第32話 巫女・美智子 拓也に神を説く その2
猿田彦大御神を見る限り、神様が怒るということが想像できない。
長田神社の稲荷大明神も怒ったというが、そういう印象がないのだ。
だから神様を怒らせないようにはしたいとも思う。
それに神様を怒らせたどうなるのか知りたいと思う。
知っておかないと、またウッカリと神様を怒らせそうだ。
だから美智子から神の怒りをかった
ただ、神の怒りを買ったせいで起こった自然災害については聞きたくはない。
だって怖いじゃん。
夜トイレにいけなくなったら困る。
意を決して拓也は美智子に聞いた。
「男巫が神様を怒らせたら、どうなるか聞かせてくれる?」
「そうですね、確かに知っておいた方がいいですね。」
そういうと美智子は、すこし眉間に皺を寄せて考え始めた。
どう話すか迷っているようだ。
「この話しは又聞きの、そのまた又聞きです。」
「え? ややこしい・・ね。」
「それほど神を怒らせるケースは少ないのです。」
「・・男巫が少ないからかな?」
「いいえ、そういう意味ではないですよ。」
「神様自体が怒ることが少ない、と言うこと?」
「それもありますけど・・。」
「?」
「私達神社関係者は神を崇拝し畏れているんですよ?」
「あ、そういうこと・・。」
なるほどと、拓也は思った。
美智子さんにしろ弥生さんにしろ、心から神を崇拝している。
巫女とはこういう人が成るんだ、と、納得できるほどに。
そのような人達が、神様を怒らせるわけがない。
普通なら有り得ない。
有り得ないことが起ったのだ。
神様を心から崇拝する人達・・・か。
そう思ったとき、ふと疑問を感じた。
俺は神社関係者じゃないよね?
なのに、なぜあの神様は俺を男巫に拝命したんだ?
指名された時に疑問はあったが、深く考えなかった。
バカか、俺は?
まあ、とりあえずそのことは置いておこう・・。
余計な考えが過ぎり、いかん、と思い現実に戻る。
美智子を見ると、何か話しにくそうに見えた。
「えっと・・、あまりその男巫の事、話したくない?」
美智子は、曖昧に俯いた。
しかし、美智子は話し始めた。
「これから話すことは拓也さんの胸にしまっておいて下さい。
神社関係者にとっては恥じといいますか、その・・。」
その言葉にコクり頷く。
頷いたのを見て、美智子は少しホッとした顔をする。
そして、予想外の質問を拓也にする。
「拓也さんの周りに神社はありますか?」
拓也はキョトンとした。
そして、疑問に思いながら返答をした。
「えっと、うちのアパート近くにはないかな・・。」
「そうですよね、昔は至る所に神社はあったのですけどね・・。」
いたるところに神社があった・・?
その言葉で祖父の家に遊びに行った時のことを思い出した。
祖父の家は田舎で周りは田んぼや畑だらけだ。
近くの神社は田んぼの中にポツンとあった。
遠くからでも見えた事を覚えている。
そして隣町にも神社は必ずあった。
隣町といっても小学生の子供が遊びに行ける程度の距離である。
それを考えると横浜って神社の数が少ないような・・。
いや、俺が知らないだけかもしれない。
「そして今、神主がいない神社が増えています。」
「そうなの?」
「はい、後継者がいないことが一番の要因なのですが・・。」
「へ~・・。」
「まあ、神社だけでなくお寺も同じです。」
「お寺も・・。」
「ええ。」
初めて知った。
お寺なんてどこにでもあり坊さんがいると思っていた。
「宗教法人(※1)て聞いたことがありますか?」
「え? あ、うん。」
「全ての宗教法人というわけではないのですが・・。
税金対策とか、お金儲けで神社、お寺などを購入する人がいるんです。」
「え?」
「購入するのは日本人だけではなく、海外の方も。」
「そ、そうなんだ・・。でも、それって信仰に
「お金儲けであっても、きちんと御仏や神を敬っている寺社もあります。」
「・・・。」
「ただ残念ながら神を畏れず欲望に走る宗教法人もあるのです。
そして神事は一般の人にはできません。
そのため神社で引き継がない人を臨時で雇い行います。
または別の神社の神主が兼務で当たるんです。
中には大学に行き資格を取った一般の人が行う事もあるのです。」
「へ~・・。」
「そして、ある宗教法人が所有した神社は古くからある神社でした。
一般の人から見ると何処にでもある村の神社に見えます。
しかし由緒ある神社でした。」
「ええっと、出雲大社のような神社でなく地方の何処にでもある小さい神社?」
「ええ、そうです。」
「へ~・・、小さい神社でも古よりある神社ってあるんだ。」
「神様は信仰のある場所、あるいは神聖な場所に降臨されますから。」
「そうなんだ・・、古よりある神社は皆有名な神社かと思っていた。」
「確かに立派なお社を見て、そう思われるのが普通かもしれませんね。」
「勉強になるよ。」
「それで、其の神社なんですが地元の人が古より大事にしていました。
ですが、時代とともに人口が減りほとんどの若者達が都会に行くようになります。
それに従い、若い人ほど信心が薄くなりました。
やがて神社をつぐ神主もいなくなります。
そして、ある宗教法人がその神社を入手したんです。」
「え? ある宗教法人がその神社の持ち主になったということ?」
「そのようです。」
「・・・。」
拓也が知らない意外な話しだった。
=======
注意
宗教法人、お寺、神社、および僧侶、神主の方々についての記載はあくまでも小説であり架空物語です。
空想です、そして、当方はこれらの知識が全くありません。
決して宗教法人や携わる方々を誹謗中傷するものでないことをご理解下さい。
実際の話しではありません。
参考
※1 : 宗教法人 (文化庁のサイトから抜粋)
宗教法人法は、宗教団体が、礼拝の施設その他の財産を所有し、これを維持運用し、その他その目的達成のための業務及び事業を運営することに資するため、宗教団体に法人格を与えることを目的とする。
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