第18話 疑惑(3)
「はあ? 女??」
高宮は思わず声を上げてしまった。
「もう加瀬ってば泣いちゃってさ~~。 手がつけられなくて。 仕事も手につかなくて斯波ちゃんも困っちゃって。」
まだボーっとする頭でその事実を整理し、
「それは・・真緒さんですよ・・」
と言った。
「あたしもそう思ったけど! 先に言ってやりゃええやん。 なんかウラあるんかなあって思ってあたし言えなかったよ、」
「ウラって! そんなもんあるわけないじゃないですか!」
「だって疚しいことなかったらさあ、先に言うじゃん。 真緒ちゃんに送ってきてもらったって。」
それは・・
言葉が返せなかった。
正直。
彼女以外の女の子を部屋に上げる行為が
あまりよろしくないことはわかっていて。
だけど
昨日はあまりに具合が悪かったし
彼女の話をもう少し聞きたいな、と思ってしまったのは事実だった。
「もうさあ、自分が携帯を持ち歩かなかったこととか、途中であんたに連絡を取らなかったこととか。 加瀬、すんごい自分を責めちゃって。 挙句の果てに他の女に看病されたとか、もう悔しくて悔しくてどーしようもないみたいよ。」
ど
どうしよう・・
そんなことになっているとは露知らず。
彼女の反応が怖い気もしたが
高宮はその後夏希に電話を入れた。
「・・今日、帰り寄ってくれる?」
「え、」
「話、あるから・・」
「話・・?」
夏希はもう心臓の鼓動がものすごくはやくなっていくのがわかった。
その緊張感が高宮にも伝わり、
「あ、別に。 そんな改まったもんでもないんだけど・・。」
と、わざと明るく言った。
「・・うん・・」
夏希は足取りも重く、帰りに高宮のマンションに寄った。
彼は起きてキッチンで洗い物をしていた。
「もう、いいの?」
「ああ、うん。 何とか。 熱も下がったしね。」
「食中毒になっちゃったの?」
心配そうに言った。
「食中毒ってもんでもないけどね。 すごい量のカキ食っちゃったから。 体がびっくりしちゃったみたい。 おれカキだめだったんだなァって。」
高宮は明るく笑った。
「・・そーだったんだ・・」
夏希はまだ落ち込んでいた。
「あのね。 一昨日。 社長の家で食事してて遅くなっちゃったから。 社長の奥さんから泊まっていきなさいって言われて。 泊まったんだ。」
高宮は手を拭きながら夏希の座るテーブルの前に座った。
「そんで夜中に社長の家で具合が悪くなっちゃって。 病院に担ぎ込まれて。 何とか半日くらいで帰れたんだけど。 真緒さんが送ってくれて、」
夏希はハッとして顔を上げた。
「真緒さんが?」
「うん。 車で。 それで色々買い物してきてくれたり。 ちょこっとここでお茶飲んでいったから。」
高宮はだんだん小さな声になってしまった。
「なにそのややこしいような、どうでもいい話。」
志藤は呆れたように言ってタバコをふかした。
「どーでもよくないよ~。 なんか加瀬悩んじゃってさあ、」
南は言った。
帰りに
みんなで食事に来ていた。
「別に。 真緒ちゃんなら真緒ちゃんでええやんか。」
志藤は言った。
「そうなんやけど。 はじめっから意識しないで普通に言えばええねん。 でも、なんか高宮、加瀬に黙ってるからさあ・・」
「うしろめたいからじゃねーの。」
斯波はいつものように一人ウーロン茶を飲みながら言った。
「別になんもないやろ~。 高宮、ほんまにめっちゃカキにあたっちゃって大変なことになってたし。 でも。 確かに加瀬にうしろめたくて黙ってたって感じかな~って。」
「なんもなけりゃ、ええやん。 別に。」
志藤はまたもアホらしくなりながら言った。
「でも。 ・・彼女以外の女の人を家に上げるのはどうかなあって思うけど、」
玉田が言った。
「確かにな~~。 もしあたしでも・・あんまりいい気持ちはせえへんし。 」
「え~、それってアカンの?」
志藤の言葉に
「ダメでしょう、」
斯波と玉田は同時に言った。
「えっ、なに・・二人で・・」
志藤は少しおののいた。
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