第10話 それゆけミチコさん

「あらミチコさん、こんなところにホコリが」


 誰だ、ミチコさんて。


 ぼくと妻とでクラシカルな寸劇中……ではなく季節はずれの大掃除中である。


「見えないところも念入りに」


 妻の気合の入れようにも理由わけがある。ぼくの母の訪問を明日に控え、おもてなしの準備に余念がないのだ。


「お義母かあさん、緑茶派? 紅茶派?」


 さあ。ぼくらがいつも飲んでるコーヒーでいいんじゃない。


「あれインスタントだもん」


 ぼくの実家もインスタントだけど。


「そういう問題じゃないの」


 副音声で「これだから最近の……」と聞こえたのは、ぼくの気のせいではないだろう。


「次はお風呂場をお願いね、サトコさん」


 ミチコです、お義母さま。


 そして迎えた当日、母が持参したシュークリームとミチコが買いに走った高級インスタントコーヒーの相性はばっちりで、母も妻もご満悦だった。


 それにしても、お風呂までピカピカにしなくてもよかったんじゃ……いえ、なんでもありませんわ、お義母さま。

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