第7話 爺やと一緒

「さて姫、何をして遊びましょうや」


 姫こと一歳の姪っ子に、妻が重々しく話しかけている。妻の実家でお義姉ねえさんに託され、しばし赤子の遊び相手をつとめることになったぼくらである。


「こちらなどいかがで……おや、お気に召しませんか」


 妻がさしだしたぬいぐるみを、即座にポイする姫。


「あっ、なりませぬぞ、姫」


 バッグを漁りはじめた姫を止めようとするも、ギャン泣きされかけてあきらめる妻。


「ほほう、さすが姫はお目が高い」


 妻のハンカチを口に入れてあむあむしたのち、姫はよだれまみれのそれをぼくにつきだす。


「姫よりそちへ褒美の品じゃ」


 ははっ、ありがたき幸せ。かわりにこたつの上のミカンを献上すると、姫はむっちりした手でミカンをなでまわしはじめた。


「これは……よきものぞ」


 アテレコうまいね。


 姫で遊ぶぼくたちに、あんたたちいつもそんなことやってるの、とお義姉さんはあきれ顔だ。ええまあ、だいたいいつもこんな感じです、お義姉さん。


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