第40話 俺って不審者?・・・
溜息を吐くだけで何も言わなくなった拓也に神様は問いかける。
『どうした? 儂が武水別神社の神に口添えをしなくてもよいのか?』
「いえ!! 是非、なんとしても、是が非でも、この世がどうなろうともお願いします!」
『お前、この世より神に儂が頼む方が大事なのか?』
「はい!!」
『・・・・。』
「あ、でも、俺がそのために不幸になったり死ぬのはいやです。」
『だったら、この世も大事なのではないか?』
「じゃあ、そういう事で。」
『何がそういうことでじゃ?』
「え? ダメなの?」
『ダメとは言っておらん。』
「じゃあ、いいんですよね?」
『うむ・・まあ、・・そうじゃな。』
「では、よろしくお願いします!」
そう言って拓也はその場で二礼二拍三拝をした。
そして姿勢を元に戻したときだ。
後ろから子供の声が聞こえてきた。
「ねえねえ、お母さん、あの人なにしているの?」
「しっ! 見ちゃだめ。いい、ああいう人を見たらお巡りさんのところに逃げるのよ。」
「どうして?」
「怖い人だからよ?」
「うん、わかった、じゃあ交番に行こう、お母さん。」
「この近くの交番はわかる?」
「ええっとねぇ、この近くには無いの。」
「そうよね、そういうときは周りの大人に大声で助けを求めるのよ。」
「うん!」
拓也は恐る恐る後ろをそっと振り向く。
「あ、こっちを向いた!」
「しっ! 声を出しちゃだめ!」
拓也は顔を元にもどし、なるべく平静を装い歩き始めた。
「た、タクシーは!
な、無いよね・・。
タクシーがあれば乗ってこの場を簡単に立ち去れるのにさ。
だけど、駅前なのにタクシーがなんでいないんだよ!
ねぇ、神様、聞いている?
・・・あ、あれ、神様?」
神様の応答がない。
どうやらここから立ち去ったようだ。
拓也の頭の中で鐘が鳴り響いた。
ゴ~ン!
諸行無常の鐘である。
拓也は歩きながら、これからどうしようと思った。
駅にいれば会社の日とが決めた時間に迎えに来てくれると言っていた。
だが、あの親子に不審者扱いされており、駅に戻る勇気はない。
戻って交番のお世話になるなどまっぴらだ。
それも不審者容疑でなど。
いや、待てよ・・
もしかしたら交番ではなく救急車のお世話かも?
いやいやいや、それの方がヤバいっしょ・・。
いずれにせよ、そんな事になったら、だ・・。
伸也や課長から何ていわれるか想像しただけで頭が痛くなる。
よし、時間もあるし歩いて行こう。
歩いていけない距離ではないしね。
そう思い拓也はスマフォを取り出し地図アプリを開く。
そして目的地を入力し・・。
「げっ! 俺、反対方向に歩いてるじゃん!」
そう思い方向転換をした。
駅の方に戻ることになるが、まぁ駅に入るわけじゃないしね。
それにもう、あの親子はいないだろう。
そう思い歩いていると駅のロータリーが左に見えた。
そして、あの親子がまだ駅舎に入らず入り口にいたのだ。
「あ、お母さん、戻ってきた!」
「えっ! あ! は、早く駅に入って!」
「うん!」
そう言って母子は慌てて駅舎の中に消えた。
「俺って・・・不審者?」
そう拓也は呟いた。
そしてユックリと歩いていると不味い気がした。
拓也は走って逃げているように見えないよう、早足で駅を後にしたのだった。
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拓也は特に警察に捕まることもなく、また救急車に回収されることもなく無事に出張先に辿り着くことができた。
業務は思ったよりスムーズに進み、拓也は今日の仕事から解放された。
明日10時に来る約束をして。
そして今、テクノさかき駅にいる。
「さてと・・武水別神社は、遠いんだよね。
痛い出費だよね、なんで交通費を自腹でしなけりゃならないんだろう。
神様ってさ、お賽銭で儲けているんだから交通費くらい出してくれてもいいだろうにさ。」
『神はお金など不浄のものなど持たん』
突然、神様の声が頭に響く。
「げっ! 神様聞いてたの?」
『聞いていたが、それが何かしたか?』
「いや、でもさ、なんか俺、見張られているのかな、と?」
『神はそれほど暇ではない。』
「じゃあ、なんでこういう良いタイミングで聞いてんのさ?」
『神じゃからだ。』
「はぁ~・・、そうですか、神様だからですか・・。」
『何をいやそうに言うておる?』
「だってさ、なんか神様が疫病神に見えるんだけど?」
『ふむ、疫病神か。』
「え? 否定しないの?」
『疫病神も神である。あながち間違いではない。』
「いやいやいや、そういう意味ではなく・・。」
『この際じゃ、よく聞くがよい。』
「え?! 何を。」
『お前は神というものを理解しておらん。』
「ええっと・・はい、まあそうですね。」
『疫病神は人が想像し、その思念で生まれた神ぞ。』
「え? そうなの?」
『自分達で神を創世したのに、その神になんぞ悪い印象でもあるのか?』
「う~ん・・、だってさ貧乏になどなりたくないでしょ?」
『何を言っておるのだ?』
「へ?」
拓也は率直な意見を言っただけなのだが、
拓也は何故わかってくれないのか分からず、首を傾げた。
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