第13話 カノジョの気持ち(1)

なんとか


状態は治まったので


高宮は帰宅できることになった。


真緒は一度戻って車を取りに行ってくれた。



「でも1~2日は安静にしていなさいって。 お父さんにも言っておくからお休みさせてもらったら?」


真緒は運転しながら言った。


「・・つってもな~~。 ほんっと忙しいし。 ああ、情けない。 カキごときに当たるとは・・」


高宮は何だか悔しくてため息をついた。


まだふらつく彼が心配で真緒は部屋までついてきてくれた。




って!!



高宮はぎょっとした。


おそらく夏希が夕べ来たときにやらかしたんだろうが。



取り込んだ洗濯物は寝室に置きっぱなしで、食べかけのポテチの袋がそのまんまで。


マンガや雑誌もそこらへんにとっちらかっている。



「あんま掃除とかしない人?」


真緒に呆れられて、


思わず


「お、おれじゃねえ!」


と言ってしまった。


「は?」


真緒はえっ、という顔をしたあと、ふいっと見ると子犬のゲージがからっぽなことに気づく。



「あれ?ワンコは? まだ預けたまま?」


「い・・いや、それは。」



普通に説明すればいいのだが、


あまりの彼女のだらしなさに恥ずかしくて言えなかった。




口ごもる彼に


「・・あ・・彼女?」


真緒は先回りして言った。


「えっ!!」


その焦り具合が非常に図星っぽく、真緒は笑ってしまった。


「あ、そっか。 一緒に棲んでるの?」


「ち、ちがっ・・」



ったく!


自分の食ったもんくらい


ちゃんとしていけばいいのに!!



彼女が恨めしかった。



とりあえず寝室に入って着替えていると、いきなり


「ねえ! 買い物行って来てあげよっか、」


と真緒が入ってきた。


上半身裸だったので、


「わーっ!」


慌ててシャツで身体を隠した。


その慌てようが真緒には理解できずきょとんとしていた。


「・・ノックくらいしろって・・」


もう、フラフラで力も入らない。


「あ、ゴメン。 ほら、あたし兄貴いるからさあ。 男の人の裸とか結構平気。 真尋なんか全裸でいたりするからさあ、」


真緒はアハハと笑った。



あんたはいいけどさ・・。


高宮はどっと疲れた。




真緒は買い物に行って、消化に良さそうなものや飲み物を買ってきてくれた。


「もう、いいから。 ひとりで寝てるから、」


高宮は小さな声で言った。


「ねえ、カノジョなにやってんの~? 電話すれば?」


と言われて、


「・・ぜんっぜん・・出ないし。」


思わずボヤいた。


「え、出ないの?」


「・・普段からあんまりマメにメールとか電話とかしてこないし。 だから電源落ちてても気づかなかったり。」


買って来てもらったイオン飲料を少しだけ飲んだ。


「へええ。 女の子なのに? めずらしいねえ。 あたしなんかカレシとかできたら1日にすんごい電話もメールもする。 それもウザいとか言われるんだけどね。」


真緒は笑った。


「だって! カレシが今日1日なにしてたか、とか。 ゼッタイに知りたいし。」



やっぱ


普通の女の子はそうなんだろうか。



高宮はぼんやりと夏希を思い出していた。


「だから。 よく5年ももったなあって。」


真緒は冷蔵庫にペットボトルの飲み物を入れながらポツリと言った。


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