第22話 信心? そして・・
『無縁な者に御神託なぞせんぞ?』
猿田彦大御神の言葉に拓也は呆然とした。
え? 俺、神様にそんなに信心していないんだけど?
だって、神社になんか行くのは年末年始くらいだしさ・・。
それに、お
そしてブ~たれた後、直ぐに木に結んで、吉となるように都合よく願っているだけのはず・。・
はて? さて?・・。
いったい神様は、俺の何をみているんだろう?
この神様、節穴ではないだろうか?
「なあ、神様、神様は俺のどこを認めてんのさ?」
『知る必要はない。』
「なにそれ!」
『御神託に関係ないであろう。』
「え?」
『そんな下らないことより、今は御神託に集中せよ。』
「え~、教えてくれてもいいじゃんか、ケチだな~。」
『神に向ってケチとはなんじゃ!』
「だって、そうだろう?」
猿田彦大御神様と拓也の話しを聞いていて、弥生も猿田彦大御神様になぜ一般人である拓也を御神託を与える者に選んだか知りたかった。
しかし、先ほどの話しから教えてくれそうもない。
神の考えることを人間が考えても始まらないことだ。
そんな事をボ~っと考えていたせいか、拓也からの声ではっとする。
「弥生さん?」
「あっ! ごめんなさい。」
「いや、謝る必要はないんだけど・・。」
「えっと、その、何でしょうか?」
「あ、さっきの件だけどさ。」
「?」
「あ、だから俺は君と一緒に御神託をするのが嫌なわけじゃないんだ。」
「え? あ、はい・・。」
「前に俺が話したこと覚えている?」
「?」
「あ~・・、そうだよね覚えているわけないか?」
弥生は拓也と前に会って話したことは、比較的覚えている。
身近にいる神社関係者とは考え方の全く異なる者だったからだ。
それにしても、いったい何がいいたいのだろうか?
「俺さ、美人とか、可愛い人と話したことがなくてさ、何を話していいかわからなくなるんだ。」
「・・・。」
「だから、まさかまた弥生さんのような美人と一緒になるなんて思わなく・・」
弥生は俯いた。
「え? 弥生さん?・・。」
弥生は拓也に顔を見せようとしない。
「あの・・。」
拓也には弥生がなぜ俯いてしまったか分からない。
困った拓也は声をかけようとするが、どう声をかければよいか分からない。
数分の間、二人は無言となる。
この神社は深閑としていた。
周りに人はおらず、小鳥の囀りが偶に聞こえる程度だ。
神社脇の道路を、やがて一台の軽トラがゆっくりと走り去った。
そんな沈黙に拓也が耐えきれなくなった頃、弥生が顔をあげた。
心持ち顔が赤い。
「すみません、ちょっと動揺してしまいました。」
「え?」
「では、参りましょうか・・。」
「え、あ、うん・・。」
拓也はいったい弥生がなぜ俯いたか聞き出せないまま、弥生に促され
しかし、幣殿に行くかと思ったら、幣殿の左脇にある
あれ? 幣殿に行かない?
弥生の後ろについて何本かの朱の鳥居を潜ると石段になる。
結構急な石段だ。
弥生は石段を上る。
弥生さん、後ろ姿も綺麗だよな~、それも
などと拓也は考えて、あわてて頭を振って
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余談であるが、長田神社のある場所の補足をしておきたい。
長田神社のある山は、小山が幾重にも重なっている。
この山々を
この地形は、航空写真を見ると不思議な形をしている。
人が地面に手をつけたような形状をしているのだ。
腕の位置が、ラグビーやスキーで有名な標高の高い
そして手をつけた地面が善光寺平と呼ばれる平地(盆地)というように見える。
もし、菅平高原の地下に地脈があったとしたらどう見えるだろうか?
腕の太さもある地脈からのエネルギーが、手の甲で示される山々の幅に広がり、やがてそれが指のように枝別れした山の裾野に流れ込んだら?
指の先からほとばしるエネルギーはかなりの流量と速度になるのではなかろうか?
長田神社は、この例えでいうと指先の先頭の場所にある。
まるで地脈を妨げるか、または地脈を受けるため問答無用に建てられたかのようだ。
不思議なことに、長野市には長田神社のような場所に神社が点在している。
これは偶然なのであろうか?
それとも古代より人々は山々の繋がりを霊脈に例えていたのであろうか?
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長田神社の
すぐ後ろが急峻な小山となっている。
そのため、弥生が昇っている石段の段数は少ないが急であった。
運動不足の拓也は、情けないことに息があがる。
石段を登り切ると、そこに稲荷神社が建っていた。
「へっ? 稲荷神社?」
「ええ、ここに祭られている祭神様よりの御神託です。」
弥生はそういうと参拝を済ませた。
慌てて、拓也も見習う。
そして弥生は印を組み、何やら小声で唱え始めた。
以前、拓也の前で迦楼羅様を権限させたときと同じだ。
おそらく神様の姿を見せて、俺にわかりやすくしてくれるのだろう。
そう拓也は思った。
が、今度はすこし違い、声だけであった。
そうは毎回、わざわざ神様は姿を現して下さるわけではないようだ。
「
『よく来た。そなたが男巫か。』
「え? あ、はぃ、たぶん。」
『たぶん?』
「た、拓也さん!」
「あ、すみません、男巫です。」
『すまぬのう、稲荷大明神よ、此奴はまだ自分の立場がわかっておらん。』
『猿田彦大御神よ、其方が使わすというから逢うてみれば・・』
「あのう・・、何か、俺、まずいこと言ったかな?」
『・・・』
『まあ、こういう奴じゃ。』
「あ、あの稲荷大明神様、申し訳ありません。」
『巫女が謝る必要はない、まあよい。』
「ありがとう御座います、稲荷大明神様。」
拓也には何がなんだかわからなかった。
なんか神を怒らせるようなことしたっけ?
う~ん・・、あ、態度か!
思わず手をポンと叩いた。
『・・何じゃ、男巫よ?』
「あ、ひょっとして、俺の態度がなってない?」
「た、拓也さん!」
『・・・お前、今頃気がつくのか?』
『面白いであろう、此奴は、はははははは。』
『猿田彦大御神よ、笑いごとか?』
『まあ、よいではないか、儂はもどるから、後は好きにせよ、弥生』
『待て、此奴はいらぬ! おい、猿田彦大御神!』
猿田彦大御神は、既にいなくなったようだ。
返事も何もなく、また、弥生はアタフタとしていた。
その様子を見ていた拓也は稲荷大明神に聞く。
「俺、帰っていいのかな? 稲荷大明神様、だっけ?」
「拓也さん!」
『仕方ない、其方に手伝ってもらう他あるまい。』
一瞬、拓也はムッとなった。
なに、それ? 人に手伝ってもらう態度?
と、一瞬思った。
思ったのだが、男巫をやめて不幸にはなりたくないのでグッとがまんした。
俺って偉い! そう自分を
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