第6話 新婚ストリップ

「温泉に行きたい」


 旅番組を観ていた妻がつぶやいた。


 温泉って素敵な響きだ。聞くだけで心が温かく洗われるような。


「新婚旅行で行ったとこ、また行きたい」


 お金も時間もないぼくらのハネムーンは、ひなびた温泉街だった。実際は鄙びたどころかさびれたシャッター街で、古式ゆかしきストリップ劇場なんてものに遭遇してしまったのだけど。


「あそこも今度は絶対入るの」


 いや、入るのは温泉だけにしとこうか。あのときはやたらとはしゃいで、ピンクな看板の前で記念撮影までしちゃったぼくらだけど、冷静に考えると新婚旅行のベストショットがストリップ劇場って、ちょっと、どうなんだろ。


「じゃあハワイ行きたい」


 それがいいね。たくさんお金をためて、長い休みをとって。


「その頃にはよぼよぼだよ」


 それもいいんじゃないですか。アイス片手にビーチウォークを散歩しよう。いかがわしい看板を見つけたら、また一緒に写真を撮ろう。よぼよぼ二人、うんといい笑顔で。



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