第11話 第一の事件(2)
「高宮さん、飲まないの~? 今日も?」
真緒は彼のグラスにビールを注ごうとして、やんわりと断られて不満そうにそう言った。
「すみませんが。 水かお茶で、」
高宮は言った。
「ほんとにダメなんだね~。」
真緒は彼にウーロン茶を注いだ。
『あれ以来』
高宮は本当に1滴も酒を飲んでいないようだった。
南はそんな彼を見ると
夏希に対する
本当に真剣な気持ちがヒシヒシと伝わって。
なんだか
感動すら覚えてしまう。
「でも、美味しいです。 すっごく、」
高宮はカキを食べながら言った。
「ほんま。 殻つきやから剥くのたいへんやったけど。 やったかいあったね。」
南も笑った。
「あたしもカキフライ、油はねと戦って頑張ったんだよ~。」
真緒が言う。
「ああ、やっぱりね。 これ真緒が作ったんだ。 中、ぐちゃぐちゃ。」
ゆかりにそう言われて、
「ちょっと! あたしが料理がチョーへたくそなのもお母さんが全然料理できなかったからじゃない! 遺伝だよ、遺伝!」
「そんなもん遺伝なんかするわけないでしょ、」
フンといった調子で言われて、
「ほんっと家事全然ダメな人だもんね~。 お母さんは。 お父さんもよく我慢するよ、」
娘にそう言われても北都はふふっと笑うだけで何も言わなかった。
夏希にも
食べさせたかったな。
いつも
美味しい食事を外で採るたびに
彼女がここにいればなあ
と思うようになった。
彼女の笑顔が見たくて。
いっぱいいろんなこと
してあげたくて。
その後もおしゃべりな女性陣と会話が弾み、気がつけばもう11時を回っていた。
そのとき、高宮はメールが着信した音に気づいた。
『待ってたけど、遅くなりそうなので『あんこ』をつれてかえります。』
夏希からだった。
悪いことしちゃったなァ。
ちょっと反省していると、
「ねえ、もう遅いから。 高宮さん泊まっていきなさいよ。 明日も朝からウチの人と出かけるんでしょう?」
ゆかりに言われた。
「え・・い、いえ、そんな・・」
「そうそう。 部屋たくさんあるしさあ。 ほら、あと7時間もすれば起きなくちゃ、でしょ?」
真緒も笑った。
「いや、しかし・・」
北都の顔色を伺った。
「・・構わない。 よかったら泊まっていきなさい。」
いつものようにクールにそう言って、北都は席を立った。
「だって。 よかったね!」
真緒は笑った。
「・・はあ、」
夏希には社長宅に泊まることをメールして、とりあえずゲストルームに泊めてもらうことにした。
ところが。
明け方ごろになり。
高宮は猛烈な腹痛と吐き気で目が覚めた。
・・なんだ???
ハラ・・痛てえ・・。
何とか起きてトイレに行ったものの、あまりに下痢がひどくてトイレから出られなくなってしまった。
なんか・・
気がつけば。
手足にじんましんのようなものが一気に出ていた。
なんだ?
なんだァ??
トイレから出たところの洗面所でぐったりしていると、
「・・高宮さん??」
真緒がトイレに起きてきてそれに気づいた。
「ど、どうしたの!?」
尋常ではなさそうな彼の姿に慌てた。
「・・ハラ・・いてー・・。 気持ちわる・・」
やっとそれだけ伝えることができた。
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