第14話 カノジョの気持ち(2)
「・・浮気とかされたの?」
高宮は思わず彼女の背中にそう言ってしまった。
「え? 浮気? ちがうよ~。 ほんと真面目な人だったし。 ウン、いい人だったし。」
真緒は笑い飛ばした。
「じゃあ・・なんで。」
「あたし。 パートナーにとって自分が100%じゃないとイヤなの。」
「え?」
「もう全部あたしだけじゃなくちゃ・・イヤなの。 昔っからそれでよく男に逃げられて~。 重いって言われて。 だから、結婚しようって決めた時は。 あたしも変わらなくちゃって。 そんなことばっかり言ってないで相手を信頼してがんばろうって思ったの。 だけどね~。 ほんっと外交官って忙しいんだよ。 週に2日か3日しか帰ってこないし。 異国だったしさあ。 寂しくて。 だから。 子供が欲しくって。」
真緒は高宮の前に座った。
「子供・・」
「うん。 子供がいればさあ。 小さいことでうじうじ悩んだりしないし。生きがいもできるしって。 だから子供作ろうって言ったんだけど。 彼、子供はいらないって言うから・・」
頬づえをついて寂しそうに言った。
「どうして、」
「彼、けっこう神経質で。 部屋もすごくキレイにしておかなくちゃダメな人なの。 だからあたしも掃除だけは一生懸命やって。 ゴハンおいしくなくても文句言わないんだけどね。 だから・・子供がいる生活が考えられないって言うの、」
自分で買ってきた缶コーヒーを飲み始めた。
「もう・・寂しさが止められなくなっちゃって。 限界かなあって。 だけど家族にこんなん言ったら心配かけるしね。 余計なことは言いたくないし、あの人のことを嫌いになったわけじゃないし。 だけど・・もうあたしはここにはいられないって思うようになっちゃって。」
寂しかった
その一言で
彼女の心の中が全てわかってしまったような気がした。
「だから。 あたしはきっと高宮さんの彼女みたく自由にできないなーって。 自分も相手のこと100%で毎日過ごしたいタチだから。」
真緒はそれを振り払うようにニッコリと笑った。
高宮もつられて笑って、
「・・自由すぎるんだけどな、」
と頭をかいた。
なんとなく
育ってきた環境が似ているせいか
彼女の言うことが
いちいち身にしみて
わかりすぎてしまう。
きっと
いっぱい甘えたくて
愛されたくて
生きてきたんだろうなあ。
この人は。
「ま。 おれも・・けっこうそうかも。」
高宮もふっと笑った。
「え?」
「おれのことが1番じゃないと。 すっごいヤキモチ妬くタイプかなあ・・」
「へえ。 わりと独占欲強いんだあ。 意外。 クールそうなのに。 彼女、年下?」
「・・5つ下。」
「じゃあかわいくってしょうがないね。」
「かわいいっていうか。 コドモだなあって。 わかってんだけどね。 おればっかり想ってるみたいで。 彼女は楽しいこといっぱいあって。 おればっかじゃないし。 逃げていきそうな犬を一生懸命つないでる感じかなあ。」
「えー、ますます意外! おれについて来いって感じなのに~。」
真緒は身を乗り出した。
「そうでもないっ・。 おれがやっと彼女についてってる感じだよ、」
高宮は本音を言って苦笑いをした。
「ますます見たい~! 北都グループの泣く子も黙る社長秘書をふりまわす彼女!」
真緒は面白がった。
高宮は夏希のことを一気に思い出して、真っ赤になって
「や、・・そんっなでもないから・・」
一生懸命否定した。
夏希は暢気に夜9時ごろ高宮のマンションに戻ってきた。
「ごめんね~。 疲れちゃったかな~。」
バッグの中のあんこに声をかける。
そして、元気よく
「隆ちゃん、ただいま~~!」
と入ってきた。
しかし
シーンとしている。
「あれ??」
電気はついてるのに・・。
夏希はあんこをバッグから出してやって抱っこをしながら、寝室に行った。
すると高宮が布団に包まって眠っている。
この時間に彼が寝ているなんてありえなかった。
「・・隆ちゃん?」
そっと声をかけた。
「・・ん?」
のそっと目を覚ました。
「え・・どーしたの? 具合、悪いの?」
慌ててベッドの脇にしゃがんだ。
「・・なつき?」
目が充血して真っ赤だった。
「え~~! なんで? なんで? なんでこんなんなっちゃったの!?」
少し熱があったようで
慌てる彼女にイチから説明する気になれなかったので
「・・ちょっと・・」
と、言ってまた布団にもぐりこんでしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます