんか頭悪いから高宮と対等にケンカなんかできないだろうし。 ストレスたまりそうだけど。 あいつなりに消化してるんじゃないですかね・・」


「なんだかんだ言って加瀬のこと心配してるもんね~。 八神は、」


とからかわれ、


「え・・そんなんじゃないですよ。 あのバカさが危うくて見てらんないっつーか。」


と口を尖らせた。


「でも。 高宮、ほんまに大人やもん。 きっと加瀬と本気でケンカなんかしないよ、」


南は笑った。





明日。


メシでもおごってやろーかな・・。


八神は夏希の気持ちを思った。




ん~~~



『あ・・隆ちゃんってば・・ダメだってば・・』



ちょっとハスキーなその声を耳元で聞くと


ほんっとたまらない。


どんどん興奮してきてしまう。



彼女を夢中で抱いた。



も・・ほんっと


気持ち・・イイ・・・。




のところで


目が覚めた。



ガバっと起きて反射的に時計を見る。



「は・・8時!」



びっくりして高宮は飛び起きた。



そうだ


ここはパリ


まだ彼女と離れて2日しか経っていないのに


思いっきり


ヤってる夢を見るとは。



我ながら情けなかった。



あーあ


夢でもいいから


続き


シたかったな



そして、またハッとする。




こんな・・


呆けている場合ではないのだ。



時間が


ない!!

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