第11話 ロマンと風情
「駅徒歩十分、百二十㎡」
不動産サイトを見ながら妻が条件を並べる。
「
えーと、このくらい?
「はずれ」
妻が読みあげた値段にぼくは仰天する。
「土地って高いね」
偉大な牧師様と比べるのもおこがましいけど、ぼくらにも夢がある。いつか家を建てるという。いまの部屋も気に入っているけど、それでもいつの日か、なんて。
「キッチンにはパントリーがほしい」
妻はいつもの希望を口にする。子どもの頃に読んだ海外小説に出てくる食糧庫にずっと憧れているらしい。大きなチーズやベーコン、果実酒なんかがつまった……冷蔵庫じゃだめなのかい。
「ロマンがない」
さようで。ぼくの希望はシアタールームだ。高品質のプロジェクタとスピーカーを備えた――
「パソコンでいいじゃん」
それこそロマンがない。
ああだこうだと夢を語ったあとで、チータラと缶ビール片手にテレビで映画の再放送を観た。ロマンはないけど風情はある、いつもの週末にとりあえず乾杯。
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