第16話 疑惑(1)

ん・・?


高宮は目を覚ました。


するとベッドにうつぶせるように夏希が寝込んでいるのに気づいた。


額には彼女が載せてくれたであろう冷たいタオルがあった。


ついててくれたんだ・・。



ふっと微笑んで彼女の頭を撫でた。


しかし時計を見るともう8時を回っている。



あれっ・・


彼女、今日出勤だとか言ってたよな。



それを思い出し、


「夏希、夏希、」


と彼女を揺り動かす。



「・・あ・・?」


ボサボサの頭で顔を上げた。


「今日、出勤だろ、」


と言われて、数秒かかったがハッとした。


「あっ!!!」


時計を見て慌てて起き上がった。


「どっ・・どーしよっ!」


「早く、仕度をして、」


高宮もゆっくりと起き上がった。


「わー! どーしよ。 服も着替えに帰らなくちゃ!!」


いきなりうろたえる彼女に


「落ち着いて。 とりあえず早く帰って・・」


と言い聞かせた。


「う・・うん。 じゃ、」


と行こうとして夏希は夕べのことを思い出してしまった。



口紅のついた缶コーヒー・・



寝室の出口でふっと足を止める。



「どしたの?」


高宮が言うと、


「りゅ・・隆ちゃん・・」


神妙に振り返った。



「え?」


しばらく彼の顔をみつめたが


とっても訊けなかった。



「ううん・・。 なんでもない。 いってきます。」


と、そっと出て行った。



何とか9時までには出社できた。


「お・・おはようございます、」


斯波に挨拶をすると、


「・・おまえ、昨日ドコ行ってたの?」


いきなり訊かれた。


「・・友達んトコですけど・・」


「南がおまえに連絡取れないって言うからさあ・・」


「携帯・・引き出しの中に忘れて行っちゃって、」


しょぼんとして言う。


「で、高宮はだいじょぶだったの?」


書類に目を通しながら言うと、


「・・なんか・・具合悪そうで・・」


バツが悪そうに答えた。


「あれも当たるとすげえって言うからなァ、」


「・・は?」


意味がわからずに聞き返す。


「カキ、」


斯波は夏希を見た。


「カキ? って・・貝殻のついた・・カキ?」


不思議そうに言う彼女に


「え? おまえ訊いてねーの? 高宮、カキにあたっちゃって大変だったみたいだぞ、」


呆れてそう言った。



「はあ???」


初耳だった。



もう頭の中が混乱し。


寝込んでいたのはカキにあたったせいだということはなんとか理解できた。


そして


あの


『女性の影』は


いったい???



あたしは


いったい


何をしているんだろう。



隆ちゃんが苦しんでいる時に


何も知らないで


友達の家でしゃべりまくって。



そして


その間に


『あたしじゃない女の人』



彼の部屋に来た。

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