第8話 仔犬(2)

か・・・


カワイイな。



思わずじーんとしてしまった。



そして、


夏希の喜ぶ顔が浮かんだ。



「でも・・こんなちっこいの。 昼間留守するのに飼えるかな、」


高宮は仔犬を抱っこして心配そうに言った。


「そうですねえ。 少し大きくなれば心配ないけど。 もし昼間見てくれる人いなかったら、ウチでお預かりしてもいいですよ。 ペットホテルもやってるので、」


店員が言ってくれた。



もう


高宮はその仔犬がかわいくてかわいくて


とても手放せなくなってしまった。


「なんかすんごい慣れてる。 もう運命だから決めちゃえば?」


真緒は笑った。


「そうだなあ。 で、おいくらですか?」


と、訊くと


「30万円です。」


とあっさり言われた。



「30万!!」



さすがに驚いた。


犬なんか10万くらいあれば買えると思っていたから。



30万かよ。


たけえなあ・・。



一瞬迷ったが。



この前


株でけっこう儲かったし。


きっと夏希も喜ぶだろうしな~。


買っちゃおうかなあ。



ものすごくものすごく迷ったが。


「買います、」


もう返事をしてしまった。




あっという間に買うことになり。


その小さいぬいぐるみのようなワンコはキャリーバッグに入れられて、ゲージからエサからミルクから全部買ってしまってすごい荷物だった。


「大丈夫? 手伝いましょうか?」


真緒がタクシーの中で言うと、


「いや。 なんとか。 なんか勢いで買っちゃったな~~。」


くんくんと中で鳴いている子犬に


「もちょっとだからな、」


と優しく話しかけた。




真緒を自宅前で下ろして、そのまま夏希のマンションに向かった。


「な・・どしたの、隆ちゃんてば・・」


夏希は大荷物を持って現れた彼に驚いた。


「ちょっと開けてて! ドア!」


「う、うん・・」


なんとか荷物を彼女の部屋に運び込む。


「あれ?接待じゃなかったっけ?」


夏希は思い出したように言った。



しかし高宮はそれを無視して、


「ほら、」


とキャリーバッグを彼女に手渡した。



「え?」


「この中!」


そっと開けてみると。



「えっ!!!」


夏希は思わず二度見してしまうほど驚いた。



そこにはふるふると震えている、くるくるの毛のかたまりが。



「・・わ・・ワンコだ。」


そーっと手に取った。


「か・・かんわい~~~!!! ちっちゃーい!! ぬいぐるみみたい~!!」


もうそのかわいさで我を失うほどだった。



ひとしきり感嘆詞を発した後、


「え? コレ・・買ったの?」


と高宮を見た。


「うん・・なんかあの話してたら欲しくなっちゃって。 夏希も喜ぶかなって。」


「え~~~。 ウソみたい~~。 かわいいよぅ~~。」


夏希は涙目になって仔犬にほお擦りをした。



「一緒に、飼お、」


高宮はニッコリ笑って彼女に言った。



「・・うん!!」


夏希は笑顔で頷いた。

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